千葉PM2・5上昇、原発停止・火力発電増の影響を検証せよ

2013年11月07日 00:06
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北京の光景、日本もこうなることはないだろうが…

関東で初の観測

千葉県で、微小粒子状物質「PM2・5」の濃度が国の暫定指針を超える恐れがあるとして県が4日に注意喚起を出した。

推測を交えた情報を提供して申し訳ないが、私は「原発停止による火力発電の増加」が一因ではないかと思う。このことを現時点でメディアは注意喚起していないので指摘したい。一部大手新聞・テレビは、「原発を利用するべき」と少しでも感じてしまう情報を伝えない傾向があるので、これまで出ていない指摘だ。


濃度上昇が問題になったのは千葉県市原市付近だ。大気1立方メートル当たりの1日平均濃度が、国の暫定基準(70マイクログラム)(1マイクロメートルは1ミリの千分の1)を超え、4日日中には一時125マイクログラムに達した。普段は20-30マイクログラム程度らしい。中国から近い九州では、過去に注意喚起がされたが、関東では初という。

PM2・5の濃度上昇の理由は多様だ。気象条件もその一つだ。地表付近の濃度の拡大は、接地逆転という気象現象になった時に起こりやすいという。気温が上空ほど高くなると、空気が地表面でとどまりやすい。これは冬に起こりやすい。中国のスモッグが冬に起こるのは、この時期の暖房で石炭などの化石燃料の使用が増えることに加えて、中国北部で接地逆転が起こりやすいためだ。

「森本毅郎スタンバイ」というTBSラジオのポッドキャストを聞いていると、気象予報士の森田正光さんが、千葉近郊でこうした状況になっていたと解説していた。日本は大気汚染を1980年代までに克服したと思っていたが、今後は冬の大気汚染に警戒が必要になる。

どこから物質が来たのか?

ただそれよりも、この濃度を上げた物質はどこから来たのかを考えることの方が重要だ。中国で、PM2・5による大気汚染が話題になっている。北部では測定が機器限界の1000マイクログラム以上となり、計測不能のような濃度の場所もある。汚染の状況は大変危険だ。

ただし、中国のPM2・5が千葉まで流れたなら、西日本、近畿、東海での濃度も上がるはずだが、そちらの数値は大きく変化していない。PM2・5は地表1000メートル以内を浮遊するので、もし中国からの物質なら周辺部では必ず計測されるはずだ。そうだとすれば、市原市近郊に理由がありそうだ。

PM2・5は、工業活動によって排出される化学物質が硫黄や窒素酸化物が影響して発生している。(国際環境経済研究所PM2・5の話「どこで、どのように? PM2・5はこんな風に生まれる」)

千葉県がPM2・5を計測し始めたのは2011年4月からだという。京葉工業地帯では景気の低迷で重化学工業の工場稼動率が、ここ数年拡大したという話は聞かない。また大規模道路が周辺で新たに建設され交通量が増えたという話もない。唯一、設備稼動が増えたのは東電の発電所だ。

東京電力の設備一覧を見れば分かる通り、市原市には2カ所、周辺市には3カ所も大規模火力発電所がある。東京湾の対岸の横須賀近郊には5カ所ある。しかも市原市の2カ所は、昭和の時期に建設された旧型の設備だ。東電は福島と新潟の原発が使えないため、旧型火力をフル稼働させ、またLNGの火力発電設備を新設している。2年間の稼動増の影響が出始めた可能性がある。

これは私も詰めていない情報だし、PM2・5の発生要因は多様であるため仮説にすぎない。(取材は進める)しかし東電の火力発電が増えたことによる大気汚染への影響を、公的機関が早急に精査するべきだろう。ただし現時点のPM2・5の濃度で、即座に健康被害が起こる可能性は少ないようだが、警戒は必要だ。

そして、これは関東だけではなく、全国で警戒するべき問題だ。全国の原発が、法律の根拠なく、また規制委員会の不適切な規制によって止まっている。各電力会社は、そのために火力発電を増やしている。大気汚染の懸念があるのだが、指摘は少ないし、政策課題にもなっていない。

一つの問題の対策で、たいてい別の問題が生まれる

原子力発電が大気汚染を減らし、健康被害を防ぐという主張は、最近、米国で活発になっている。(GEPR記事「原子力発電が大気汚染による死を防ぐ–40年で184万人」)米国の著名環境学者らが、環境団体に大気汚染と温暖化防止対策として、原発の利用を検討すべきと書簡を送り公表した。(米ワシントンポスト11月3日記事「Top climate scientists ask environmentalists to support nuclear power in climate battle」)ちなみに中国の大気汚染は工業化に加えて、暖房のための石炭の大量使用によるものだ。(池田信夫氏記事「石炭の恐怖」)

福島原発事故の後で、日本では原子力政策が混乱した。「原発を使うな」という、決して多数派ではない一部の人の世論に迎合し、民主党政権が法律上の根拠なく原発を止め、自民党政権もそれを引き継いでしまっている。事故の後で原子力への拒絶感が生じたことは理解できる。原発を過度に賛美する意図は私にはない。しかしマイナスの面だけがあるのではない。大気汚染をなくすというメリットが忘れられている。

あらゆるリスクはゼロにはできない。それゆえに、そのリスクを可能な限り認識し、できれば負担を少なく管理することをしなければならない。こうした当たり前の態度が、原子力・エネルギー政策で震災以降、忘れられてきた。特に「原発ゼロ」などという抜本的なエネルギー体制の転換は大変な無理がある。新しいリスクを生みかねないのだ。

政策決定者も、また国民一人ひとりも、後先考えない政策が、さまざまな副作用を生んでしまう事実を認識した方がいい。

石井孝明
環境・経済ジャーナリスト
メール・ishii.takaaki1@gmail.com
ツイッター・@ishiitakaaki

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