反日国家に振り回されず、未来へ向かおう --- 江本 真弓

アゴラ

侮れない韓国の朴槿恵大統領

反感必至は100も承知だが、国際感覚を持つ一日本人として、日本の要人の国際失言の問題及びこれからの日本と世界の関係についてのささやかな愚見だ。というのも最近の日本の要人の国際失言多発に、これからの「世界の中での日本」に不安を覚えて仕方がないからだ。韓国の朴槿恵大統領が侮れない相手だけに尚更だ。


イギリスの経済雑誌The Economist のthe world in2014 に寄稿されていた韓国朴槿恵大統領の「Jobs and the disciplined market」を読んだ。日本のマスコミの報道では良い印象を持ちようがない韓国朴槿恵大統領だが、これを読むと、朴槿恵大統領が世界と将来への広い視野を持つ意識の高い政治家だと分かる。嫌うのは勝手だが、侮れない。

趣旨は
「世界各国では失業率が高い。が本当に深刻な問題は、中でも若年層の失業率が高いことだ。若年層の失業率の高さはリーマンショック前からだ。これはもはや看過できない。だからその対策として彼女は、労働者にとっても健全なdisciplined marketと新しい仕事を生み出すCreative Economyに取り組む。」

文中の「we need to go beyond maintaining accommodative fiscal and monetary policies to support the recovery.」が、「マネタリー政策で経済回復に必死な日本の安倍首相へのあてつけに聞こえなくもないが、筆者は国際政治経済の専門家ではないから内容にはコメントしない。ただ簡潔で論理的で明確なビジョン表明は、世界各国で朴槿恵大統領の意見が受け入れられる理由が分かる。

翻って日本を見れば、今の日本の政治家の誰が、世界と将来を見据えたVSIONを述べられるだろうか。それどころか相変わらず要人の国際失言が繰り返すばかりとは、どういうことだろうか。

日本の要人の国際失言が問題である理由

日本の政治家の国際失言が問題である理由は、それがせっかく今まで築きあげてきた世界での「日本への好感と信頼」を損なうことだ。

昨年の大阪の橋本(元:現時点)市長の、「慰安婦は必要だった」「米軍基地の周囲で風俗業が盛んだったことも歴史の事実」発言。

今年のNHK新会長の籾井勝人氏1月25日に就任会見での「従軍慰安婦について「戦争をしているどこの国にもあった」「なぜオランダにまだ飾り窓があるんですか」発言。

「内容が正しい正しくない」に拘る愚は後にして、まずこの二人の論理の稚拙さが問題だ。

「日本だけではなく、欧米の国もやっている。」とは、小学校の子供が何かに先生の注意を受け、「だって○○君もやっている」と言うのと同レベルの屁理屈でしかない。事の是非の考察、自己の意見を表明することなく、その責任を他者に転換しようとする姿勢は、卑怯だ。また言及相手への配慮の無さも、自己中心的だ。

ソチでの東京オリンピック誘致委員会長森氏の「英語は敵国語だった」発言も、目前の相手への配慮の無さが際立つ。

しかし問題特定要人の稚拙さの暴露だけにとどまらない。より深刻な問題は、この手の発言は、日本人の多く無意識に心の底持つ(従って国際的な場面の言動で、無意識に出してしまう)観念「欧米=大人、有色人種=子供」 という世界観」をさらけ出すことだ。

日本人が、白人には卑屈に振る舞い、有色人種には上から目線で振る舞う差別主義者であることは、世界では良く知られている。もちろん世界では「だから日本人は悪い」とは単純に結論しない。誰もが良い面悪い面を持っており、良い面が良ければ認められる。そして日本人は一般に良い面は良いと認められている。

しかし国際的な場での要人の「従軍慰安婦」「南京大虐殺」「他国の感情逆なで」失言は、日本人の良さの全てを帳消しして「やはりね」と、「日本への好感と信頼」を破壊する力を持つ。あまりに世界との「平等と共存の意識」が希薄だからだ。

20世紀後半時代世界の国々では、過去の植民地問題、東西イデオロギー分断、戦争紛争、人種問題、民族問題、移民問題等の多くの矛盾と痛みを抱えてきた。それでも平等と共存をめざして、時には文字通りに血を流しながら、血の滲むような努力が続いている。その世界の空気の中で、「平等と共存の意識」希薄な発言は、警戒されて当然だ。

過去の本当の事実にこだわることは無意味

相変わらず「従軍慰安婦」「南京大虐殺」の事実云々が取りざたされているが、過去の「事実」にこだわることには、意味がない。

歴史事実の判定は、歴史学者の仕事。事実は所詮「認識」だ。事実に拘ることが愚である理由は、例えば次の例を挙げる。

とある男女が、女がレイプされたと主張し、男は合意の上だったと主張する。どちらも自分の言い分が正しいと主張し、「事実」「真実」を追求する。片方の事実が「正しい」認定を受ければ、相手は「新事実」を持ち出し自己の正当性を主張する。同じ事象の認識が二人で異なるのだから、永遠に「事実」「真実」の堂々巡り。人生は無駄に過ぎていく。

この問題に本質があるとすれば、「気持ちが傷ついた女と傷ついたと非難されて傷ついた男がいる」。彼らが求めているのは「傷ついた気持ちが認められて気が収まること」だ。しかし「事実」を求める限り、認識の異なる両者の気持ちは永遠に収まらない。しかしここで本質である「気持ちが収まる」を求めれば、必ずしも「事実の真実」は必要ない。両者が「感情の折り合いどころ」で手打ちをして、お互い次の人生に踏み出せばよい。いずれ出来事は過去として、客観的に整理される。世界的に民族間のこのデッドロックは、テロ紛争の火種になりやすく、大量の血が流れている。その痛みを通して世界は過去の事実に拘る愚を学んできている。未だに紛争が絶えない地域も多い。

とにかく日本もそろそろ、「従軍慰安婦」「南京大虐殺」の事実など、何を言われても「過去の戦争の償いは終わった」と、低姿勢かつ泰然と聞き流しておけばよいではないか。少なくとも日本からわざわざ言及する必要はない。「竹島」「尖閣諸島」もしかりだ。

これからは「仲間」としての世界を

昨今の日本の要人の国際失言の活発化は、日本で加熱する嫌韓反中ブームの後押しを受けてのように見える。が、好き嫌いに関わらず韓国の朴槿恵大統領就が、国際的に通じる論理的かつ明確な言葉を駆使して世界で自己主張を展開している傍らで、日本の要人が国際舞台で不要な国際失言を繰り返し、日本の好感度の足を引っ張る図は、頂けない。これ以上、世界には各地で活躍している好かれる日本人や、日本を好いてくれる日本贔屓の外国人をガッカリさせないでほしい。

日本もそろそろ嫌韓反中ブームを卒業しても良いのではないだろうか。韓国の朴槿恵大統が何を言おうと、日本がいつまでも過去の「事実」認識応酬のスパイラルに付き合う理由があるだろうか。

それより今の日本が向き合うべき重要な課題は、これからの日本のあり方だ。2013年末政府借金1018兆9459億円、少子高齢化で50年後の労働人口は半減、貧困増加も著しい日本だ。この社会現実に向き合い、上手く対処をして今後も世界にとって魅力ある文化経済を発展させれば、世界はいやおうなく日本を認める。中国韓国もしかりだ。またそうして自らの社会問題に向き合った後に世界を見れば、世界のいずれの国もが矛盾と痛みを抱えながら前進を模索する「仲間」である世界の姿が見えるだろう。

江本 真弓
江本不動産運用アドバイザリー 代表