都知事って何?

2014年01月16日 00:35

猪瀬前都知事が5000万円の「借金」問題で辞任したあと、都知事選がにぎわっています。今のところ有力候補とされるのは、元国会議員の舛添要一さんと、元首相の細川護煕さんです。常識的には自民党が支援する舛添さんの楽勝とみえるところですが、いまだに人気のある小泉元首相が細川さんを支援すると言ったため、盛り上がってきました。

キャプチャ


このホームページはいたずらかと思ったら、細川さんの事務所がつくったんだそうです。tokyo-tonosama.comというドメイン名も冗談みたいですが、候補と同じ大きさで小泉さんが出ているのもおかしいですね。

そもそも東京都知事ってどういう仕事をするんでしょうか? 東京都のホームページによると「都の事務全般について統轄し、予算案の作成、予算を執行する権限、議会に条例案などを提出する権限、租税等を徴収する権限」などがあるそうです。都の2013年度予算は6兆2640億円。これはタイの国家予算とほぼ同じで、アジアのほとんどの国を上回ります。

でも都は地方自治体なので、国とは違います。エネルギー政策は国が決め、立地については地元自治体の同意が必要ですが、東京都に原発はないので都知事には許認可の権限はありません。しいていえば都は東京電力の株式の1.2%をもつ大株主ですが、55%の株式をもつ最大の株主は国です。東電は実質的に国営企業なので、一般株主がその経営に影響を与えることはできないのです。

細川さんも小泉さんも首相をやったわけですから、当然こういうことは知っているはずですが、なぜ都知事に権限のない「脱原発」を掲げて選挙に出るんでしょうか? それは小学生にはわからないでしょうが、大人にも謎です。

小泉さんは「原発ゼロでも日本は発展できるというグループと、原発なくして発展できないというグループの争いだ」というのですが、これは何をどう争うのかわかりません。関係者は「東京のエネルギーを地産地消で」などといっていますが、東京の消費する電力は関西電力とほぼ同じ。そんな電力を都内で発電することはできません。再生可能エネルギーを増やすのはいいことですが、東京都全部に太陽光パネルを敷き詰めても東京の電力はまかなえません。

実際に選挙公約をつくると、原発ゼロの具体策は何もなくなるでしょう。でも細川さんがもし都知事になったら、安倍首相は小泉さんの後輩だから、その考えを無視するわけにも行きません。原発の再稼動も遠慮するでしょう。小泉さんのねらっているのは、そういう「空気」を盛り上げることだと思います。

もう一つは、これを実質的な「原発ゼロ」についての国民投票にしようということでしょう。そういう署名運動は今まで何度もありましたが、みんな失敗しました。それを都知事選挙を使ってやっても、法的な意味はありません。細川さんが原発ゼロを実現したいのなら、国政選挙に出るしかないのです。それが法治国家というものです。

東京都には、オリンピックだけでなく、直下型地震の対策など、やらなければならない仕事がたくさんあります。こんな変な形で都知事選挙が政治的に利用されるのは、都民にも国民にも迷惑です。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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