大王製紙前会長 井川意高氏はなぜ「熔けて」しまったのか? --- 内藤 忍

2013年11月26日 12:09

予約しておいてようやく届いた『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』を一気に読みました。

大王製紙の創業家に生まれ、筑波大付属駒場から、東京大学に現役合格。完璧とも思える人生を100億円以上のカジノでの損失で失ってしまった著者自身による記録です。


この実話には、人間とお金の究極の関係を考えさせてくれるたくさんのヒントが詰まっている気がしました。なぜ、地位も名誉も、お金も手に入れた人が、さらにギャンブルにはまってしまい、自分をコントロールできなくなってしまうのか。しかも、ボンクラな3代目社長ではなく、頭脳明晰で子会社立て直しで実績を上げた実力者です。

読めば読むほどに、人間の弱さと脆さが見えてきます。

全般に書かれていることには、ウソがなく、正直に心境を淡々と語っているという印象を持ちました。自分の実績に関してはもしかしたらやや主観的に都合よく書いているのでは? と思うところもありましたが、それも含めて本心を吐露しているのでしょう。

書評などでは、芸能人が実名で登場することに焦点が当たってセンセーショナルに報じられています。確かに、女優や俳優などの芸能人の実名がかなり出てくるのですが、彼にとっては特別な存在ではなく、実際は金ヅルとして利用されてしまっていたのだと思います。夜の世界には毎晩のように繰り出したこともあるようですが、それもギャンブルにはまっていくのと同じ要因があった。そう感じました。

読み終わってみて、著者がこの本を書こうと思った理由は2つあると思いました。

1つは自分へのけじめです。自分がやってしまった過ちをきちんと総括し、何が問題だったのかを考え、迷惑をかけた周囲の人たちに謝罪する。恐らく、本質的には極めて真面目でストイックな著者にとっては、このまま有罪判決を受けて、何も語らずに終わってしまうのは、耐えられなかったのだと思います。恥をさらすようなことをしなくても、と考える人もいるかもしれませんが、自分の美学を持つ著者にとってこの本を出すことは、どうしてもやっておかなければならないプロセスなのです。

そしてもう1つは、文中で実名で登場する有名ノンフィクション作家への抗議です。事実と異なる一方的な報道に、かなりのページを割いて反論しています。「ノンフィクション作家」改め「フィクション作家」として活動すべきと厳しく糾弾しています。最初に筋書きを作り、取材結果を強引に結び合わせながら、記述を補強していく。メディアの報道に対しても、きちんとコメントを残したかったように見えました。

犯罪を犯したことに対しては、罪の償いをする必要があります。しかし、彼が経験したお金と人生の大きな流れは、カジノに足を踏み入れたことの無い人にも、読んでおく価値があると思います。

人生の目標とは何か。人間の幸せとは何か。読み終わって、しばらくの間、考え込んでしまいました。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年11月26日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。


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