「脱成長」ではなく、成長の限界という現実

2014年01月25日 10:22

都知事選で、細川候補が、「脱成長」を主張したことが話題になっている。

現在の世界経済の中で、脱成長を目指すのは不合理だが、10年といった長期の視点で見ると、物理的限界により成長は続かなくなると考えられる。

ここでは、成長の限界がなぜ必然的に訪れるのか考えたい。


エネルギー生産の限界

現在の我々の生活を支えているのは、エネルギーである。これがなくなれば、交通、運輸、食糧生産、全てが止まってしまう。中でも、石油は、その中心的なものだ。 

しかし、その石油の生産が減退する可能性が高まっている。

論文:The future of oil supplyにあるように、既存の油田1700(全体の供給量の70%分)のIEAによる調査によれば、その生産の減退率は(技術革新にも関わらず)、年に6.7%で、これはIEAのシナリオの仮定、年3%の倍以上であり、既存の油田の生産量の減退分は、3-4年にサウジアラビア一国分の生産量を新規に補充しなくてはならない規模になっている。実際、北海油田は、最近3年で38%の生産低下がみられる。

一方、油田の発見量のピークは1960年台であり、現在、The 10 biggest oil and gas discoveries of 2013にあるように、現在の原油、天然ガス需要年500億バレル(原油換算)に対して、昨年の新規発見量は200億バレルと半分以下であることから考えて、将来的に(恐らく10年以内に)、石油、天然ガス共に、生産量はいずれピークアウトしてゆくと考えられる。

このような生産量の制約とは別に、原油輸出は、次のグラフのように2005年に既にピークアウトしている。
Crude_exports_JODI_Jan2002_Nov2012-595x1024

産出は横ばいなのに輸出が減少するのは、産油国の国内需要が高まっているためで、これは大きな問題である。 中東最大の産油国、サウジアラビアも「サウジアラビアが石油輸入国になる日」にあるように、現在、海水淡水化などの電力需要で、原油生産量の3分の1を国内消費しているのが現状で、2030年台には、原油輸入国になる可能性がある。

核開発疑惑が持たれるイランもIEA予測を見ると、今後、原油の国内需要が増加してゆくのに伴い、原油の輸出余力が大幅に低下してゆくと見られる。

Iran_Exports_To_2015_Implied_By_IEA_Medium_Term_2010

イランのロウハニ大統領が、石油メジャーの油田開発を歓迎する意向を示しいるのも、イランの外貨獲得が今後難しくなることを懸念してのことと考えられ、イランの核開発も、核兵器開発のためというより、発電の一部を原子力で賄うことで、輸出に回す原油を拡大する狙いがあるように思われる。

以上のように、供給力の減退、輸出余力の減退が続くと考えられる一方で、中国、インドといった新興国での原油需要が高まると考えられることから、先進国が輸入できる原油は、今後、益々減少してゆくと考えられる。

米軍の中佐が、液体燃料に依存する現在の交通運輸インフラの持続性について懸念を表明しているが、これには根拠があるのだ。最近、米軍はバイオ燃料を使った軍事演習をしているが、これは十分な石油が手に入らなくなる事態を想定してのことだ。 この記事の中で中佐が、

Even the EIA is forecasting that we could see a peak of shale production by 2018 followed by a plateau and decline, and the Pentagon knows this.

と述べているのは注目に値する。

このように、我々の生活は、それを支えるエネルギー供給から崩壊する危険性が高まっている。 

経済成長はやがて止まる

化石燃料に依存する社会は、近い将来続けられなくなる。持続可能な社会とは、地球に降り注ぐ太陽エネルギーの範囲での生活でしかない。このことは次の動画を見れば良くわかる。

現在の便利で豊かな生活は、次第に不便で貧しい持続可能なものに移行してゆかなくてはならない。

しかし、それは暴力的な方法ではなく、緩やかな人口減少、緩やかなエネルギー消費の減少により実現することが望まれる。 

そのためには、再生可能エネルギー、原子力エネルギーといった、化石燃料以外のエネルギーを活用することが望まれる。 今すぐに脱原発などというのは、あり得ない選択だ

再生可能エネルギーだけで、経済成長はもちろん、現在の生活水準も維持できないことは明らかだが、化石燃料にしがみついていても、破滅しかないことも、また明らかなことである。 

我々は、成長よりも持続可能な生活へのソフトランディングを目指すことを考えるべきだろう。 いずれ、経済成長が止まった時、我々はその問題を考えなくてはならなくなる。 

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