「和食」の真の魅力を世界へ広めよう --- 岡本 裕明

アゴラ

日本産の米がどれだけ美味しいか、海外にいる日本人の方が案外その価値を一番知っているかもしれません。炊けたときに炊飯器を開けるとお米一粒一粒が立っていて光輝き、何も乗せなくても食べれてしまう新米との出会いは日本人ならではの悦びでしょう。残念ながらここバンクーバーではそのように美味しい白飯にはなかなか出会うことはありません。


日本産の米は単価が高いうえに取り扱い店舗が少なく、カリフォルニアで作るジャポニカ品種が主に流通しています。日本食レストランへ行ってもご飯ものといえば、寿司と丼ものがほとんどで、まるで美味しくない安い品種の米を具で補っていることがまま見られます。私がうまい寿司は何かという問いに、シャリで決まると確信したのはここバンクーバーに来てからです。

多人種・多文化のバンクーバーにおける食事情とはどんなものでしょうか? 飲茶に出てくるご飯は水分を飛ばしチャーハンに向いた調理方法に適した米です。アメリカ文化を背景にして育ったカナダ人は往々にしてもっちりとしたジャポニカ米を嫌い、長粒米や玄米などを食べる傾向が強いと言えます。韓国スーパーにいけば五穀米ブームを反映したものも多く見られます。

異なる食文化が背景にあるため日本産の米がどの料理においても一番だと押し付けることはできませんが、せめて日本食レストランでは正統派の美味しい米を食べたいものです。日本産米の輸出は為替の影響やコスト面でどうしても販売価格が上がってしまうため、レストランではなかなか手がでないのでしょうが、TPPによりそれらのハードルも下がるのでしょうか?

「和食」が世界無形文化遺産に登録されそうです。今、海外では日本食に熱い視線が注がれています。しかし、それらは伝統的日本食ではなく、それぞれの国や地域・文化の特性がうまく取り入れて作られたものです。逆にこれがないと根付いていかないのでしょう。北米に於いて江戸前寿司は生の魚を全面的に押し出すことになり必ずしもポピュラーではありません。それに代わり、巻き寿司や炙り寿司が寿司としての市民権を得ています。黒い海苔は内巻き、具やソースで色鮮やかに化粧が施されています。炙り寿司は生ではないというイメージと共にトッピングの色彩と豪華さが白人のハートを捕らえました。更には日本酒をハード・リカーとして捉え、カクテルとして販売し色鮮やかに提供しているところはごく当たり前になりました。

我々日本人はそれを否とするのではなく、正しい和食の知識、素材が何かをきちんと伝承し、海外での発展的変化を快く受け入れサポートできる寛容さを持つ必要があります。

私はワインを少々嗜みますが、最近は赤はフランスワインに戻っています。ブドウの品種は限られていても世界中で造られるワインの種類は星の数ほどあります。さまざまな流行や品質改良が各地で行われ、コンテストを勝ち抜くワインを飲んできた中で結局、フランスに戻るのはその原点に立ち返るということかもしれません。そのフランスワインは今でも私をがっかりさせることなく、伝統をきちんと守りながら素晴らしい品質を保ってます。人はそれをわかる時が来るのです。

日本産の美味しい米は海外のどんなエッセンスが加わっても、食べる人をがっかりさせることはないでしょう。それを信じて我々外国に住む日本人こそうまい米が何かということを海外で啓蒙していくことが必要なのではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年11月5日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。