日本の若者よ、海外で未来を築け --- 長谷川 良

アゴラ

読売新聞電子版(10月23日)に「国際機関で働きませんか」というタイトルの記事があった。国連機関には、その分担金に比べ、日本人職員が少ないことを受け、国連と日本外務省が22日、東京都内で国連職員採用に関する説明会を開いたというのだ。


この記事を読み10年前の包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)の朝食記者会見のことを思い出した。CTBTOのウォルフガング・ホフマン事務局長(当時)主催の朝食記者会見には早朝開催にもかかわらず、多くの国連記者たちが参加した。

当方はその朝食記者会見でホフマン事務局長に質問したことがあるが、その内容はズバリ、「CTBTOには日本人職員が少ないのではないか」というものだった。その時、ドイツ人事務局長は「われわれは優秀な日本人職員をいつでも大歓迎するが、日本人自身は国連で働くことを余り願っていないのではないかね」と答えた。この場合、言葉や能力のことではなく、日本人の気質、メンタリティーのことを意味していた。

日本の商社関係者から「若い時代、海外生活を体験することはいいが、3年程度だ。それ以上、長期間、日本を留守にすると帰国しても職場に席がなくなっている心配があるからね。それに子供の教育問題もあって長期間の駐在は厳しい」と聞いたことがある。

ホフマン事務局長の話を聞いて、当方は当時、何も返答できなかった。なぜならば、「そうかもしれない」と思ったからだ。しかし、あれから10年以上の年月が過ぎた。日本人のブログなどを読むと、一つの会社に生涯、勤め上げるといった考えはもはやなくなってきたという。会社側もいつでも解雇できる社員を願っているという。当方は日本の雇用状況についてよく知らないが、過去10年間で日本の雇用市場は激変したのだろう。

ポルトガルやスペインでは半分の青年たちが失業している。優秀な学歴保有者も職場を見つけるのが難しい冬の時代を迎えている。一方、専門知識を持つ労働者不足で悩むドイツの会社はスペインで説明会を開催し、青年たちをリクルートしている。採用する労働者には独語の学習を支援するなど至れり尽くせりの対応を行っている。その求募に応じてドイツに移住する若者たちも増えている。

現代の日本人の若者が海外に飛び出す絶好の時を迎えているのかもしれない。単なるキャリアを積む、といった短期海外組だけではなく、異国の地で自分の人生の目的を実現していくと考える青年たちが昔以上に増えてくるのではないか。その意味で、読売新聞の記事が報じていた「国連機関の日本人職員の募集」はタイムリーな企画だ。

IT技術が進歩し、世界は文字通り、グルーバル村となった。一生、同じ国に住むのもいいが、移住し、多くの異民族の同胞たちと交流する時代が既に到来してきている。交流を重ねていくことで、領土問題、「歴史の正しい認識」問題なども自然に解決していく、と信じている。議論と外交で解決できない難問も人的交流を重ねていくことで解けていくのではないか。海外に出て働く日本人は平和大使だ。日本の良さを再発見するためにも、若者よ、海外に飛び出し、そこで未来を築け。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年10月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。