早期退職者が急増する理由と開業ビジネスの罠 --- 光田 耕造

2013年11月24日 15:55

2008年9月の米国大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズの破たんを引き金に世界的な不況に陥った。日本経済も景気が停滞し、2011年の東日本大震災、タイでの洪水などが拍車をかけた。2012年6月公表の国税庁統計年報では平成22年度の赤字法人率は約75%である。1000兆を超える国の借金、可処分所得の多い消費層であった団塊世代も退職、増税、医療・介護費の増大など将来の見通しは暗い。

今後、日本では大量のリストラ・早期退職者が発生することは間違いないだろう。理由は日本の基幹産業の後退、海外へのアウトソーシングの増加、転職の受け皿の不在だ。


日本の基幹産業と言えば、車、住宅、家電が挙げられる。自動車業界はグローバル競争の中で競争力を保っているが家電業界は瀕死の状態だ。かつては世界の工場と評された家電業界はサムソンを筆頭に韓国、中国、台湾などのメーカーに苦戦を強いられ、未曾有の赤字を計上している。2000年前後に大量のリストラが発生したが、大半が製造ラインのスタッフであった。しかし、今後はホワイトカラーまでリストラされるようになるといわれている。住宅業界も家電業界ほどではないが少子高齢化、所得の減少の煽りを受けることは間違いないだろう。

製造業の生産拠点が海外に移っていき国内の空洞化が叫ばれてきたが、メーカーや金融などの本部、本社機能がシンガポールに移るなど、製造業以外でも日本離れが加速している。また、ITの環境の発達により多くの国内作業は海外に外注する傾向になりつつある。システム開発、コールセンターなど様々な分野の仕事が海外に流れている。出版業界では、取材時に録音した取材音声の文字おこしまで海外で安価に行うことができるのだ。編集者が録音しデータをメールで送るだけで文字おこしが可能なため、ライターの仕事が減少するのは間違いないだろう。2000年から生産ラインの海外移転が進められてきたが、今後は様々なホワイトカラーの仕事が海外に外注されるようになるのだ。

可処分所得の多かった団塊世代が退職、少子高齢化などで日本の内需は縮小していく中では、年功序列型の企業が多く存在する大企業は倒産か大幅なリストラが敢行されるだろう。35歳以上の社員がリストラ対象となる可能性が高いが、転職は簡単ではない。35歳を超えたホワイトカラーの求人は一握りの能力の高い層向けが大半だからだ。日本国内にあるホワイトカラーの求人を多くの転職者で争うことになる。大半は就職できないため、飲食、介護、コンビニ、肉体労働などの体力が必要で賃金が安い仕事しか残されていない。

この段階で考えるのが独立開業という選択肢だ。35歳を過ぎてホワイトカラーの仕事から低賃金の肉体労働への転職は難しいからだ。しかし、一介のサラリーマンが今までの人脈やスキルだけで独立開業し、利益をだせるほどビジネスは簡単ではない。仕事の需要がなくリストラされているのだから、起業が難しいのは当然だろう。

この様な、人生の岐路に立たされた人々を狙うのが開業ビジネスだ。起業塾とうたい、法外な料金をとる、コンサルタント養成講座を開講、形だけのフランチャイズ本部に加盟させ加盟金をせしめるなどだ。転職できないという人生の危機に「起業し年商1億円、コンサルタントで年収1千万円」などの甘い言葉ですり寄ってくるのだ。過去、数百社のベンチャー企業の社長、フランチャイズ本部を取材してきたが、起業し成功するのは簡単なことではない。赤字企業の割合が75%であることからも理解できるだろう。

開業ビジネスの一つとして挙げられるのが開業希望者を集めた起業塾だ。ベンチャー企業の経営者が法外な価格で起業塾を開講していることがある。本業を黒字にさせることさえ難しいのにベンチャー企業経営者が起業塾をするのは何故か。それは、起業塾自体で金儲けしているからである。起業し金持ちになりたいと夢見る生徒を集め、授業料として大金をせしめるのだ。人件費と会場費位しか掛らない、利益率の高い金儲けなのである。

20年以上、会社を経営し業界を代表する会社の創業者が開く起業塾であれば価値があるとは思う。しかし、その様な方が行うのは起業塾ではなく経営塾なのだ。何故なら、起業するのは簡単だが、起業してから会社を運営するのは非常に難しいからだ。また、起業する前にどんなことを伝えても、実際に運営していないので身に着かないだろう。

ゴルフを実際にプレーしたことがない人に、座学で教えても上手くはならないのと一緒だ。基礎を教えて実際にプレーしながら実践していくのが上達する方法だろう。法外な費用の起業塾は金儲けのニンジンをぶら下げた金儲けにすぎない。

もちろん、適正価格な起業塾も存在するのでそこで勉強するのは問題ないだろう。法外な価格の起業塾やコンサルタント養成講座などは気をつけるべきだ。また、「○○コンサルタントで起業できる」とうたうコンサル養成の会社は何故、自社で養成しないのか考えて欲しい。本当に稼げるコンサルタントを短期間で養成することができるのであれば、自社で人を雇い育成すれば会社の利益になる。船井総研やトーマツなどコンサル会社はたくさんあるのだ。

コンサルタント養成講座に通うのは悪くはないが、それで直ぐに充分なお金が稼げるとは思わない方が良いだろう。何年もコンサル会社で働き、人脈やスキルを身に付けた社員でさえ、独立し食べていくのは簡単ではないのに、短期間の講座を受けただけででは言わずもがなである。あくまで、勉強の一環として通うのが賢明だろう。また、コンサル養成をメインに行っている会社は現場での最新の情報やスキルを収集する手段がないため、一般的なスキルか少し古いスキルを教えるだけの可能性は高い。

起業塾やコンサル養成講座などのビジネスの仕組みは少し考えれば理解できると思う。悪質な開業ビジネスの可能性もあるので法外な価格のものは慎重に考えていただきたい。今後、リストラ・早期退職者が大量に生まれるであろうが、それらを狙う開業ビジネスの罠にはまらないように注意していただきたい。また、最大の開業ビジネスであるフランチャイズでの開業については次項で詳しく書いていく。

光田 耕造
チャンスメディア株式会社
代表取締役社長
独立開業情報 動画解説サイト『開業チャンスTV

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