靖国参拝を擁護してみる --- 川本 航平

2014年01月19日 11:43

靖国参拝をめぐって、安倍首相がアゴラで袋叩きに合っている。これは各種世論調査との乖離があるだけではなく、アゴラとしては珍しくバランスを欠いた議論に思える。初投稿で、政治と何の接点もない身ではあるが、なんとか安倍首相を擁護してみることにする。


1. 靖国に参拝するメリットとは何か?

池田信夫氏が述べているように、「靖国参拝のメリット」についてアゴラでは誰も触れていない。私は靖国参拝のメリットは「ある」と考えているので、まずはそのことについて書こうと思う。

安倍首相は、外交方針として「価値観外交」と「主張する外交」を掲げている。外交とは、エゴイスティックな主張のぶつかり合いだ。これは和を重んじる日本人には馴染みが薄いが、国際社会では常識である。たとえば靖国参拝を批判する中国の本音は、次のようなものだろう。

「対日感情を利用したイメージ戦略によって、国内世論をコントロールしたい」「本来は内政干渉にあたる靖国批判を外交問題として既成事実化し、外交カードとして活用したい」「安倍政権は右翼的だとするレッテル貼りによって日本の世論を揺さぶり、領土問題について優位に立ちたい」

これらの思惑は、中国が戦略的に靖国批判を開始した1985年以降、一定の成果を挙げている。

米国や韓国の主張も、主に対中関係や国内問題を考慮した、エゴイスティックなものだと言える。国際社会において自国の利益のための主張をするのは当然で、これを否定することはできない。むしろ日本にこそ「自国の価値観に則ったエゴイスティックな主張」が欠けているのだ。

なるほど北村隆司氏が指摘するように、安倍首相の参拝は他国からは「一人よがり」にも映るだろう。しかし外交には「一人よがり」な主張が不可欠であり、それ自体を批判することは見当違いだ。現に中国は尖閣問題において「一人よがり」な主張を繰り返し、米国に(完全ではないが)認めさせることに成功している。対して日本は1985年以降、中国の靖国批判に対して何も主張を返さなかったことで、過度な内政干渉を許している。

「これからの日本は、米中の顔色を伺うだけでなく、日本の価値観に則った主張をしますよ」

こうしたメッセージを他国に発信することが安倍首相の目的であり、私も今のところ賛成である。短期的には不合理だが、長期的に見れば、中国の内政干渉を押し止める等のメリットが得られるからだ。

2. 靖国参拝は合理的な行動だったのか?

先にあげたメリットを認めた場合でも、「靖国参拝は悪手だ」という批判は当然あり得る。議論のために、まずは外交におけるコストとは何なのかを整理しておこう。

国際社会における発言力の土台となるのは、その国の経済力と軍事力だ。たとえば中国の発言力は、アメリカに対しては経済力を、アジア諸国に対しては軍事力を主たる土台にしている(この点で、中国の「したたかさ」は日本の遥か上をいく)。外交で重要なのは「他国からの信頼」をコストと捉え、自国の発言を通すための戦略を持つことである。

さて。この前提を踏まえて日米関係を考えると、今回の参拝は絶妙なタイミングであった。TPP交渉参加と辺野古の埋め立て許可によって、アメリカに経済面・軍事面で存在感を示せていたからだ。今回の参拝は、中国に擦り寄るアメリカへの牽制としても、価値があったと考えられる。

日中関係については、相手が同盟国でないため話は更にシンプルだ。「対中ビジネスでの打撃に耐え得る経済力」と「領土拡大を牽制し得る軍事力」が日本にあるのであれば、靖国参拝を続けることで、中国が戦略的に打ち出した「靖国カード」を無効化できるだろう。

ここで必要なのは、たとえば「アメリカの信頼を損ねて中国を牽制する軍事力を失っては、靖国カードの無効化は不可能だ」という、具体的な批判である。決して「アメリカの機嫌を損ねるのは問題だ」「経済に打撃があるから問題だ」という、リスクだけを見た批判であってはならない。

今の日本にとって、日米同盟や国内経済が非常に重要であることは私も承知している。たとえば站谷幸一氏が言う「日米ガイドライン策定や共同作戦計画等が出来ない可能性がある」ことは、必要な指摘だろう。しかし站谷氏の主張も含めて、現在アゴラで為されている批判は「アメリカの機嫌を損ねるのは問題だ」という域を出ていないように感じる。

それは「原発にはリスクがあるから問題だ」という論調と、本質的に変わらないのではないか。

外交問題を定量的に語ることは困難ではあるが、アゴラの先輩諸氏には、各種リスクを具体的に検証する議論をお願いしたい。「靖国参拝の具体的なリスク」や「靖国参拝以外に優先すべき外交的主張」について、初投稿の若輩者にご教授いただければ幸いである。

川本 航平

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