知られざる都議選のネット勝利(下)

2013年12月23日 11:00

(「上」はこちら
●新人候補が直面した最大の決断
都議選北区選挙区で、現職と元職の「プロ」6人を相手に4人の枠を争うことになった、おときた(音喜多)駿氏。28歳の無名新人は、地盤も看板もカバンも持たないながらも、唯一の武器である「ネット」を活用し、区内外から若者主体のボランティアを募ることに成功。登録者は400人、選挙期間中は平日でも毎日数十人、週末や最終日は100人近くが稼働するまでに体制を整えたものの、知名度、組織力で劣っている不安は尽きない。そんな中、有力者から、ある提案を持ちかけられる。区長の応援を要請するというのだ。


「かなり迷った」と、おときた氏。筆者がその背景を補足すると、都心部であっても地方議会の選挙は地縁の影響力は田舎と変わらない現実がある。一般の有権者からすると、意外だが、都会の地方選挙は概して投票率が低い分、代々在住する住民や高齢者のネットワークは威力を発揮するのだ。保守系首長は地元に根を張り、古いコミュニティ間での知名度もある。その公認を貰えば、確かに有権者の多数派である中高年へのアピールになる。

●ポジショニング戦略の重要性
しかし、北区の花川與惣太区長は御年78歳。仮に応援を受ければ「若者の力で政治を変える」と訴えてきた、おときた氏のイメージにそぐわなくなる。年齢だけでなく、自民党出身にして区議を3期、都議を5期、区長を3期務めるという区長の経歴とのギャップ感も明らかだろう。果たして、おときた氏は「若者の力で勝つというストーリー上、意味のある勝ち方をしたかった」と応援を求めなかった

この選択は実に正しく合理的だ。みんなの党に期待する都市部の無党派や若者の有権者は旧世代の政治家への不満を恒常的に抱えている。もし区長とのツーショットを披露していれば、「あいつ魂を売ったな」と見られたに違いない。小選挙区なら高齢者への浸透も対策が必要だが、当選枠が複数なら独自のポジショニング戦略を貫く方が勝機は見える。

▼外資系ブランド勤務経験者らしくスマホのデコりにも凝るおときた都議。選挙戦では若者訴求を貫いた
おときた3

●ネットをどう効果的に使うか
若者への訴求を重視した戦略面でブレが無ければ、戦術としてのネットは威力を発揮しやすい。当時は公選法でネット解禁前だったので、告示後を見越して同志たちが早くからネット上に仕込みを始めた。参院選で筆者もその効果を実感した「NAVERまとめ」は6本走らせ、うち1本が2万PVを集めるヒット。SNSでも本人の写真、記事などをどんどん「ネズミ算式に」(本人)拡散させていった。なおFacebookでのタグ付けは、本人の友達やフォロワーに随時表示されるので「頑張っているな」という印象を与える。千葉市長選では解禁前にも関わらず、有志が勝手に(一応当時は違反だけど…苦笑)熊谷さんの選挙活動の様子をタグ付けして「友達」の筆者のタイムラインにも連日アピールし、大いに参考になった。

ただ、ライフネットの岩瀬氏が以前、「ウェブでは広まらない、深まるだけ」と指摘したように、ネットでの拡散は「組織固め」としての位置づけの方が大きいとみるべきだ。「ネットを“票”を掘り起こすつもりで使っていたら失敗していた。“支援者”を掘り越すための梃子にした」と、おときた氏。ネットが解禁される参院選は都議選の翌月。ネットの長所・短所をすでに見切っていた彼や彼の知恵袋たちのネットリテラシーの高さは評価に値する。

●ネットだけでは勝てない
おときた氏は苦戦の前評判を跳ね返し、最後の4枠目で当選=下記図=。これについては無論、ネットの力はごく一部だ。大逆風の民主党が候補者2人擁立の“インパール作戦”を展開。維新が国替えにより結果的に中途半端な戦いをしたこと等で総合的に票が割れ、当選ラインが下がるというラッキーな外的要因が大きかった。また、参院選東京選挙区で初当選した山本太郎や吉良よし子両氏のように、たとえば「脱原発」等、メッセージを単純化する新人候補は、ネットを活用しやすい一方で、現職候補は実績がある分、コンテンツの絞り込み、あるいは実績が裏返っての風評(デマも含む)への対策に課題を残した。PR会社ビーンスターの鶴野充茂・代表取締役が指摘するように、選挙区が都市部か地方か、あるいは知名度が高いか低いか(現職か新人か)といったケースによってリスク対策も異なる。政策論議の活発化、若者の投票率向上の課題も道筋が見えていない。
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ネットは絶対的なツールではないし、ネットだけの選挙活動も不可能な話だ。そのことはネット主体の選挙戦を展開した自民党・伊藤洋介氏の落選でも明らかであり、先頃都知事選出馬表明をした家入一真氏の腑抜けたネット選挙活動の表明は、本気度が伝わらないし、「ネット選挙」がまたバカにされるので心を入れ替えてほしいと思う。

●都知事選という新たな「実験場」へ
しかし、おときた氏が「10年前なら自分は当選していなかった」と話すように、ソーシャルメディアの普及等、ネットがあったことで新しい可能性が広がっている。日本人に合ったネット選挙文化を構築していくには、新たなツールの発達も求められるし、何より候補者、政党、有権者、メディアがネット選挙の実戦経験を積むことが必要だ。

その意味で、国政選を凌駕するテレビ選挙である都知事選は格好の実験場だ。テレビとソーシャルメディアとの掛け合わせでどのような化学反応を起こすだろうか。突然の大型選挙により、ネット選挙の進化が一段と早まることを筆者は期待している。でも、やっぱりどっかの陣営で関わりたい(笑)。2015年港区議選に挑む「うさみのりや選対本部」副部長としては(勝手に名乗り、笑)、実戦経験を深めておきたいですしね。
では、今日はこんなところで。ちゃおー(^-^ゞ

新田 哲史
Q branch
広報コンサルタント/コラムニスト
個人ブログ

新田 哲史
アゴラ編集長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事/ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー

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