政府機関の閉鎖解除後、オバマ支持率低下が過去最低 --- 安田 佐和子

アゴラ

オバマ米大統領の支持率が、過去最低を記録しました。10月25~28日に実施したNBC/ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙の世論調査では42%と、政府機関の閉鎖ど真ん中になった前回10月7~9日時点の47%から5ポイントも落ち込みをみせています。不支持率も51%と、債務上限引き上げ交渉がこう着した2011年の8月をはじめ10月、11月に示現した過去最低に並んでいます。

なぜいま、支持率が急低下しているのか。

真っ先に槍玉に挙げられるのが、オバマケアと呼ばれる医療保険制度改革法案。本来はThe Patient Protection and Affordable Care Act(PPACA、最後の部分を用いてACAとも明記)という名称ですが、推進したオバマ米大統領の名前をとってオバマケアとして知られてますね。そういえばオバマケアという言葉が浸透し過ぎて、コメディアンのジミー・キンメルのトークショーでも話題を呼びました。

街角で「オバマケアとACAとどちらを支持する?」とインタビューしてみると、少なくないアメリカ人が「オバマケアには反対だけどACAには支持する」と答えたんです。お茶の間が笑いの渦に巻き込まれたのは、言うまでもなく。え?違いですか?どちらも同じ医療保険制度改革法案を指すんですよ。

民主党支持のニューヨーカーからも、「オバマケア」なんて名前はおこがましい!と否定的なコメントが聞かれました。オバマ米大統領が名づけたと勘違いしていたからですが、それだけオバマケアという名前が一人歩きしているという証左でもあります。

そもそもオバマケアという言葉、どこから来たのでしょうか?デイリー・コスによると、2008年の米大統領選に出馬予定だったオバマ米上院議員が医療保険改革を公約に掲げていた事情から、2007年に医療保険業界ロビイストが使い始めたんです。オバマ以前、クリントン大統領(当時)が1993年に国民皆保険を目指しヒラリー夫人を「医療保険改革問題特別専門委員会」の委員長に任命した当時、使われた言葉が「ヒラリーケア」だったところに由来します。2007年に大統領選に出馬したミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事が予備選で口にすると、分かりやすさからCNNなど各局メディアが取り上げ、瞬く間に広まったんですね。

ロムニー氏、大統領選と討論会では敗北も言葉選びには大成功。

Obamacare

オバマケアの由来を知れば、支持率の低下も納得できます。

政府機関の閉鎖が解除され債務上限引き上げ交渉がいったん収束すれば、2014年から個人に対する医療保険義務付けを控え焦点がACAにシフトするのは必至でした。しかも1)「エクスチェンジ」と呼ばれるオンライン保険市場で障害が発生し1ヵ月経過しても個人の登録が遅れ、2)保険会社が現行の保険では基準に合わないとし顧客に解約通知を相次いで送付し、3)企業の医療保険負担が増加し従業員へ波及する──などの問題に直面する有様です。これだけ失点が続けば、ただでさえイメージの悪い「オバマケア」の施行を控え支持率が低下しないわけがありません。

以上の3点に挙げた問題点は別に説明させていただくとして、政府機関が再開した予想外のオバマ米大統領の失点があらためたフォーカスされたといえるでしょう。1)NSAなどによる監視プログラム問題、2)シリア化学兵器使用への対応、3)FRB議長指名の遅れ──など国をまたいで影響を及ぼす重要な問題で、ツチをつけたことは事実です。

共和党と民主党の支持率も拾ってみました。前回は、10月7~9日実施分です。

民主党

支持率→37%、不支持率→40% 中立→21%

(前回 支持率→39%、不支持率→40% 中立→18%)

共和党

支持率→22%、不支持率→53% 中立→24%、支持率は過去最低

(前回 支持率→24%、不支持率→53% 中立→21%)

ティーパーティー

支持率→23%、不支持率→47% 中立→22%

(前回 支持率→21%、不支持率→47% 中立→20%、支持率は当時過去最低)

オバマ米大統領の支持率だけでなく、共和党の支持率も低下していたんですね。

今後、共和党の米上院はランド・ポール議員(ケンタッキー州)を筆頭にイエレンFRB副議長の指名承認を妨害する見通しです。2008年の大統領選で共和党候補だったジョン・マケイン議員(アリゾナ州)も阻止の意向を表明しており、イエレン議長誕生への道筋は一筋縄でなくなってきました。リンゼー・グラム議員(サウスカロライナ州)も10月28日、リビアのベンガジで2012年9月11日に発生した米国領事館襲撃事件につき、生存者らによる同事件に関する議会証言が実現するまでオバマ米大統領の指名人事承認をすべて食い止めると明言。2014年中間選挙に向け、双方の対立はさらに深まる兆しが現れています。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2013年11月4日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。