英語コミュニケーションはなぜ上達が難しいのか(その2) --- 江本 真弓

2014年02月03日 06:30

日本の「不寛容社会」に縛られる日本人

最近「日本は弱者に厳しい不寛容社会」という言葉を耳にする。最近公共交通機関での幼児の是非をめぐってしばしば耳にするようになった言葉だ。

「他人に迷惑をかけない」主義日本では、赤ちゃんを連れた母親、身体障害者等他人に迷惑をかけざるを得ない弱者は、排除されるべき者として攻撃を受ける。


ところが日本のこの健常な強者も、英語コミュニケーションの初期段階では、弱者にならざるを得ない。簡単な言葉が通じさせられない。何度も聞き返される。マナーを外す。相手に迷惑をかける。英語学習の一時期は、誰でも公共交通機関での赤ちゃんと母親立場だ。

「他人に迷惑をかけたくない」日本人は、だから初期段階では、上手く話せないという理由で、外国人相手に話すことに苦手意識を持つ。「外国人に話しかけられて頭が真っ白」とは日本人は当たり前のように言うが、そのような緊態が生ずることは、本来おかしい。

だからと日本人同士でいれば、そこは弱者が攻撃される日本の「不寛容社会」。「弱者」の立場である「英語コミュニケーション初期段階」であることを、さらけ出せない。明らかにレベルの高い出来る人は、「別の存在」に神格化しておく。意識はそのままで無理に日本人社会と距離を置いても、「他人に迷惑をかけたくない」日本人意識が強い間は友達を作れないから、英語コミュニケーションは上達できない。全くこれでは英語も英語コミュニケーションも上達できるわけがない。

つまり日本人は、日本の「不寛容社会」が作り出す、過剰な「他人に迷惑をかけられない」「攻撃される弱者にはなれない」恐れが「心理障壁」として立ちはだかり、英語コミュニケーションの最初の一歩を乗り越えられないわけだ。なんて大変な日本人。

もちろん英語コミュニケーション向上への最初の1歩を歩んでも、その先にも日本人特有の大きな障害が待ち受けている。自己主張に慣れておらず依存が強い日本人は、相手から聞かれた事に答えることはできても、自分から話を展開して相手を惹きつける事が難しい。ただこれは英語コミュニケーションの数を重ねれば、改善していく。

それでも日本ももはや英語から避けて通れない

日本人が日本の「不寛容社会」から受ける「心理障壁」のせいで英語コミュニケーションの習得が難しいからといって、ミラクル高度経済成長もミラクル電化製品を次々打ち出した神話時代の終焉した日本をいつまでも特別視してくれるほど、世界も甘くない。

くどいようだが今の国際社会での英語は、単なるアメリカ人やイギリス人の言語ではない。母国語に関係なく誰もが対等に話すための言語だ。世界はいまや、単なる見聞の場ではなく、英語を介して対話と議論を広げるコミュニケーションの場だ。それも特別なエリートだけではなく、街の市民の誰にとっても、だ。日本人がそのコミュニケーションの和に加われなければ、世界の流れと関心から取り残されるだけだ。筆者もそうだが、世界のどこでも英語で通じる世界を知った世界の人間にとって、英語が通じない世界はもはや耐え難いストレスなのだ。

2020年には東京オリンピックが開催される。それだけではない。少子高齢化の急激な進行で、既に1千兆円を超える借金大国日本は今後、国内だけでは現在の社会経済規模を支える事は出来なくなる。それでも社会経済を発展させるには、世界との関係が欠かせない。

一人でも多くの日本人が、世界の英語コミュニケーション和の中に加わる事は、世界の中での新たな日本の存在感を作るだけではない。日本人の一人一人が、世界との繋がりを確認することで、新たな世界を広げ、これからの日本の諸問題に立ち向かう原動力を得ることができるのだ。

日本人同士で気楽に自発的に、英語で話す場を増やそう

ではどうすれば「心理障壁」を乗り越えて、日本人が英語コミュニケーションを上達させることができるのか。

筆者の経験から言っても、基礎の英語単語力と文法力はある日本人は、英語コミュニケーションの量さえ確保できれば、必ず上達する。更に言えばやはり、最初のうちは同じ文化背景を持ち、微妙な感覚やニュアンス、間を共有できる日本人同士での英語コミュニケーションのほうが、会話を続けやすい。つまり日本人に対する「心理障壁」の方が乗り越えやすい。

だから月並みなようだが、日本人同士で気軽に英語で話をしてみる場を増やすことが、最も効果が高い。既に一部の日本の新鋭企業では英語が社内公用語に採用され、英会話教室や英語サークルも盛んだが、限定された場では新たなムラを作り、教えられたり仕切られたりでは依存が残る。そうでなく、教えられたり仕切られたりすることなく、他人の評価の目を気にすることなく、手持ちの語彙と文法で、自発的に英語での意思疎通に挑戦出来る場が望ましい。そして自発的に会話をリードする意欲が大切だ。

とにかく安心して「たどたどしくも自発的に英語で会話をつなげる時期」を経れば、誰でも英語コミュニケーションは上達する。筆者でさえ、上達した。子供の成長と同じだ。この一歩さえが踏み出せれば、その先には広い世界が開ける。

これは次世代なんて悠長な話しではなく、全ての大人の日本人に提案したい。一人一人が自らの「心理障壁」を乗り越える機会として。もし、それでは今度は英語の話せない日本人が虐められると思うなら、その時こそ「不寛容な日本」を問題にすればよい。

普通に英語が通じることが最大のおもてなし

2020年東京オリンピックに向けて、「おもてなし」がさかんに言われる。しかし日本に来た外国人に対しての最大の「おもてなし」とは、英語でコミュニケーションがとれることだろう。なにしろ言葉が通じないストレスは、日本人こそよく知っての通りだ。

別に流暢に日本文化や政治社会を説明する必要はない。道で迷っている外国人に道を説明する。近くの美味しいレストランや居酒屋を教えてあげる。赤ちゃんをあやしてあげる。レストランや居酒屋で美味しいメニューを教えてあげる。そういう普通の気遣いができた上でこその、日本の「おもてなし」だろう。

筆者は先日オランダの小さな街のレストランで、素敵な経験をした。オランダらしい食事を食べたいという筆者の希望に、オランダ人の若いウェイトレスが、オランダ語のメニューを簡単な英語で説明をしてくれていたのだが、途中で言葉に詰まった。と、彼女は店内を振り向き、他の客達に向かってオランダ語で何かを叫んだ。オランダ語は判らないが彼女が何を言ったかは判った。「このメニューを英語でどう言えばよいかわかる人いますか?」店内のあちこちのテーブルからメニューを説明する英語の声があがったからだ。すっかりオランダ人に好感を持ったことは、言うまでもない。

江本 真弓
江本不動産運用アドバイザリー 代表

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