ペルシャがユダヤ民族を助けた話 --- 長谷川 良

2013年11月28日 09:00

イランのマフムード・アフマディネジャド前大統領は「イスラエルを地上の地図から抹殺してしまえ」と暴言を発し国際社会の反感を買ったことがあったが、敵対同士と受けとられているイランとイスラエル両国、両民族は長い歴史の中でいつも対立、いがみ合ったきたわけではない。イラン民族(ペルシャ)がイスラエル民族(ユダヤ民族)を奴隷の身から解放したことがあるのだ。


イランの核問題はイスラエルの安全問題にとって最大の懸念事項となっている今日の視点からみれば想像できないことだが、イラン人とイスラエル人は案外近いのだ。国連担当のイラン人外交官が「アラブ民族よりイスラエル人のほうが理解しやすい」と語ったことを思い出す。

両民族の関わりを理解するためにイスラエル史を振りかえなければならない。すなわち、旧約聖書時代に戻る必要がある。イスラエルという呼称は、ヤコブが天使と相撲を取って勝った褒賞として神から与えられた呼称で、「勝利者」を意味する。そのヤコブから始まったイスラエル民族はエジプトで約400年後、モーセに率いられ出エジプトし、その後カナンに入り、士師たちの時代を経て、サウル、ダビデ、ソロモンの3王時代に入ったが、神の教えに従わなかったユダヤ民族は南北朝に分裂し、捕虜生活を余儀なくされる。北イスラエルはBC721年、アッシリア帝國の捕虜となり、南ユダ王国はバビロニアの王ネブカデネザルの捕虜となったが、バビロニアがペルシャとの戦いに敗北した結果、ペルシャ王クロスはBC538年、ユダヤ民族を解放し、エルサレムに帰還することを助けた。

なぜ、ペルシャ王は当時捕虜だったユダヤ人を解放したかについて、旧約聖書のエズラ記は以下のように説明している。

「ペルシャ王クロスの元年に、主はさきにエレミヤの口によって伝えられた主の言葉を成就するため、ペルシャ王クロスの心を感動されたので、王は全国に布告を発し……」

すなわち、ユダヤの神はペルシャ王クロスの心を感動させ、ユダヤ人を解放させ、エルサレムに帰還させわけだ。どのような理由があったとしても、ユダヤ民族はペルシャ民族の恩を受けているわけだ。

現在のイラン人は「地図上からイスラエルを抹殺する」と強迫したが、同じ民族の王が約2550年前、ユダヤ人を捕虜から解放して故郷に帰還させたのだ。もし、ペルシャ王クロスがユダヤ民族を解放せず、捕虜として使っていたならば、現在のイスラエルは存在しなかったかもしれない。

国連安保常任理事国とドイツを含む6カ国とイランの核協議は24日未明、イランの核開発の包括的検証に向けて部分合意に達した。イランはその見返りとして国連制裁の一部解除という成果を得た。その一部合意に最も反対し、批判しているのはサウジアラビアとイスラエル両国だ。サウジは米国がイランに接近し、イランを地域大国として承認するのではないかと懸念している一方、イスラエルのネタニヤフ首相は対イラン制裁解除に強く反対し、今回の一部合意を「歴史的ミステーク」と主張している。

現在のイランとイスラエル両国は水と油のような関係だが、ペルシャ王クロスがユダヤ民族の神の声に感動して、ユダヤ人を苦境から解放したという史実は、両民族の和解の可能性ばかりか、その際に神の仲介があり得ることも示唆している。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年11月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。


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