セダンの復権は経済再生のシグナルとなるか --- 岡本 裕明

アゴラ

折りしも東京モーターショーに広州、ロスアンジェルスでも同様のショーが開催され、どうしても自動車の記事が目立ってしまいます。その中でふと感じるのは多くの自動車メーカーがより速い、スポーティーで洗練されたデザインの車を発表しているという点でしょうか? 私も来週、東京モーターショーに行くつもりですが、行く前から思い続けていることは「セダン復権の日」であります。


日本でセダンを買うという選択肢が選ばれなくなったのは何故でしょうか? 若者の車離れとは無縁ではなさそうです。その後、メーカーは売れないから作らない、だからなおさら売れないという負のサイクルに陥っていました。ところがそのサイクルを変えようとするきっかけは日産GT-Rで、ドラマ「相棒」で使われていることがスポーツカーの新しいイメージチェンジとなったことは間違いありません。個人的には及川クンが運転していたGT-Rの姿が非常にフィットしていたと思います。

次いで価格的に手が届かないGT-Rから背伸びすれば買える車を作ったのがトヨタ/富士重工チームの86/BRZでしょうか? レーサーでもあるトヨタの豊田社長の宣伝効果は抜群だったと思います。更にピンクのクラウンには度肝を抜かれたと思いますが、トヨタの思いっきりの良さには拍手モノでした。

かたや日本の主流である軽自動車は全保有台数比率で2013年は37.2%となっています。2000年が27%ちょうどで毎年確実にシェアは増えていますのでこの趨勢が突然崩れることはないかもしれません。ただ、市場シェアというのは永久に上がり続けるものではなく、何かのきっかけで反転することはあります。この比率だけ見ているとここ数年、シェアの伸び率が逓増に変わり、節目が近い様相が感じられます。

ではセダン復権の日はあるのか、と言えば個人的には数年のうちにやってくる気がしております。私は最近、このブログを通じて流行のサイクルについて何度かかかせて頂いているのですが、車についてもそのサイクル理論はあるはずだとみています。では何故、今、その反転期が近いと感じるかといえばアベノミクスであります。

失われた20年がもしかしたら終了する雰囲気、株価が一年で倍近くまで上がるムード、都市部を中心とした不動産が底打ちし、指数的な地価上昇がほぼ間近にあることで日本が世代代わりしたともいえ、それに合わせて長らく低迷していたセダンが復権するというシナリオです。

軽自動車に乗る理由は高い経済性で、移動するにはこれで十分という発想が根底にあったはずです。ところが人を乗せるとか、懐が緩んだので少し自慢したいとなればやはり軽自動車というわけにはいきません。また、友達がセダンを買ったとなれば「目新しさ」も出てくるものです。一旦市場がその方向に動き始めれば加速度がつきやすいですので一気にオセロゲームのような状態になることもないとはいえません。

もう一つ、消費税増税に対する「構え」ですが、今のところ橋本政権の時代の消費税引き上げに伴う反動のようなことになる気配は抑えられる可能性があります。その一つの理由にマンションの売れ行きや戸建住宅の10月の受注が想定より極めて良好であり、市場は消費税増税はすでに織り込んでいたという流れになっています。この先行指標となる住宅の受注状況は消費税増税への心理的影響に大きく反映しますので要注目だと思っています。

車はスタイルのみならず、環境や乗り心地、燃費や安全などあらゆる点において大きな改善が見られます。乗ってみればよいと思うことは間違いなく、そのきっかけを探しているということでしょう。

2015年には燃料電池の車も世の中に出てきますし、2020年までには自動運転の車もあるかも知れません。私も車の買い替え時期にあるのですが、「ふつうの車」を買うのはもしかしたらこれが最後かもしれないという奇妙な哀愁すら覚える今日この頃です。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年11月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。