医薬品はコンビニで素人が売れ

井上 晃宏

医薬品販売自由化問題の象徴的なトピックに、「コンビニで薬を売っていいのか」って話がある。販売自由化をすれば、コンビニで無資格の店員が医薬品を売ることになるが、それでいいのかという話だ。

結論から言おう。いいのだ。


そもそも、昔の薬屋(薬局、一般販売業、薬種商)はコンビニだった。街角で洗剤やトイレットペーパーや化粧品などの生活雑貨を売り、その品揃えの一つとして、医薬品があっただけだ。タバコも堂々と売っていた。

薬屋で、医薬品を有資格者が売るようになったのは、つい最近であり、10年前までは、無資格者が販売していた。しかし、大した事故はおきなかった。OTCによる薬害がないわけではないが、売り方とは関係がない。

管理者はいたが、名目的であり、実質的には管理なんかしていなかった。そもそも、営業時間の大半に、店に不在だった(僕がやっていたのだから間違いない)。不在時には、無資格の店員が、何の知識もなしで、適当に医薬品を売っていた。

90年代末から、保健所が薬屋に頻繁に立ち入り調査に入るようになったので、経営者は仕方なく有資格者の滞在時間を増やし、不在時には、薬の棚を封鎖するようになった。

医薬品しか取り扱わない調剤薬局が激増したのは20年前であり、それ以前には、コンビニ薬局がほとんどだった。調剤薬局増加の原因は、需要増加ではなく、医薬分業による補助金だが、それはここでは詳しく書かない。

現在でも、マツキヨなどは、実質的にコンビニである。コンビニとの差は、薬事法を守るために、有資格者を置いているだけだ。

よって、コンビニで無資格者が医薬品を売るのは、薬屋の原点回帰なのである。何もおかしなことはないし、やってかまわない。

最近10年間に、販売する医薬品の内容が大幅に変化したということもない。スイッチOTCがいくつか加わったが、従来品より安全だ。

井上晃宏(医師、薬剤師)