日本の義務教育の問題点と教員定数の削減について

2013年11月10日 17:32

最近、「教職員定数の1万4000人削減を財務省が主張 文科省と対立」および「公立小中教員の給与下げ提示 財務省」というニュースがあった。

財政難なのだから、当然と受け取る人も多いだろうが、世界の中で、日本の教育の置かれている現状を見ると、違った景色が見えてくる。ここでは、前時代的な教育制度が未だに続けられている日本の現状を俯瞰し、少人数教育の必要性について考えたい。 


個別化を求められる日本の学校教育

現在の日本社会は、資本主義の成熟と共に、高度成長期とは、大きく変わっている。

高度成長期の日本社会では、個人個人が努力すれば、社会全体が豊かになれるという、確かな希望があった。しかし、現在、みんなで豊かに、という希望は完全に失われてしまった。社会の変化は激しく、大企業といえども安泰ではなく、家族さえも離婚や再婚で流動的になっている。経済格差も拡大している。このため何か共通の目標を持って努力することは極めて難しい。  
 
こうした社会情勢の中では、学校教育も変わらざるを得ない。対論:『「学級崩壊」をめぐって、対論者 荒木肇VS宮台真司』を見ると、それが良く分かる。

最早、子どもたちは、先生の言うことを聞き、忍耐強く勉強するという「苦役」に耐えていれば、豊かになれるという話を、信じてはいない。だから、荒木氏が言うように、先生がすべてをリードし、子どもたちがハイハイと元気に答えているといった授業や、、先生がジョークを時たま交えながら上手に教科書を解説するという授業は、最早成立しなくなっている。その結果、
 

現在の学校では、一部の優秀な子どもと先生がリードする授業ではなく、全員参加が原則です。ここ20年文部省も「個性重視」の掛け声のもと、そのことを学校の中で徹底させようと呼びかけてきました。全員にひとつの課題を与え、全員に達成させようとする、そうした「形式的平等」は、もう古いものになりました。現在の授業は、一人ひとりが達成感や充実感をもつもの、そうした「実質的平等」を目標とするものになったのです。

と荒木氏が述べているように、授業は変化している。

ところが、宮台氏の指摘するように、教育制度の改革は行われず、いまだに「いい学校・いい会社・いい人生」なる物語が信仰されていた時代の、あるいは「良質で安価な規格品を大量生産する」ための都市労働者の養成が期待されていた時代の、学年別の一斉カリキュラムが行われている。 

共通の目標に向かって、皆仲良く努力するという教育から、生徒個人が自立し、自分に合った内容を学ぶという教育への脱皮が上手く行っておらず、これが、学級崩壊といった問題を引き起こしているようだ。 

対論の中で宮台氏が

成熟社会では、「みんな仲良し」的な教育は、逆説的なことに、人を平気で差別し、危害を加える人間たちを量産します。日本以外の先進国ではそのことが気づかれています。

と述べているのは不気味だ。

少人数教育の必要性 

実は、こういった生徒一人一人が自立し、個別の目標を持って学ぶ教育は、海外では実践されている。 実際、最近のフィンランドの中学校の視察報告:フィンランドの中学校について(少人数個別対応・グレーゾーン教室・教育による移民統合)を見ると、

(1)最大でも一クラス20人以下で授業を行う、
(2)メインの教師に、サポートの教師が付く、
(3)英語、数学は、能力別クラスに分かれて授業が行われる、

といった充実した体制で、生徒一人一人に目の行き届く双方向の授業が行われている様子が良く分かる。 そして、授業の様子の記述を見る限り、教育のICT化は、ほとんど進んでいない。

これに対して、日本の義務教育は、生徒30人から40人のクラスを一人の教師が指導するという体制であり、これは教育の個別化が求められている現状からすれば、全く不十分である。 日本のこういった教育事情に対し、フィンランドの先生が

「意外だわ。あなた方が保育や教育に予算をかけないなんて。40人クラスって、どうマネジメントしているのか想像できない。あんなにも優秀な技術を持っている国なのに、次世代に投資しないなんて・・・」

と述べているのは痛烈だ。日本の義務教育における教員増が必要なことは論を待たないだろう。

時代に逆行する行政の動き

ところが、財政難から、教員数は削減されようとしている。 「教員数、大幅削減で一致=地方交付税の加算廃止も?財政審」を見ると

財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は28日、2014年度予算案の編成に向けて、小学校や中学校の義務教育に対する国庫負担金の大幅削減を求めることで一致した。委員からは、少子化に伴って「児童・生徒の減少に合わせ、教員の削減はやむを得ない」などとする意見が相次いだ。

 一般会計予算の2割近くを占める地方交付税交付金に関しては、リーマン・ショック後の景気対策として導入された「別枠加算」(約1兆円)の廃止を総務省に求めることでも合意した。ただ、地方自治体からは継続を求める声が強く、年末の予算編成に向けた調整は難航しそうだ。

 財務省は28日の会合で、子ども1人当たりの教員数を維持しながら定数を2000人減らし、高い給与水準を地方公務員並みに引き下げれば、14年度の国庫負担金が約370億円削減できるとする試算を提示した。委員から異論は出ず、「良い教育のためには教員の数を増やせばいい、という考え方は古い」などとして大筋で了承された。

 

とある。

ここで、驚くべきは

「良い教育のためには教員の数を増やせばいい、という考え方は古い」

という意見だ。どうも「新しい考え方」では教員数を減らしても良い教育ができるらしい。現在の日本の義務教育のクラスサイズが、欧米の凡そ2倍であることを、財務省はどのように考えているのだろうか。 

日本は資源のない国であり、教育の充実なしに、この国の未来はない。いよいよもって、日本の未来は暗いようだ。

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