変調をきたす石油生産

2014年02月01日 22:27

石油は、現在、最も重要な戦略物資であり、我々の物流、交通などのエネルギー源、あるいはプラスチックなどの素材として、必須である。 

しかし、最近になって、石油生産に変調がみられるようになり、生産の限界が見えてきた。 化石燃料に頼る生活が困難になりつつある現状について報告したい。


エネルギー資源の開発投資の巨大化と資金調達の問題

下の図は、石油メジャー3社が原油・ガス開発に投じた投資額と生産量の2009年を基準にした推移をグラフにしたものだが、投資が非常な勢いで伸びているにも関わらず、生産量は微増に留まり、2013年の場合、3社合計で1200億ドル以上もの投資を行ったのに、3社とも前年度比で減産している(Big Oil Companies Struggle to Justify Soaring Project Costs, Chevron, Exxon and Shell Spent More Than $120 Billion in 2013 to Boost Oil and Gas Output, but Production Is Down)。
BIG3

(オレンジの線が投資額、青線が生産量、共に2009年を基準)

これは、石油会社共通の問題で、石油会社は、大量の投資を注ぎ込んでも、生産の維持すら困難な自転車操業に陥っているのである。

実際、在来油田の生産減少は現実のものだ。 これは下の北海油田の生産量の推移を見れば良く分かるだろう:

NORTHSEA

(The future of oil supplyから転載)

一方、最近、「石油会社、配当確保のために投資を抑制」とか、「シェル石油、ブラジル沖の油田権益を10億ドルでカタールに売却」といったニュースがあった。

即ち、巨大化する投資額と生産の停滞に耐えかねて、石油・ガス開発会社は石油・ガス開発投資から撤退する兆しすら見せているのである。

まとめると、

(1)石油・ガスの生産維持、生産拡大のために必要な投資額は、飛躍的に増大し続けている、

(2)巨額の投資は行われているが、それでも、生産は停滞しているため、現在の、原油価格、ガス価格では、投資を続けることは困難になっている、

ということである。ブラジル沖の深海油田のように、技術的には採掘可能であっても、投資額、採掘コストが巨大になり過ぎれば、投資を続けるための資金の確保が困難になってきているということだ。

エネルギー不足の時代が来る

こういった最近の動向から読み取れるのは、エネルギー生産がコストの壁に突き当たっているということであり、現在の1バレル100ドル程度の原油価格水準を維持した場合には、間もなくエネルギーの供給不足、特に、原油不足に我々は直面するということである。

そして、エネルギー不足を解消する方法は、もっとエネルギーコストを負担する、つまりエネルギー価格の高騰を容認するしかない。

しかし、Shell Surprise Shows Profit Squeeze Even at $100 Crudeというニュースが示すように、社会の側が、これ以上高いエネルギー価格を拒否している状況である。 

従って、これから考えられるシナリオは、

  エネルギー供給の減退 → エネルギー価格の高騰

ということになるだろう。こうなった場合、我々は、現在のライフスタイルを変えなくてはならない。

特に、運輸全体に占める自動車のエネルギー消費量の割合は、旅客輸送で 88%、貨物輸送では 85%であり(2009年度国土交通白書)、国内運輸の中心は自動車で、自動車なしには現在の運輸システムは成り立たない。 そして、自動車の燃料は、電気自動車の普及が0・02%、天然ガス車が0.02%(2012年時点)であることからも分かるように、ほぼ100%石油である。

こうしたエネルギーの転換には、少なくとも10年以上の時間が掛かるだろう。

IMFの研究報告書:Oil and the World Economy: Some Possible Futuresにあるように、非常に近い将来、毎年、世界の原油生産が2%づつ減少し、20年を掛けて、原油価格が現在の800%まで上昇するというシナリオが現実のものになる可能性があり、もしそうなった場合には、かなりの経済的なダメージが予想されよう。 ガスについてもタイムラグがあっても同じことが起きる可能性が高い、と思われる。

私からみると、多くの日本人は、こういった危機の存在に全く無関心で、現在の豊かな生活が、無条件に続くことを、何の根拠もなく信じているように見えるし、都知事選にみられるように、脱原発をしても、自然エネルギーに転換することで、現在の日本の人口を支えることが出来るかのような錯覚に陥っている日本人が多いことには危惧を覚える。 

我々は、もう、すぐそこまで危機が迫っていることを、強く自覚すべきではないだろうか。 再生可能エネルギーに大きな期待を抱く人が多いように感じるが、私がお勧めしたいのは、規模とタイムスケジュールをきちんとふまえて、エネルギー問題を考えることであり、それなしに、エネルギー問題を考えることは不可能である。
 

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