世代間格差の是正には、まず財政再建が必要

2013年12月09日 18:23

城繁幸氏は、「なぜリベラルは嫌われるのか」の中で、世代間格差の是正を訴え、

・社会保障制度の抜本的な見直しと、その中での高齢者優遇の見直し

・終身雇用制度の廃止と、企業規模によらない(解雇に伴う金銭補償、失業給付の拡充等の)セーフティネットの整備

を主張している。成程、これには一理ある。しかし、これだけでは世代間格差は是正できない。ここではその理由を論じたい。


高齢者は裕福なのか?

城氏の記事には次のように書かれている:

日本の金融資産の6割以上を60歳以上の高齢者が所有している事実は有名だ。また、社会保障の世代間格差も膨大な額にのぼることは確実で、「これから生まれてくる子供は生まれながらに一億円にのぼる借金を背負っている」とはよく言われる話だ。※

要するに、今の日本と言う国は、金の無い現役世代から絞りとって、既に裕福な高齢者にお金を回すと言うことを延々と繰り返しているわけだ。ちなみに現役世代からの搾取だけでは足りずに不足分は借金で賄っているわけだから、将来世代からも取り上げていることになる。

なるほど、確かに世代間の不公平は深刻である。 しかし、ここで疑問なのは、高齢者は本当に裕福なのか、ということだ。   

内閣府の調査(24年度)では、高齢者世帯(65歳以上の人のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の人が加わった世帯)の平均年間所得は307.9万円で、全世帯平均(549.6万円)の半分強である。一世帯当たりの公的年金・恩給は216.2万円で所得の70.2%を占めている。 

2012年2月時点で、生活保護を受けている高齢者世帯は63万527世帯で、生活保護世帯の42%を占め、ついで傷病・障害者世帯48万6729世帯(33%)と続く。

一方貯蓄額を見ると、2000万円以上の貯蓄がある世帯も40%強、存在するが、これは退職金がかなりの部分を占めると考えられ、貯蓄が殆どない世帯も多い。

高齢者貯蓄額

生活に余裕があるとは、言い難い。

実際、高齢者が貯蓄を取り崩して生活しているために、日本の貯蓄率は国際的に見ても、非常に低い水準である。 
家計貯蓄率推移

主要国の家計貯蓄率の推移より)

果たして、個人金融資産は存在するのか

このように高齢者といっても経済格差は大きく、高齢者が裕福であるというのは、かなりの部分幻想である。 とは言え、貯蓄のある世帯は、年金を我慢してもらい、貯蓄を取り崩して生活してもらえば、社会保障負担は減らせると考える人もいるだろう。

しかし、これは幻想に過ぎない。なぜなら、個人金融資産の大部分は、政府が財政赤字の穴埋めに使ってしまっており、存在していないと考えるべきだからである。 別の言い方をすれば、我々は、知らず知らずの中に、我々の金融資産を、政府に貸し付けており、その政府は、巨額の債務を抱えており、なおかつ、その返済の原資は、我々の税金だということなのだ。 高齢者が大々的にその金融資産を取り崩せば、財政破綻に瀕するということになりかねない。 

結局、高齢者の年金を減らすといっても、その自由度は大きくない。

世代間の不公平を解消するには

それでは、世代間の不公平を解消するには、どうしたらよいのだろうか。 第一に考えられるのが、年金の積み立て方式への移行だろう。

まず、積立金のようなバッファーがない場合を考えてみよう。この場合、高齢者の生活は、全て現役世代が面倒を見なくてはならない。だから、負担の大きさは高齢化の進展に比例して重くなってゆく。積立金というバッファーがないと、世代間格差は是正できない。

しかし、十分な規模の積立金が存在しても、現在のように政府債務をどんどん積み上げている状態であれば、積立金を積み上げても、その運用は大部分国債へと向かわざるを得ない。なぜなら、それを拒否すれば、我々は、金融資産がなくなっていることを確認することになるからだ。 結局、これは負担の先送りに過ぎない。なぜなら、国債償還の原資は、税だからである。

従って、世代間の不公平を解決しようとするならば、まず、財政均衡を実現しなくてはならない。世代間の不公平を解消する方法を考える前に、財政再建を成し遂げないといけないのだ。

(追伸) 高齢者が死ぬまで働けは良い、という意見も頂いたが、これは別の意味で不可能である。 なぜなら、日本の物質的豊かさは、日本の海外への貢献、海外での貢献により決まるが、これを大きくすることは難しく、高齢者が働いても、賃金を分け合うだけに終わる可能性が高いからである。

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