ネット選挙の次は、戸別訪問の解禁だ --- 東猴 史紘

2013年12月07日 05:00

(1)ネット選挙はもう浸透した

今月初旬、東京都葛飾区で区議会議員選挙が行われた。前回の参議院議員選挙からネット選挙が解禁されたこともあり、演説動画などを投稿し有権者に政策をSNS上にアップする選挙スタイルもすっかり根付いた。


確かに、4年間の葛飾区議会議員選挙の投票率は47.46%に対して今回は41.67%と下がっており、ネット選挙は残念ながら投票率アップにはまだまだ寄与できていない。しかし、公職選挙法がより候補者と有権者目線に近づいたという点では大きな一歩であったと思う。

さて、その公職選挙法であるが私自身も国政や地方選挙に携わった身としてまだまだ変えてほしい点が多々ある。その中の一つが戸別訪問の全面禁止を定めた公職選挙法138条の1項である。これを削除して、戸別訪問を解禁することを主張したい。

公職選挙法138条の1項:何人も、選挙に関し、投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもって戸別訪問をすることができない。

つまり、選挙期間は有権者の自宅に直接訪問し投票を促すことができないという規定である。この規定があるので、候補者は駅前の陣取り合戦に明け暮れ、はたまた選挙カーで延々と名前を連呼するだけの中身の薄い選挙が余儀なくされている。

(2)戸別訪問はなぜ禁止なのか?

そもそも戸別訪問を禁止するのは、選挙活動の自由に反しないのか?

選挙活動の自由は言論出版などの表現行為をとることから憲法21条1項の表現の自由で保障されるとされている。この点、最高裁は憲法に反しない、合憲であると判決(最高裁昭和56年6月15日)を下している。

判例を見ると、戸別訪問を禁じた公職選挙法138条の1項の規定は、戸別訪問によって有権者の買収、利害誘導、また生活の平穏を害し、候補者にとっても多額の出費を余儀なくされ、投票も情実に支配されやすくなり、選挙の公正を害するのを防止するのが目的であり、戸別訪問を禁止した場合としなかった場合では禁止した場合の利益のほうが大きく上回っているので、戸別訪問を禁止することは合憲というわけだ。

(3)戸別訪問は候補者と有権者の対話が可能、選挙費用も抑えることができる

確かに、買収や利益誘導などを防止するという目的自体は理解できるのだが、候補者にとっても多額の出費を余儀なくされるという部分は違うのではないか。戸別訪問は選挙費用を抑えることができる。ガソリン代も必要ない。

そして何より有権者と直接対話することによって候補者には政治に反映させなければいけないニーズがわかり、有権者にとってはその直接対話が投票するかしないかの大きな判断材料になる。現行の選挙カーや駅前演説といった一方的な選挙活動よりよっぽど民主政治にとって利益が大きい。

(4)公職選挙法138条の1項は違憲が通説

憲法学でも、公職選挙法138条の1項は違憲というのが通説だ。

選挙活動の自由を保障している表現の自由は自己実現と、民主政治を発展させるために極めて重要な権利であり、特に選挙活動の自由は、民主政治の前提でもある。

これがひとたび制限されると、選挙を通して政治の是非を問うという民主性の過程が崩壊され、回復困難となる。よって選挙運動の自由を規制する立法については合憲性は推定されず、その合憲性判定基準としては経済的自由の規制立法の審査基準より厳格でなくてはならない。(二重の基準論)

具体的には立法目的が正当であり、かつ立法目的を達成するために他により制限的でない手段がないかを審査し、存在するのであれば、当該規制立法を違憲と判断すべきというLRAの基準がある。

この点、判例は経済的自由の規制立法の基準と同様の審査基準で判断しており、表現の自由といった観点を考慮していないので妥当とは言えない。

時間や人数、方法を制限したり、事後処罰を定めるなど、より制限的でない他の選びうる手段が存在するので違憲というわけだ。

(5)欧米では戸別訪問が主流

いずれにしても、戸別訪問を全面禁止しているのは先進国では日本くらいである。米国や英国でも民主主義国家なら当たり前でしょ、とばかりに戸別訪問は当然の選挙活動である。逆に、戸別訪問なしにどうやって有権者と対話をするんだということである。

何年か前、「私は常に駅にいます!」と演説していた候補者がいたが、大体、政治家候補者が駅員より駅にいること自体おかしなことである。しかし、それを余儀なくさせてしまっているのが現在の公職選挙法なのである。

日本特有の規制の一つであったネット選挙は解禁された。次は戸別訪問の解禁だ。

東猴 史紘
元国会議員秘書
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