グーグルの書籍検索サービス合法判決でますます拡大する日米格差(その2)

2013年11月25日 08:16

その1で、グーグルの書籍検索サービスGoogle Booksをフェアユースであると認定したニューヨーク連邦地裁の判決を機に、日本も前回骨抜きにされたフェアユース規定の導入を再検討しないと、米国との格差は開く一方で、ネットサービスのプラットフォームを米国勢に握られてしまう問題は一向に解決しないと述べた。しかし、法改正だけでは十分ではない。というのは日本の裁判所は、そうでなくても権利者よりの著作権法をさらに厳格に解釈するからである。その好例が検索エンジンである。


最高裁判決が明暗を分けた日韓の検索エンジン

米国の検索エンジンが、除外してくれといわないかぎり検索対象とされるオプトアウト方式で対応したのは、著作権侵害で訴えられてもフェアユースで対抗できると踏んだからで、現にウェブ検索サービスに対する3件の訴訟でもフェアユースが認められた(その1参照)。しかし、サービス開始当時フェアユースのなかった韓国も検索エンジンはオプトアウトで対応した。

対照的に日本は、検索の対象にするホームページからいちいち許諾をとるオプトイン方式で対応した。検索エンジンは情報の網羅性が勝負である。具体的には、Not Foundの検索結果ばかり返ってくるような検索エンジンは誰も利用しない。海外にサーバーを置いて日本の著作権法の適用を免れ、オプトアウトで対応した米国勢に日本市場を制覇されてしまった。

韓国の検索エンジン大手ネイバーは、韓国市場でもグーグル、ヤフーなどの米国勢より後発だったが、韓国人のニーズに合った検索サービスをオプトアウトで提供して、米国勢を抜き去り、70%のシェアを誇っている。日本の検索エンジンが米国勢と同時にサービスを開始しながら、オプトインのハンデから米国勢との競争に敗れて次々と市場から撤退し、グーグル、ヤフー、マイクロソフトの米国勢に日本市場の98%のシェアを握られてしまったのと好対照をなしている。

フェアユース規定を持たない韓国で、なぜオプトアウトによる対応が可能だったか?それは裁判所が柔軟な解釈によって、新技術・新サービスに対して好意的な判決を下したからである。権利者からの著作権侵害訴訟に対し、検索エンジンはホームページの複製が著作権法で認められた引用にあたると主張、06年に韓国の最高裁もこの主張を認めた。

日本の検索エンジンもオプトアウトで対応していれば、日本市場を外国勢の草刈り場にされるのを防げたかもしれない。しかし、それが難しかったのは想像に難くない。韓国の検索エンジンのように引用であるとする主張が認められる可能性が少なかったからである。

1980年のパロディモンタージュ写真事件判決で、最高裁は引用に明瞭区分性と主従関係という条文にない二つの要件を課した。引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明確に区別して認識することができ、かつ、両著作物間に主従の関係があると認められる という2要件である。ホームページ全部を複製すると、利用される側が「従」とはいえなくなり、主従関係の要件は満たせない。オプトインで対応せざるを得なかったわけである。 

新技術・新サービスの障壁となる日本の最高裁判決の最近の例は、「石あたま判決」を下した国民審査対象の裁判官(その1)で紹介したまねきTV・ロクラクII両事件の判決である。いずれも知財高裁は著作権侵害を否認したが、最高裁が覆した。

「法廷助言」で衆知を集める米国の裁判所

米国には訴訟当事者だけでなく、誰もが裁判所に係争中の事件に対する意見を提出できる法廷助言制度がある。このため、今回のGoogle Books訴訟でも図書館や研究者などから多くの法廷助言が提出された。その中からチン判事が判決でも引用したGoogle Booksの社会的効用は以下のとおりである。

・図書館員が図書の存在を容易に探せるようになり、館内の図書貸し出し手続を効率的になった。また、自館にない場合に図書館相互の貸し出しを利用して、どの図書館から借りるかの判断もしやすくした。
・データマイニングやテキストマイニングにも役立っている。具体例をあげると、合衆国という言葉が“the United States is”というように単数で使われるのか、“the United States are”というように複数で使われるのかを、数千万冊に上るGoogle Books のデジタル書籍の使用例から検証することが可能になった。
・研究者だけでなく、素人でも研究専門図書館のアーカイブに埋もれた蔵書を探し出せるようになった。

その1のとおり、判決でもフェアユースの第3要素の判定のところだけでなく、総合評価のところでも再度、社会的効用を強調したが、その背景にはこうした法廷助言の存在があることは疑いない。

新著「著作権法がソーシャルメディアを殺す」の第7章でも法廷助言制度のメリットを具体例で紹介したが、今回の判決でもそのメリットが浮き彫りになった。日本も「石あたま判決」を防ぐために法廷助言制度を導入すべきである。

城所 岩生

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