輪郭見えてきたバチカン機構改革 --- 長谷川 良

アゴラ

ローマ・カトリック教会総本山、バチカン法王庁で12月5日、3日から開いていた第2回目のバチカン改革審議会の会議が終わった。バチカン放送独語電子版によると、バチカンは将来、教会の経済活動を総括する財務省の創設を検討する一方、聖職者の未成年者への性的虐待問題を解決し、防止するため独自の委員会を設ける方針という。同会合にはフランシスコ法王も参席した。


改革審議会の調整役をするOscar Maradiaga Rodriguez枢機卿 (テグシガルパ大司教)は「将来、宗教事業協会、通称バチカン銀行(IOR)、資金管理部門(APSA)、聖座財務部など教会の経済活動を総括する財務省を創設することなるだろう」という。また、Sean Patrick O´Malley枢機卿 (ボストン大司教) によると、聖職者の性犯罪を防止するため聖職者、神学生、宗教者への教育強化と児童保護を推進する独立の委員会を立ち上げるアイデアが出てきている」という。

フランシスコ法王は4月、8人の枢機卿から構成された提言グループ(C8)を創設し、法王庁の改革<使徒憲章=Paster Bonusの改正>に取り組むことを明らかにした。10月に最初の会議が開催され、今月3日から第2回目、そして来年2月中旬、3回目を開く予定だ。

ローマ法王フランシスコは来年2月17日、18日の両日、特別枢機卿会議を開催する。同時に、2月22日には新しい枢機卿を任命する予定だ。枢機卿会議の目的はバチカン改革審議会の報告について世界の枢機卿たちと話し合い、具体的な改革を決定することだ。 バチカン筋によると、バチカン改革は現行の使徒憲章(1988年)の部分刷新ではなく、大規模な改革となる可能性があるという。

フランシスコ法王はコンクラーベ(法王選出会)の直前に開かれた枢機卿会議で法王庁の改革を強く主張し、「福音を述べ伝えるためには、教会は(垣根から)飛び出さなければならない。自己中心的な教会はイエスを自身の目的のために利用し、イエスを外に出さない。これは病気だ。教会機関のさまざまな悪なる現象はそこに原因がある。この自己中心的、ナルシストのような教会の刷新が必要だ」と檄を飛ばした。この檄が南米初の法王誕生に大きなインパクトを与えたといわれている。

法王庁のナンバー2、新国務長官のピエトロ・パロリン大司教(58)は先日、べネズエラ日刊紙の質問に答え、「カトリック教会聖職者の独身制は教義ではなく、教会の伝統に過ぎない。だから見直しは可能だ」と述べ、聖職者の独身制改革が行われるのではないか、といった期待が教会内外で高まってきている。

前法王べネディクト16世が昨年10月11日から始めた「信仰の年」が先月24日終わったのを受け、フランシスコ法王は11月28日、使徒的勧告「エヴァンジェリ・ガウディウム」(福音の喜び)を発表し、世界のカトリック信者たちにイエスの福音を喜びをもって伝えていこうと呼びかけたばかりだ。カトリック教会の再宣教時代の到来を告げたのだ。

バチカン組織の非中央集権化、現場の司教会議の権限強化など避けて通れない課題が山積している。その一方、既成の権限を失いたくない勢力がバチカン内には多数いる。それだけに、フランシスコ法王の改革は一定の犠牲なくしては貫徹できない難行だろう。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2013年12月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。