投資とビジネスの「農耕民族」は「狩猟民族」の発想を学んでみる --- 内藤 忍

アゴラ

自分の投資や仕事に対する発想を自己分析すると、つくづく「農耕民族」的だと思います。

例えば、投資であれば、インデックス運用の投資信託でグローバルに分散投資をする。ずっと、マーケットに資金を置いておくことによって、長期的な資産の成長を狙う。ビジネスであれば、毎月コンスタントに仕事をして、1年間休みなく働くことによって収入を得られるように努力する。


どちらも着実で堅実な方法ではありますが、水田の水回りを年中管理して、稲作をしている農耕民族と同じ仕事のスタイルです。

農耕民族の仕事の特徴は、日々の負荷が平準化されて、比較的安定していることです。毎日同じことを繰り返していくような積み重ねの仕事です。デメリットは拘束時間は長く、時給にしてみるとあまり割が良いとは言えない方法であることです。

この農耕民族型の仕事の対極が「狩猟民族型」のライフスタイルです。

例えば、資産運用の「プロ」であるファンドマネージャーには、2種類の仕事があります。1つは投資信託の運用を信託報酬という固定手数料を中心に請け負う人(会社)。そしてもう1つが、ヘッジファンドのような資金の運用を行い、固定手数料だけではなく成功報酬を受け取ることができる人(会社)。言うまでもなく、前者が農耕民族、後者が狩猟民族です。

私が10年以上前にイギリス系の資産運用会社で年金運用のファンドマネージャーとして仕事をしていたのは、前者です。インデックスと比較してパフォーマンスを上げて、運用成果とは直接関係なく運用資産の残高に対して、1%以下のフィーをもらう仕事です。

一方でヘッジファンドのファンドマネージャーは、インデックスとの比較ではなく、絶対利回りをベースに年間の管理手数料だけではなく、成功報酬を受け取ります。

100億円のファンドを運用して信託報酬が1%なら年間の手数料は1億円です。ところが、成功報酬が利益の20%のヘッジファンドなら、運用利回りが30%になれば、成功報酬は6億円です。

ちなみに、個人投資家が証券会社や銀行で購入している投資信託のほとんどは、農耕民族による運用です。インデックスの呪縛の中で、毎日コツコツと収益を積み重ねているのです。

農耕民族が常に日経平均やTOPIXのようなインデックスを意識して運用しているのに対し、狩猟民族は本当に高いリターンが期待できる投資対象に集中して投資をします。獲物を逃せば成果はゼロですが、大物がかかれば莫大な利益になります。

どちらの手法が良いかはそれぞれに一長一短があります。しかし、もし自分の仕事や投資のスタイルが農耕民族型だと思ったら、狩猟民族の思考法を学んでみる価値はあると思うのです。農耕民族は簡単に狩猟民族にはなれませんが、彼らのやり方を取り入れていくことができます。

「アリとキリギリス」のイソップ寓話に代表されるように、日本においては、農耕民族型スタイルが美徳とされることが多いのですが、本当にそれで良いのか。もっと良い方法が無いか疑ってみる勇気も必要でしょう。

コツコツ投資をし、コツコツ仕事をして、時間に余裕の無い生活をしている農耕民族の横で、狩猟民族がハードで過酷な時間を短期に終えて、獲物を食みながら優雅に寛いでいる。そんな情景が目に浮かんできます。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年12月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。