名護市市長選結果を安倍内閣はどう乗り切るのだろうか

2014年01月20日 16:11
名護市市長戦で基地移転賛成派の前自民党県議の末松氏が敗北し、現職で移設反対派の稲嶺氏が当選した結果、辺野古移転はまたハードルの高い、もつれ合って解けない複雑なパズルのようになってしまいました。さっそく危機感を抱いた産経新聞が勇ましい社説を掲げていますが、そのタイトルを見て思わずのけぞってしまいそうになります。なんと「名護市長選 辺野古移設ひるまず進め」です。まるで進軍ラッパを吹き鳴らしているかのようです。

選挙結果を見ると、移設反対が移設推進を上回った1997年の名護市の住民投票の当時にまで戻っているように見えます。調べてみると、当時の投票率は82.45%で、反対票16639票で賛成票14267票でした。つまり、いくら反対派のなかには県外から活動家がやってきて扇動していることもあるにせよ、地元住民の反対も根深く残っているということです。

産経新聞の主張は勇ましいのですが、目の前の敵になにするものぞと、ひるまず進めということは、現地では県外からの活動家だけでなく地元住民も加わった阻止の動きが起こることが予想されますが、それに対しても強行突破をおこない、血を流す覚悟をしろということになります。日本の防衛問題を憂うならそれぐらいの犠牲はたいしたことではないという主張でしょう。

なにを主張するのも自由ですが、もしボーリング調査なり工事を阻止する反対派のスクラムや座り込みが起こった場合、産経新聞社員、また記者を総動員して先頭に立って突破する覚悟をもって論説委員の方が書いていらっしゃるのでしょうか。いや我々はジャーナリズムで言論人だから、なにを主張するのも好き勝手だとでも言うのでしょうか。

勇ましいといえば、自民党はこれまで辺野古移設には、地元と地道な対話を重ねていた、宇宙人の鳩山総理が頭ごなしに突然県外移設を主張したためにそれを台無しにしてしまったと批判してきたわけですが、その反省に立って、地元と膝を詰めた対話を積極的に行ってきたのかも疑わしい結果でした。ニュースで、街宣車で、名護市への500億円の振興基金を持ち出して応援演説する石破幹事長の姿が流れていましたが、周りに聴衆がいない寂しい様子も映っていました。

結局は仲井真知事との辺野古移転の合意にこぎつけたものの、地元、とくに地元住民とのパイプづくりには失敗したのでしょう。それが候補者の一本化にも手間取った原因だったのではないかと疑わせます。自民党のなかからも、また沖縄の経済団体のなかからも反対が飛び出していることもそれを物語っています。ゆとりがなかったということでしょうか。

つまり何が予想されるかです。

周辺国を刺激するなという強い米国からのメッセージを無視したのか、あるいは読み違えたのか、安倍総理が靖国参拝をしたことに米国は「失望した」との異例の公式発表を行いましたが、名護市市長選も、安倍内閣に失望する結果となったことを意味します。

日米同盟強化といいながら、辺野古移転に関しては本気で努力してこなかった、あるいは解決能力が不足していると受け取られるのではないかという懸念が拭えません。

さて、いまさら感がありますが、なぜ辺野古移設の困難さがありながら、また日本の米軍基地の70%が沖縄にあるという不自然さがありながら、県外移設を鳩山内閣でも真剣に模索されず中途半端に終わったのかはいまだにひっかかりを感じています。

内部告発サイト「ウィキリークス」が公開した米公電では、日本の外務省官僚が米政府に、辺野古移転を「妥協すべきでない」と助言していたことも発覚しました。
各紙の報道内容、とくにこのウィキリークスの衝撃を詳しく扱った朝日新聞の記事などはこちらに残っています。

橋下大阪府知事が関空への移設要請があれば、積極的に検討したいと前向きな発言をしていたこともありましたが、関空が伊丹空港と合併し民間に売却する計画となり、移転先は神戸空港で検討して欲しいと発言を撤回したこともあって、裁ち切れになってしまったことがあります。
県外移設は、国内にとどまらず、国境を超えた関係者の利権や思惑が複雑にからんでおり、一筋縄では解決しない問題だということでしょう。

さて安倍内閣は、辺野古移設で産経の勇ましい社説のように強行突破するということになるのでしょうか。あるいはこれから地元との対話を始め、住民の支持をとる努力をしようということになるのでしょうか。

ふたつの重要なポイントがあると思えます。オバマ大統領が今春に来日する予定ですが、さて、靖国参拝、また名護市選挙結果というふたつの問題で、オバマ政権が安倍内閣をどうているのかもわかってきそうです。安倍内閣が求める日米同盟の深化のいい動きとなるのか、はたまた儀礼で日本を通過はするものの、やはり中国重視の姿勢が示されるのか、そのいずれになるのかです。
もうひとつは12月に予定されている沖縄知事選選挙です。その結果によっては、辺野古移転はさらに怪しくなってきます。そうなってはじめて県外移設を真剣に考え直すということになってくるのでしょうか。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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