電機と自動車、どこで分かれ道?

2013年10月31日 13:46

日経とフィナンシャル・タイムズの共同特集に「電機とクルマ、どこで分かれ道 」の記事がありました。かつては自動車と電機は日本の強さを象徴するふたつの柱の産業でしたが、自動車はいまだに健全に世界市場で健闘しているにもかかわらず、電機は不況から抜けだせず、経営再建に迫られている状態に陥ってしっている状態です。この記事が例にあげた電機と自動車の大手3社の2013年3月期の最終損益の差を見るまでもなく、その違いは歴然としています。
電機とクルマ、どこで分かれ道  :日本経済新聞 :


しかし、この記事を読んでストレスを感じるのは、結果だけを語っていて根っこにある理由については掘り下げていないことです。この記事では、電機が世界市場で敗北してきた3つの原因があげられています。

第一は海外企業との競争激化です。これは液晶やプラズマテレビでもスマートフォンでも、韓国、台湾、中国勢に、競争で優位に立てる法則を見いだせないまま、敗退の一途を辿っています。
第二は、特定の製品に対する需要が減ったことです。ゲーム機がスマートフォンで楽しめるソーシャルゲームなどに需要を取られてきました。
第三は、商品の収益性低下です。さまざまな理由がありますが、海外企業との激しい競争とテレビなどのコモディティ化による激しい価格下落によるところが大きいのでしょう。

どの理由を見てもそれは結果としてそうなったということに過ぎません。「どこで電機と自動車の分かれ道」が生まれたのかの本当の原因だとは思えません。ほんとうの原因は、もっと深いところにあったのではないでしょうか。

家電と自動車の違いは、まずは部品点数の差からくる産業の特徴の違いです。テレビの場合はおよそ1万点といわれていますが、自動車はその2倍から3倍です。つまり自動車のほうが部品を調達する仕組みではるかに複雑なオペレーションが求められます。それ自体が参入障壁となってきます。

もうひとつの違いは、開発や製造で電機は大きな時代変化の洗礼を受けたことです。日本は自前の部品を開発し、それぞれを擦り合わせながら高度な品質や機能を実現することが得意でした。しかし時代の流れがそれを一変してしまったのです。部品が品質や性能で高度化し、完成度があがってくると自前の部品を開発するよりも、完成された部品と部品を組み合わせるほうが圧倒的に開発の効率があがってきます。いわゆる摺り合わせ技術とモジュール開発技術の違いです。製造では、鴻海のような巨大な製造受託企業が登場したことも状況を一変させました。しかし自動車は、そう簡単にはいきません。

車種が変わっても、できるだけ共通部品を使うこと、電機のようなモジュール開発にもっとも熱心なのはフォルクスワーゲンです。しかし、電機のようにはいかないようで、限定されています。
物理的な動く品質が求められる世界、つまりアナログな世界では一車種、一車種で摺り合わせて最適をつくりだす技術が求められてきます。それを最大限に活かし、まるで楽器をつくるように調整を行っているのがBMWと言われています。

だから、過去に日本からの技術援助もあって成長した韓国の現代自動車や起亜自動社も、やはり技術でなかなか日本車を追い越せず、それに焦ったのか、昨年のように燃費を偽って売るといった不祥事も起こってしまいました。

第三は、電機は言ってみれば売ってお終いのビジネスです。しかし自動車はその後のメンテナンスなどのサービスが求められます。さらに、見た目だけでは、あるいは少し試乗したぐらいでは、性能や品質はわからないこともあって、ブランドの信頼やイメージが効いてきます。さらに自動車の場合はブランドが社会的なステータスになるという側面もあるでしょう。つまりブランド価値を築くのに長年かかるということもあるでしょう。

つまり、もともと産業の性格の違いがあり、自動車は日本型の部門と部門の垣根を超えた密接なコミュニケーションで、部品と部品を擦り合わせながら開発し、また製造していく企業風土にもあっていたのですが、電機の場合はそれが仇になってしまったということだと思います。

しかし、電機の場合そうなることは予測できたはずです。ゲーム機の場合は環境変化があまりにも急激だったかもしれませんが、他の家電の場合は、少なくともサムスンが躍進してきた時にわかったはずです。おそらく自らへの過信とサムスンなどへの過小評価があったのでしょう。

いやSONYがウォークマン誕生25周年にあたる2004年に、一年でiPodを抜くと豪語して世に送り出したHDD搭載ウォークマン「NW-HD1」を見た時に愕然としたことを今でも鮮明に覚えていますが、もっと根深いところに病巣があるのかもしれません。
崩壊しはじめた?SONY神話 :

問題はここからです。市場が成熟し、コモディティ化が起こってくる、あるいはなにかの開発や製造といった根本的なところので変化で必然的に海外企業などからの新たな参入が激しくなってくると、事業そのもののあり方を根本的に変えない限り、変化に対応することができません。

電機と自動車の市場の変化にうまくあわせてきているのが日本電産です。日本電産はハードディスク用のモーターで世界の8割のシェアを持つ優良な企業ですが、スマートフォンにしてもタブレットPCにしても記憶装置がハードディスクから半導体に移ってきており、ハードディスク市場そのものの成長が止まってしまいました。

しかし日本電産は今期再び売上を伸ばし、もうすこしで1兆円企業にも手が届くところに来ています。それは自動車や家電用のモーターの売上を伸ばしたからです。どういう手を打ったに興味のある方はメルマガに詳しく取り上げましたのでそちらを御覧ください。
先を読み、それに備える大切さ( 有料メルマガ「フーミー」) :

さらに日本電産は、ホンダの子会社を買収し、自動車を制御するシステムにまで事業を広げていこうという構えです。
「村田やTDKなどと比べないでほしい」、日本電産の永守社長 | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉 :

キャノンが成長力を落としてきているようです。理由は、シェアが高い複写機の需要減や、デジカメ事業の不振があるのでしょうが、それも結果に過ぎません。原因は、そういった変化は、業界の変化をウォッチしていれば、すでに何年も前に訪れることが予想されていたことであり、それに対応した戦略転換、あるいは新たな成長戦略を生み出せなかったことです。

自動車の場合は、幸い「いい車」、「次世代の車」をつくることに専念してもいい環境にあり、そのなかで日本のメーカーが強みを発揮しているということでしょうが、そういった市場はそうそう転がっているものではなく、多くの市場分野では自ら次の成長を目指した戦略を生み出し、新たな強みを再構築しなければならなくなっているのです。

いやはや経営力が問われる大変な時代になってきたものです。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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