金融緩和尺度の賞味期限 --- 長谷川 公敏

2013年12月06日 08:13

5月から始まった米市場での「QE(量的金融緩和)縮小」騒動がようやく収まりつつあり、このところ米国市場では株価や債券価格が堅調に推移している。ただ「QE縮小」の可能性が無くなったわけではなく、市場では「QE縮小が近いうちに実施されることは確実」と見ている。現に、米国で雇用情勢などの景気指標が発表されると、「QE縮小」の実施時期について「年内か来春か」などと意見が交錯し、そのたびに市場は揺れている。


■金融緩和の尺度

しかし、米市場の金融政策についての関心は、量から質(政策金利)に移りつつあるようだ。FRB(米連邦準備理事会:米中央銀行)は2008年のリーマンショック後に、政策金利を「実質的にゼロ金利(0~0.25%)」にすると共に米国債などを購入する「QE」を開始した。だが、FRBから供給された資金は大量に市中に出回ったわけではなく、大部分はFRBにある金融機関の当座預金勘定にとどまっている。

よく考えてみれば、金融機関の当座預金にはFRBから供給された多額の資金があり、「ゼロ金利」が続く限りは超金融緩和状態は変わらない。そのため、米市場の関心は「ゼロ金利がいつまで続くか」ということになったようだ。

■超金融緩和は継続

FRBは目標にしている「+2%程度の物価上昇と6.5%程度の失業率」達成の確信が得られるまで超金融緩和政策を継続するとしており、FOMC(米連邦公開市場委員会:金融政策決定会合)メンバーの最近の見通しからすると、「ゼロ金利政策」は2015年頃まで続く可能性が高い。

■日本は

一方日本は、今年4月に開始した日銀の「異次元緩和」で「QE」を本格化させている。それまで日銀は「さほど金融緩和効果が得られない」として「QE」に消極的であったため、金融緩和の尺度とされていたマネタリーベースの増加テンポが鈍かった。だが、マネタリーベースの動向は為替レートに大きな影響を与えたため、日本経済が大いに苦しんだ超円高は日銀のせいにされていた。

「異次元緩和」への期待が高まった昨年末ごろから超円高是正が本格化し、今年5月には1ドル=103円台後半まで是正が進んだが、FRBの「QE縮小」懸念が勃発すると、円高是正は止まってしまった。そうした中で、市場の金融緩和の尺度は量から政策金利にシフトしてきている。

■日銀も超金融緩和政策だが・・・

理屈で言えば白川前日銀総裁が主張していたように、マンタリーベース拡大≠金融緩和なので、市場の金融緩和の尺度が量から政策金利に回帰しつつあることは理屈に合う。

また、日銀もFRBと同様に「ゼロ金利政策」という超金融緩和策を継続しており、市場の目が政策金利に向いても、日銀の金融緩和姿勢に対する市場の見方が変わるわけではない。

ただ残念なのは、せっかく4月に開始した「異次元緩和」によるマネタリーベース拡大政策の賞味期限が、僅か1ヵ月余で終わってしまったかも知れないことである。

長谷川 公敏
第一生命経済研究所 代表取締役社長


編集部より:この記事は「先見創意の会」2013年12月5日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった先見創意の会様に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は先見創意の会コラムをご覧ください。

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