脱原発をすれば、日本が亡ぶ

2014年01月15日 13:40

細川元総理が都知事選に脱原発を争点として立候補したことで、脱原発を都民が選択するのか、といった議論が起きている。

しかし、果たして、脱原発は可能なのか、どのような方法で脱原発を行うのか、私は、リアリティのある説明を聞いたことがない。 

ここでは、冷静に将来のエネルギー需給を予測すれば、脱原発が不可能であることを論じたい。


埋蔵量という錯覚

まず、石油や天然ガスを好きなだけ輸入できるという錯覚の元になっている、埋蔵量に対する誤解を解いておきたい。

よく石油は現在の消費量を続けた場合53年分あるとされる。これは、可採埋蔵量であり、現在の価格で、技術的、経済的に採掘できる埋蔵総量から、既生産分を除いた残りの量のことである。 

これを聞くと、多くの人は、「だからあと53年間は今の暮らしを続けられる」と思ってしまう。 しかし、これは誤りだ、なぜなら、確かに53年分の石油資源は地下に眠っているが、これを今と同じペースで掘り出すことが出来るわけではないからである。

多くの地下資源は、生産開始からの時間と生産量が、ハバード曲線という次の図のような曲線に従って変化することが知られている。

ハバード曲線

つまり、ピークを過ぎると、生産量は減少し始める。現在、既存の油田の大半は、ピークを過ぎた状態であるから、その生産は減少してゆくことが予測されるわけである。

従って、53年分の埋蔵量といっても、石油生産のピーク(ピークオイル)は、いずれやってくる。 

もう一つの誤解が、「可採埋蔵量は増えているじゃないか、石油がなくなるなんて嘘だ」というものである。可採埋蔵量は、その定義により価格が高くなれば増加するし、技術が進歩すれば、掘り出せる量も増加する。 しかし、価格が高くなるといっても限度があるし、可採埋蔵量がいくら増えても、生産量そのものが減少することは防ぐことが難しい。

このように、エネルギー資源を考えるときには、可採埋蔵量はあてにならない。ストックが問題なのではなく、フロー(単位時間に採掘できる量)が問題なのである。問題は、資源がなくなることではないのだ。

エネルギー危機の蓋然性

Fears of global oil crisis aired at Transatlantic Energy Security Dialogueを見れば分かるように、IEAの予測によれば、既存の在来型油田の産出(現在日量6900万バレル)が、2035年には日量2800万バレル程度に低下するとされていること、新規の油田の発見が減少しており、埋蔵量の拡大の殆どは、技術的進歩と価格上昇による既存の油田からの寄与によること、OPEC加盟国の原油消費の増大で、2005年以降、原油輸出量が減少していることを考えれば、今後、石油危機が起きる確率は非常に高いと言わなければならない。実際、Former BP geologist: peak oil is here and it will ‘break economies’でも示されているように、2020年を待たずしてピークオイルがやってくるリスクは大きいと考えられる。

またピークオイルが来なくても2020年には、原油価格は1バレル180ドル前後に上昇するというIMFの予測も存在する。

石油だけでなく、天然ガス(シェールガスを含む)、石炭についても、生産のピークは2025年前後と見積もられており(「エネルギー問題の本質:原発か再生可能エネルギーか、は意味がない」参照)、我々はエネルギー資源の減耗に直面している。 

一方、昨年11月の経常赤字が5928億円と単月で過去最大になったが、貿易赤字はここ1年以上継続し、定着している。このままの状態で、原油価格などのエネルギー価格が暴騰する事態になれば、十分な量のエネルギー資源を輸入できない事態に陥る可能性が高く、日本経済は大打撃を受けるだろう。 

原子力を捨てれば国が亡ぶ

日本の原子力発電は、日本の発電量の約3分の1であるが、これは日本で消費されるエネルギーの約8%強に相当する。これが、もし失われれば、エネルギー資源をほとんど持たない日本は石油や天然ガスの輸入に対して価格交渉力を失うだろう。 

エネルギー価格のさらなる高騰が、今後、予想される状況で、なぜ今、脱原発が可能なのか、私には理解できない。「エネルギー問題の本質:原発か再生可能エネルギーか、は意味がない」に書いたように、再生可能エネルギーは、少なくとも今後10年といったスパンでは、電力の10%を供給することも困難である。

冷静に考えれば、脱原発をすれば、日本が亡ぶということではないか。

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