泉田知事のモラルハザード

2014年01月17日 08:30

経済学用語で一番まちがって使われるのは、モラルハザードだろう。産経新聞の記事もあいかわらず(倫理観の欠如)と説明しているが、これは間違いである。Wikipediaでも説明しているように、この場合のmoralはsubjectiveという意味で、倫理という意味はない。クルーグマンによれば、その定義は他人にコストを負担させてリスクを取ることである。


新潟県の泉田知事は、東電の広瀬社長に「(東電が)株主責任、貸し手責任を棚上げにしている」ことがモラルハザードだと話したようだが、これも誤用だ。そもそも広瀬氏には責任もリスクもない。東電の株式の過半数は支援機構つまり国が保有しているので、その経営に責任を負うのは国である。おまけに現在の原賠法では電力会社が無限責任を負うので、責任は棚上げどころか過大である。

さすがに泉田氏も「瓦礫の搬入が殺人に近い」などという荒唐無稽な話で柏崎原発の再稼動を妨害するのは無理筋とさとって、東電の破綻処理をからませようとしたらしいが、あいにくお門違いだ。東電の法的整理はしたほうがいいが、それは法的にも技術的にも再稼動の要件ではない。原発の運転は通常どおり再開し、破綻処理は並行して行なえばよいのだ。

経済学でいうモラルハザードは、泉田氏のように関東の電力利用者にコストを負担させて新潟県民に迎合する行動である。これは反戦平和などのきれいごとを言って戦争のコストは全国民に負担させる朝日新聞と同じで、タレブはスティグリッツ症候群と名づけたが、私は福島みずほ症候群と名づけた。

泉田氏は県庁では「独裁者」といわれ、地元の自民党や財界の評判も最悪らしい。つまり彼が知事の座にとどまるためには、選挙民に迎合するしかないのだ。しかも新潟県は東電の管内ではないので、柏崎がいつまで止まっても県民は痛くもかゆくもない。彼はそういう非対称なペイオフ構造を利用しているのだ。

だから政府のやるべきことは簡単だ。泉田氏には再稼動を承認する権限はないのだから、彼なんか相手にしないで、法令に従ってただちに柏崎の運転を再開すればいい。安倍首相の腰が引けているから、こんなチンピラになめられるのだ。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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