内閣人事局関連法案 ~ 600人もの幹部人事をどうするのか? --- 石川 和男

アゴラ

10月31日の日本経済新聞ネット記事によると、中央省庁の幹部人事を首相官邸が一元管理するため新設する「内閣人事局」の人員規模が100人を超えるとのこと。

<記事抜粋>
○官邸が判断する幹部人事の範囲は現在の局長級以上200人から審議官級以上600人に拡大。
○内閣人事局は人事にあたって必要な候補者名簿をつくり、人事評価制度や給与関係の制度設計にもあたる。
○各省庁を統括しながら、膨大な事務作業をこなせる組織として100人超が必要と判断。
○総務省の人事・恩給局の人事行政部門、機構・定員を管理する行政管理局の人員の大半は内閣人事局に移る。人事院も、給与ランクごとの定数設定などに関与する権限は残したものの、人員の一部が移る。

官僚の最大の関心事である人事権を握ることにより、各府省の官僚が自分たちの省益を優先して政策を企画立案したり、執行したりする動きを抑えられ、時の政権の優先課題を政府一体となって進めやすくなる、というのが内閣人事局構想の根底にある理念だ。


実際に内閣人事局が設置されたとして、この理念を体現できるかどうか考えてみると、『毒にも薬にもならない』的な感想しかない。最近の2度の政権交代も手伝って、政務三役(大臣・副大臣・大臣政務官)と官僚の関係は、それ以前とは全く違うものになっている。次官が大臣の意向に関係なく官僚人事を好き勝手にやっているというのは、今は昔のこと。

現行でも、『強い総理』、『腕力のある大臣』がいれば、主要な官僚人事は政治主導となる。「強い総理になるとは限らないし、腕力のある大臣ばかりが内閣に入るとは限らない。だから、内閣人事局を設置することで、総理や大臣の意に沿った人事を制度的に行えるようにする」との主張もあるが、強くない総理や腕力のない大臣が内閣を構成する方が国家的な大問題だ。

内閣人事局では、600人の幹部人事を100人体制で行うことになる。だとしても、総理や官房長官は最終的に600人分の人事評価を聴きながら、適材適所の人事を行う。こんなこと、殆ど絵空事にしか思えない。

真の意味での省益排除や縦割行政打破を目指すならば、官民交流の拡大や民間人チームの登用といった現行制度下でできる地味だが実効ある人事の積み重ねが最も合理的である。実際に政策を企画立案し、執行するのは、局長・審議官級ではなく、課長・課長補佐・係長級だ。とは言え、毒にも薬にもならない内閣人事局のことを無理に否定はしない。


編集部より:この記事は石川和男氏のブログ「霞が関政策総研ブログ by 石川和男」2013年11月1日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった石川氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は霞が関政策総研ブログ by 石川和男をご覧ください。