二重国籍で「棄民」を防ぐという考え --- 岡本 裕明

2014年01月08日 15:15

いきなりで恐縮ですが、「棄民」という言葉をご存知でしょうか? 国を捨てた民(或いは国に見捨てられた民)というかなりネガティブな意味であります。ですが、実態としては日本の場合、戦前に生活難で家族が子供たちを養え切れず、移民して生活してきてほしいという家族から捨てられたイメージの方が強い気がします。

最近では曲解されて日本の社会や生活と同化できない人といった悪い語法もあるようです。


一方で海外にチャンスを見出そうとする人はたくさんいます。例えばプロ野球選手やサッカー選手、プロゴルファーは日本から海外にその活躍の場を移す人が後を立ちません。そして往々にして日本で優秀な成績を上げた選手が海外でさらに上を目指そうと努力しています。

音楽の世界でも各種コンクールでは海外の著名で最高水準の世界で自分を研磨する人がたくさんいます。

フィギュアスケートの選手が海外での練習を重ねていることが多いのは日本での練習施設などが充実していないことが大いに影響しています。更には学者からビジネス界まで多くの日本人が海外で活躍し、多大なる功績を残しています。

日経ビジネスでは「日系アメリカ人という資産」と題した特集を二号連続で打ち込みました。その中には私が担当して97年にアメリカのゴルフ場を購入していただいたスコットオキ氏の名前も見られました。氏はマイクロソフトの初期に多大なる功績を挙げワシントン州では日系人の重鎮の一人であります。

日経ビジネスの二号にわたる特集のトーンは日本の国籍こそ喪失したけれど日本人と同等かそれ以上の愛を日本に対して抱いているということでしょうか? ここバンクーバーにも歴史的背景から多くの日系人が住んでおります。そして私が知る限り日本を忘れた人はいないのです。

棄民と称される理由のひとつに日本人は国籍が血統主義であり、日本のパスポート以外にほかの国の国籍を所有できないシステムがあります。つまり、二重国籍が可能であれば「棄民」とはならないのですが、それが制度上不可能であるがために苦渋の選択をしているのであります。

事実、二重国籍者を日本の大使館、領事館は「取り締まる」ことに一定の熱意をもち続けています。例えば在外選挙を推進する目的で大使館員がオフィスに出張しそこで勤務する日本人を一網打尽にし、二重国籍者をみつけだすという手法があります。どうやるか、といえば永住カードを出せ、というのです。二重国籍者なら永住カードは持っていませんので、そこで一発で判明してしまうのであります。日本のパスポートの更新も二重国籍者は現地では出来ません。だから、日本に住民票を入れて日本で取得するしかないはずです。

ユダヤ人や中国人が死の商人とか架橋という形で世界の隅々までネットワークを張り巡らせているのに対して日本人は日系人との接点が極めて薄くなっています。それは活躍の場を海外に長期に渡り移してしまったという意識が日本人にあり、メンタルな距離感があるのでしょう。では、イチロー選手にそういう感じを持ちますか? 松井選手は日本に戻って精神面でも更に大きくなり、賞賛の声はより高まっています。

日本がグローバル化の中でより一層、足元を固めるには国家のポリシーが見直される必要はあるのかもしれません。血統主義が出生地主義に変わることはないとしても海外に出た日本人に対して二重国籍を認める検討は日本国家の財産に繋がるのです。

日本にいる在日韓国人がなぜ、日本で肩身の狭い思いをし、それでも日本にとどまるかといえば本国にすら帰れないという苦しい立場があるのです。まさに棄民として社会から冷遇されるのです。

しかし、それは国家が二重国籍を認めることで180度認識が変わります。世の中が大きく変化してきた中、この分野の検討に手をつけない理由はないと思います。時代は明らかに変わってきています。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年1月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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