消費税増税は製造と小売の垣根をさらに下げ、業態間大競争時代を呼び込みそう

大西 宏

年末は、お掃除ロボット「ルンバ」にチャレンジするように、ニトリのロボット掃除機やイオンのトップバリューのロボット掃除機のテレビコマーシャルが流れていました。破格値です。またそれに対抗するように「ルンバ」のコマーシャルも目立つようになり、年末のイオンの売り場では「ルンバ」の店頭販促のセールもやっていました。これからやってくる「製造業」対「小売業」の競争の時代を象徴するかのようでした。今年は消費税増税が控えていますが、おそらく、それは製造業と小売業の垣根を下げ、また「製造業」と「小売業」を越えた新たな枠組みの大競争時代への道をさらに広げるきっかけになりそうです。

日本の小売チェーン店は基本的には規模を巡る競争を長年続けてきたように思います。積極的な出店によって売上を伸ばしていくことに経営の軸足があったといえるのではないでしょうか。そのために海外の小売業と比べ利益率で劣ってきたというのが実態です。
そんななかでも、回転率を追求した仕組みの競争で効率性を高めたコンビニ業態などが台頭してきたといえます。
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しかしこの数年で状況が変わってきました。PB(プライベートブランド)の本格化の流れです。イオンのトップバリューもセブン&アイのセブンプレミアムの売上高もこの1~2年で、1兆円に手が届くところまで成長してきています。

各社ともPB(プライベートブランド)の売上が順調に伸びてきているために、かなり強気の目標を掲げていますが、根強い消費者の低価格志向、しかも質を重視する傾向に対応しながら収益力も確保しようとすると、消費者にとってのお買い得をどれだけ実現するのか、つまり価値をめぐる競争、効率と質でそれを実現する競争に徐々に移っていかざるをえない時代に入って来ており、その鍵を握っているのが、PB(プライベートブランド)比率とPB(プライベートブランド)の中味です。

製造業は作り手、小売業は売り手という枠組みの破壊ですが、そのためには、ひとつは小売業の商品企画力、また開発力の強化と、製造から仕入れ、また販売のサプライチェーンの進化の両輪が回らなければなりません。

こういった大きなトレンドが進むなかで消費税が増税されます。しかし、増税分を販売価格に上乗せできるほどの消費の勢いはありません。株価上昇の恩恵を受けて、高額商品などは売れましたが、消費支出の推移を二人以上の世帯の季節調整済実質指数の推移で見ると、昨年の1月~3月をピークに再び低調となっているのが実態です。
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消費税増税分を吸収し、それでも利益を確保しようとすると、短期的には納入価格を圧力で下げるかですが、それも限界があり、長期的に考えればいやがおうでもPB(プライベートブランド)を伸ばすことになってきます。

PB(プライベートブランド)ということでは、日本の小売チェーンの場合、商品開発力や、調達、製造から販売までのサプライチェーンの統合という点でも、まだまだお世辞にも進んでいるとはいえません。納入業者の人から漏れ伝えてくる話では、名ばかりがプライベートブランドで、メーカーにおんぶにだっこというものも少なくないようです。
 
しかし、遅れているということは、視点を変えれば、十分に伸びしろがあるともいえそうで、一気にPB(プライベートブランド)時代が加速してくる可能性を感じます。