無党派層の増大は「平和」で「満ち足りている」からだ --- 岡本 裕明

2014年01月16日 11:36

アメリカの無党派は少し前の統計で4割を超えるとされていました。今や、過半数に迫る勢いかもしれません。一方、日本では無党派層は8割もあるという調査もあります。特に日本の場合、若年層においてその傾向は強く、10代では90%、20代でも84%というデータがあります。

では、タイでは今何が起きているのでしょうか? 反政府派が首都を占拠しようとする動きが強まっています。国を二分するような激しい主義主張に対して多くの国民がそれに参加し、ボイスを上げています。


日本でもそのような光景はかつて多く見られました。ストライキは60年代、70年代は当たり前で「今日は電車が動かない」ということは恒例の行事のようなものでした。60年の日米安保に反対するデモ隊は国会を何重にも取り囲み、その主導権は明らかに国民のボイスが握っていたと思います。

ところが、私はちょうどその端境期に生まれ育ったため、企業のストライキがなくなりつつある時代を見てきました。会社の組合は経営側の意向をよく聞く「優等生」となり、組合ニュースには『満額回答!」と大きな字が躍る中、初めから出来レースと揶揄され、一部の組合員からは「組合費返せ!」という声すら上がりました。

そういう時期を経ながら、日本はドンドン豊かになりそれに伴い、日本人は政治を忘れていったように思えます。つまり、世の中がよくなり自分で何かしなくてもどんどん幸せになれる一種の「平和ボケ」であります。日本は島国でほぼ単一民族、移民や国籍取得は非常に厳しく管理され、純粋培養の日本人にとって気にすることは貯金、社会保障、健康、家族、教育であり、美味しいものを食べたり、小旅行をする楽しみを持つことに没頭できる国家として安定感を増してきたのであります。

目を海の向こうに向けてみましょう。アメリカにおいて50年代までは国民の支持党派ははっきりしていたとされていますが、60年代よりいわゆる無党派は増えてきます。ベトナム戦争を通じた反戦意識、ブッシュ(子)のイラク進攻の裏に石油という貪欲さを垣間見たことで国民の政治に対する興味は薄れていき、オバマ大統領の軟弱外交がそれを決定的にしたかもしれません。つまり、アメリカは今や内向的になり、その上、シェールガス革命でエネルギーの自立化、さらには貿易収支の改善が「なぜ、アメリカは世界の憲兵になるのか?」という意識を高めた下地ともいえそうです。

結果としてアメリカ人が今、望むことは一定の富、家族、安定した職、精神面も含めた健康であり、わざわざ好き好んでお金を使って世界平和に貢献する意味がどこにあるのか、と思い始めている可能性はあります。

とすればアメリカは日本において無党派傾向が増えたそのトレンドを追いかけているともいえるのではないでしょうか?

これが何を意味しているのかといえば平和になればなるほど、政治には興味がなく、目線は自分に向くようになる、ということです。私を含めた戦争を全く知らない世代に「戦争になったら戦場に行けますか?」と言ったら答えられないでしょう。同じことは多分、中国の都市部の若者でも同じです。韓国では兵役や北朝鮮という間近な危険があるものの若者の間では戦争への躊躇はあるでしょう。一定の経済的安定があり、平和というクッションに乗っかっている限り、そこからはい出すことは難しいのだろうと思います。

海外の一部の専門家や学者は国家間でもめ事が起きたら戦争が起こる可能性を指摘しています。私は先進国においてそれはないと思っています。それは兵が集まらないこと、それ以上に世論がそれを認めないと思います。なぜか、といえば平和になりすぎたが故に国家を語る熱い気持ちを行動まで移せないとしたら一定年齢以上の方は大きく反発するでしょう。でも、知らない世代にとっては理解不能だと思います。

先進国の国民は富が蓄積されればされるほどより身勝手になる、それが無党派の本当の背景ではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年1月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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