日本シリーズを10倍楽しく見る方法

2013年11月03日 09:00

Facebookでつながる楽天関係者も昨日は大わらわでした。もちろん日本シリーズが原因。元球団創設メンバーの企業社長は社員の結婚式を終えて仙台へ急行。品川の楽天本社では副社長以下、社員が集結し、IT業界の友達も大体応援していた。しかし、ちょっと浮かれムードで油断したのかな。難攻不落のエースがまさかの陥落。昨日(11月2日)に日本一を決めていれば、9年前に球界参入がNPBに認められたメモリアルデーを飾ったはずが、楽天ファン、関係者の心痛はいかばかりか。。。一方、巨人ファンはしてやったりと気勢を上げていた。


●スポーツを社会や時代の視点で見ると面白い
それにしても久々に日本シリーズが盛り上がっていると思いませんか?視聴率(ビデオリサーチ、関東地区)もここ5年で特に好調だ。筆者がロッテの担当記者だった3年前は、1、2、5戦が首都圏で地上波放送なしだったことを振り返ると、嬉しい限り。楽天の初優勝や、渡米するマー君の見納めという純粋な競技的事情に加え、震災から始まる復興ストーリーの象徴という社会現象の視点から、普段は野球を見ていなかった人々の関心をかき立てているのかもしれない。

※決戦の地、Kスタ宮城(wikipediaより)
130823Kスタ

力道山の空手チョップ、王貞治の868本塁打、長嶋茂雄の天覧試合のサヨナラ本塁打、双葉山の69連勝――古い映像や写真と共に歴史のワンシーンがテレビ、新聞、書籍で紹介されるが、戦後の日本社会の歩みを振り返る上で、スポーツはその年月を振り返る際の記号であり、折々の社会情勢、国民の意識などを定性的に推し図る上で示唆を与えてくれる気がする。筆者がそのことを実感したのは2009年、ボクシングの担当記者だった頃に社会面用の記事を書いた時。当時のフライ級世界王者、内藤大介選手の国民的人気の秘密を探るのがテーマだったが、ヒーローを支持する視聴者の心理、時代の空気を感じ取れたのが面白かった。TBSの担当プロデューサーと意見が一致したが、ライバルの亀田兄弟が人気だった2000年代半ばは、IT長者がもてはやされたように「強者」が脚光を浴びた時代。しかし内藤選手が亀田大毅選手を破って人気者となり、その後も勝ち続けた頃はそうした風潮に疲れを感じたのか。リーマンショック後の暗い世相も背景に、母子家庭で育ち、思春期はいじめられ、プロになった後も本業だけで食べられず、派遣切りも体験したという「弱者」のストーリーが響きやすくなっていた。

●プロ野球は日本社会の縮図
プロ野球も私たちの生活に置き換えて見られるところがあるからこそ、国民的スポーツに育ってきた一面があることを否定する人は少ないだろう。世のお父さんたちは、名監督をロールモデルにしてリーダーシップや組織管理術、人心掌握などを学んでいる。ノムさんの著作が次々と売り出され、落合さんの本もベストセラーになるのはニーズが強いからだ。


采配
落合博満
ダイヤモンド社
2011-11-17



今回の日本シリーズをどう見るか。人それぞれあると思うが、筆者は日本の企業社会の縮図、日本経済の衰亡という視点から注目している。というのも、個人競技のボクシングと異なり、プロ野球各球団の経営リソースは、パトロンである企業社会の趨勢が如実に反映されるからだ。以前も紹介したが、三木谷さんは参入当時の心境をこう振り返っている。

「楽天があえて参入を決めた理由。それはある意味で、プロ野球界というのは日本社会の縮図であるという考えにもとづいていました。旧体制の仕組みのなかで、改革のエネルギーを失い、衰退しようとしている。『プロ野球は赤字で当たり前』だというようなことが球界内部の人の口から出るようになっていた。でも本当にそうだろうか?楽天なりの新しい方法論を持ち込めば、健全経営を実現できると直感的に思ったのです」(『原点ノート』より)

プロ野球の親会社の変遷を見ていくと、その時代の日本経済の求心力を持っていた業界であることは言うまでもない。かつての主流は、鉄道会社や映画会社、新聞社など。テレビ時代で退場した映画会社に変わり、モータリゼーションや大量消費時代を背景とした自動車、大手スーパーが参入に手を挙げた。今はネット通販、携帯電話、ソーシャルゲームというわけだ。

●今シリーズの私の見方
アベノミクスや東京五輪など今の世相、メディアでは一般的には景気文脈でポジティブな話題が目立っている(アゴラは異論だらけですが…苦笑)。その潮流にあって、企業社会の新陳代謝、21世紀型の殖産興業の重要性は10年前よりは国民的課題として現実味を増してきている。筆者は今シリーズを「オールドエコノミーVSニューエコノミー」の構図を重ねて見ている(巨人の親会社の方は実業ではないが、その伝統と政治・社会的な影響力を鑑み、広義でオールドエコノミーにカウントしてみる)。

ただ、こういう前振りをすると、オールドエコノミーについて、経団連などの重厚長大産業がダサい的なネガティブ論を言うように思われそうだが、企業社会の新陳代謝を促すことは、伝統企業にとっても新興勢力に負けじ、と経営改革を行って再生するチャンス。健全な競争が活発化し、日本経済全体の浮揚につながることが期待できる。日本シリーズの関東地区の視聴率の変遷を見ると、2004年以降、ガタっと落ちている。長嶋監督の勇退、松井秀喜選手の渡米の影響だろうが、この時期、盟主・巨人が2005、06年に初めて2年連続Bクラスに低迷したことも拍車をかけた。企業社会で言えば業績悪化の負け組だったのが、その後、育成選手制度の導入などで地道な強化を図り、07~09年はリーグ3連覇と蘇生。40年ぶりの連続日本一がなれば、V字回復の節目といえる。

もちろん、楽天などの新興勢力がプロ野球全体の再生の求心力となってきた功績は大きい。視聴率の発表は連休明けだが、近年では比較的良い数字が期待できる盛り上がりぶりを考えると、ビジネスでも新旧勢力が切磋琢磨して市場全体を浮遊させていくべきという日本経済の方向性を示唆しているように思えるが、皆さんはどんな風にシリーズをご覧になっていますか?

P.S ところでハフィントンポストはいつになったら原稿オファーいただけるんでしょうか。では、今日はこんなところで。ちゃおー(^-^ゞ

新田 哲史
Q branch
元野球記者/広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ

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新田 哲史
アゴラ編集長/株式会社ソーシャルラボ代表取締役社長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事

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