文化の日に自民党の憲法改正草案を読んでみた --- 東猴 史紘

2013年11月06日 14:08

(1)文化の日は、憲法が公布された日
安倍政権が経済対策(アベノミクス)と同じくらい力を注ごうとしているのが憲法改正である。改正要件を定める96条の改正が焦点となった。私自身も、国会議員秘書として96条に関する議連のひとつに事務として会議を傍聴させて頂いた経験もあり興味深いテーマの一つである。今日は文化の日。日本国憲法が公布された日である。改めて、物議を醸し出している自民党改正草案を読んでみた。


(2)なぜ、自民党は憲法改正草案を発表したのか?
昨年4月、自民党は「日本国憲法改正草案(以下、改正草案)」を発表した。その中身があまりにインパクトの強いものだったので物議を醸し出した。

私も自民党のウェブサイトから改正草案をダウンロードしてみた。表紙に驚いた。表紙の写真に本会議場が使われていたのだが、なぜか衆議院ではなく、参議院の本会議場だったからだ。

意図は分からないが、参議院の本会議場の議長席の後ろの玉座を写したものを使ったのではないかという意見もある。国会は開会するとき、参議院で開会式がある。そこで天皇が座るのが玉座である。

つまり、この表紙の写真で衆議院本会議場を使わず、参議院本会議場の写真を使ったのは天皇を元首としてその立場を強めたい自民党の思いが込められている。現に、改正草案の前文で日本国は天皇を戴く国と明記した。

また、読み進める中で改正草案は天皇のみならず基本的人権や安全保障など現在の日本国憲法の中身を根本から変えていく案であることが分かった。

(3)そもそも憲法の役割は何か?
では、そもそも憲法とは何か。その役割とは何か。
憲法は国民の生まれながらにして持っている自由や人権を守るために、国家が守るべき法である。これを立憲主義という。

この考え方は中世ヨーロッパの市民革命の時に誕生した。絶対王政時代、国の統治は国主の支配によって行われ、市民の自由と権利は抑圧されていた。そしてその抑圧に耐えかねた市民が革命を起こし、権力者たる国王が市民の自由と権利を保障するために憲法によってその権力を制限させた。

つまり、憲法は国民が守る法ではなく、国王が市民の権利を守るために守らなくてはいけない法なのである。日本国憲法でも国家が守るべき国民の権利を憲法13条で以下のように書いている。
憲法13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の利益に反しない限り、立法その他国政の上で最大の尊重を必要とする。」

この13条こそが日本国憲法が何を守るのか、役割は何かという問いに答えている箇所である。つまり憲法は、個人の尊重、生命、自由そして幸福追求する権利といった、国民の権利を守るために国家に憲法を守らせる。

そしてその国民の権利を守らせるために、憲法は具体的に平和主義、基本的人権の尊重、法の支配、権力分立、国民主権を定めた。

(4)自民党改正草案の中身は?
では自民党改正草案では現在の憲法がどのように変わるのだろうか。上述した立憲主義や人権の観点に絞ると以下の3点が議論となる。

a)改正草案102条 「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。」

上述したように、憲法は国民を守るために国家が守らなくてはならない法である。しかし、改正草案では国民自身が守らなくてはならない法になっている。これは国家が憲法を守るという立憲主義の観点から議論になるだろう。

b)改正草案第13条 「全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。」

日本国憲法では「個人として尊重される」と書かれているのが改正草案では「人として」尊重されると表現が変わった。個人の権利を守るといった考え方からの後退であろうか。

c)日本国憲法97条
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

この基本的人権の条文が改正草案では削除された。

Q&Aにも、「現行憲法の規定の中には、西欧の天賦人権説に基づいて規定されていると思われるものが散見されることから、こうした規定は改める必要があると考えました。」とある。

以上のように、改正草案では人権の尊重に対して積極的ではないのが極めて大きな特長である。

(5)自民党の改憲草案には自由がない
文化の日に改めて改正草案を読んでみたが、一言で言うと、個人の人権に対する価値観が一時代前に後退してしまっている印象を受けた。昔と違って今の日本は、一人ひとり違う価値観で、個々の自由を追い求め、多様性ある人生を送る文化になっている。全体から個へが求められる時代にあって、この憲法草案では時代とのギャップが存在しているような気がしてならない。

とある政治家が「自由民主党にあって、民主党にないもの。それは自由だ。」と演説していたが、今回の改憲草案ではその自由が欠けてしまっている。安倍政権には本当に期待している。もっと自由を!

東猴 史紘
元国会議員秘書
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