太陽光発電事業で騙されたくない人が、最低限知っておくべきこと --- 内藤 忍

アゴラ

太陽光発電事業について興味を持って調べています。これは発電に適した土地を借りて、その上にソーラーパネルを設置し、電力会社に売電することで収益を得ようとする投資です。怪しい業者もたくさんあって、玉石混交状態なので注意が必要な投資です。しかし、はなから怪しい話と決めつけるのではなく、リスクをきちんと整理した上で、自己責任で投資判断をする価値は充分あると思っています。


低圧ソーラー発電という方法の場合、投資金額は2000万円~2500万円程度になります。政策金融公庫などから借り入れができるケースもあり、投資金額としては3分の1以下になる可能性もあります。1000万円以下での投資も可能ということです。

怪しい話に騙されないためには、いきなり飛びつく前に、基本的なポイントを押さえておく必要があります。

そもそもこの事業は、法律(再生可能エネルギー特別措置法)に基づく電力会社の20年間の電力買い取り義務を前提としています。経済産業省からの固定された売電価格での適用認定がなければ、事業として成り立ちません。

また、適用認定があっても発電施設の設置場所が無ければ、事業を進めることはできません。用地の確保も重要な前提条件です。

次に、設備のクオリティがあります。太陽光パネルには、例えばTUV社のような認証機関の認定制度があり、発電能力が信用できるものを選ぶ必要があります。発電保証が付いているかどうかも重要です。

さらに、収益の計算においては、10年程度の寿命と言われるパワーコンデンサーの買い替えコスト(140万円程度)、パネル設置場所の借地料、保守管理費用、災害(火災、落雷、風雨、浸水、盗難)に対応する保険、天候不順に対応する保険、20年後の原状復帰費用、その他電力会社への事務コストなどすべての想定を含めてあるかどうかを確認すべきです。

借入を行うのであれば、ローンの申請のノウハウを持っている会社を探さなければ膨大な手間がかかります。

これらの前提をクリアした、真っ当な投資対象だったとして、太陽光発電事業のリスクはどこにあるのでしょうか?

大きく3つあると考えます。

1.電力会社、保守会社、パネル製造会社の破綻
事業に関わる会社が破綻すれば、少なくとも一時的に混乱が発生する可能性はあります。特に電力会社の破綻によって、次の売電会社が決まるまでのリスクは、損害賠償を含め、理解しておくべきだと思います。

2.法律改正
売電価格は20年保証されていますが、例外事項として「異常な物価変動」を挙げています。デフレが進行し、物価が急激に下落するような場合、価格が下げられるリスクがあるのです。
また、出力規制が低圧発電業者に適用されることがあれば、収益性にマイナスの影響が出るリスクがあります

3.日射量の変化など気象条件の大きな変化
富士山が爆発して日照がまったくなくなってしまったといった気象条件の大変動は発電能力に影響し、収益を下げる可能性があります。

これらのリスクの見返りに、為替リスクの無い円の投資なのに、直利で年間7%~8%程度の利回りが期待できることになります。国の再生可能エネルギー普及のための「歪んだ」買い取り価格を活用した投資商品。電力料金を払っている人から投資家への所得移転が収益の源泉です。

編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2013年12月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。