秘密保護法担当の森雅子大臣の「行政秘密をもらした」疑惑

2013年11月29日 00:05

週刊文春の報道

20131118174033-2特定秘密保護法担当の森雅子大臣・参議院議員には、金融庁勤務の際に行政情報を漏洩した疑惑がある。今週の週刊文春に掲載されていた。(中吊り)当時、私は金融雑誌の記者で、ほぼ同じことを関係筋から聞いていた。


彼女の情報漏洩疑惑は、当時から民主党が指摘し、一部政治家は自民党攻撃のスキャンダルとして使おうとした。安倍首相らは、こうした疑惑をかかえる彼女の「身辺調査」をしているのだろうか。その情報収集能力は、お粗末に思える。

金融庁時代の検査情報の漏洩疑惑

疑惑の内容は次のようなものだ。

森雅子大臣は弁護士資格を持つ。2005年から06年まで金融庁で、任期付職員だった。

当時は貸金業法の改正が問題になっていた。グレーゾーン金利の撤廃と、金利上限規制を柱とするものだ。私は一部の消費者金融の荒っぽいビジネス手法を批判するが、同時にこの法改正もおかしいと考えている。実情に合わず、消費者金融だけではなく、貸金・リース業全般、そして経済全体には悪影響が出たからだ。そして弁護士・司法書士業界だけが大もうけしたことも問題と考えている。(私の記事「宇都宮健児氏と視野の狭い政策論」)

この時に、多重債務者問題が注目されていた。政治パフォーマンスの好きな後藤田正純自民党衆議院議員が、金融庁政務官でありながら、「お金に困った人から暴利をむしり取る業界」と消費者金融業を強く批判。テレビ司会者のみのもんた氏が、担当番組に何度も彼を出演させ「頑張れ」と応援。朝日・毎日・東京の各紙が規制強化を肯定し、消費者金融を糺弾する社会的ヒステリーとも言える状況が起こっていた。

森雅子氏は当時から同庁内で消費者金融攻撃の旗頭とされ、後藤田氏(「あまり緻密な思考ではない」と批判する官僚もいた)を踊らせていたという。そして議員当選後、貸金業法の規制強化を、自分の手柄のように各所で話している。その思い出話では、実家が金策で苦労して、債務者の権利を守ろうとしたという動機を語っている。私怨を行政に反映させているのだろうか。そして自民党議員なのに、左翼系活動家として知られる宇都宮健児弁護士とも近しいとされる。

2006年8月、業界大手のアコムが金融庁の立入検査を受けた。朝日新聞がこれを事前に報じた。そしてTBSが同社横浜支店に入る映像を撮影した。この際に先頭を歩く森氏の姿が、ばっちり全国ニュースのテレビに映った。検査の現場を撮影することは、事前にメディアに情報を流さないとできないことだ。

詳細は省略するが、当時、金融庁筋から聞くと、検査で調べられたアコムの違法取り立ての疑惑はそれほど重要なものではなかったが、検査官を兼ねていた森氏が主導して検査に動いたという。そしてこの情報漏洩疑惑で、森氏が疑われた。ところが森氏は直後に、福島知事選出馬のために同庁を退職してしまった。

1990年代の金融不祥事、大蔵省接待事件の反省から、現在の金融庁検査は情報が徹底的に管理され、メディアの事前の「抜き」報道など、このアコム事件以外にない。

これは国会でも問題になり、2006年12月12日の参議院金融委員会で、尾立源幸民主党参議院議員が、森雅子氏の名前を出していないが情報漏洩疑惑について質問している。その質問で金融庁は「内部調査をしているが、情報漏洩は確認できない」としている。

2006年11月、森氏は福島県知事選に自民党推薦で出馬したが、民主党推薦の佐藤雄平現知事に敗れた。そして07年に福島県で自民党参議院議員として当選した。当選後は貸金業法の規制強化の取り組みを続けた。

権力を持つ人の情報コントロールの実例

ここから先は私の推測である。週刊文春が伝え、当時民主党が推測したように、選挙対策のため、森雅子氏は、自分がテレビに映るように情報漏洩を行った可能性がある。そして辞めるから責任を追求されないことも分かっていただろう。

また以下は個人的な感想だ。改正貸金業問題で、森雅子氏は策士ぶりを発揮したが、その知恵は衆知を集めるという形に使われず、他人の意見を聞かない面があった。そして弁護士出身の政治家にありがちな、法律をつくって押し付けるという強権的な発想を随所でしている。自民党内でも、経済・金融通の議員の間では、その思い込みの激しさと、左翼的な手法と発想、そして野心の露骨さで、彼女の評判はあまりよくない。

今回の特定秘密保護法の答弁もそつなくこなしたように森雅子氏は聡明な人ではあるが、問題もある人だ。条文の修正要求をはねつけ続けている人の話を聞かない態度も(もちろん彼女だけの責任ではないが)、これまでの行動から予想できたことだ。

私は、特定秘密保護法について、安全保障情報の管理を厳格にするという立法趣旨には賛成する。しかし現在の法案では秘密の指定を行政府が行える範囲が広すぎ、知る権利を犯しかねないので、ジャーナリストとして反対する。

仮に週刊文春の報じたような疑惑が事実とすれば、権力者が自らの都合のいいように、あるときは情報を漏洩し、あるときは情報を制約する行動の実例を森雅子大臣は体現している。冷静に考えると、恐ろしい話だ。

「秘密とは、それを所有する人々の権力を増すうえで、最も有効な手段である」という言葉を、森雅子氏のことを考えながら思い出している。

(塩野七生「ローマ人の物語4ユリウス・カエサル」より。事実上の初代皇帝カエサルが、敵対する元老院の権力を削ぐために、討議の全記録を支持者の民衆に公開したことについての塩野氏の論評)

石井孝明
経済ジャーナリスト
 
メール:ishii.takaaki1@gmail.com
ツイッター:@ishiitakaaki  

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