経常収支の将来見通しと原油価格

2014年02月15日 21:09

最近、「斜陽化する貿易立国日本 経常収支3年連続黒字縮小へ」というニュースがありました。 貿易・サービス収支は、12兆2349億円の赤字と赤字幅が拡大したため、2013年の日本の経常収支は、3兆3061億円で3年連続の黒字縮小となりました。 

このまま、日本が経常赤字に転落する可能性はあるのでしょうか? また、そのとき何が問題になるのでしょうか? ここではそのことについて考えたいと思います。


経常赤字の何が問題なのか?

主要国の経常収支の対GDP比は次のようになっています:

経常収支(対GDP比)の推移 - 世界経済のネタ帳

これを見て分かるように、経常赤字国は珍しいことではありません。しかし、基軸通貨国でない日本が。GDPの2%を超える経常赤字を維持するのは難しいように思えます。

経常赤字国になるとISバランス式:

    国民貯蓄=(投資-固定資本減耗)+経常収支

から、国民貯蓄を増やすか、海外から投資を呼び込むかしないと、投資が減ってしまいますが、海外からの投資先として高齢化が進む日本が魅力的な国なのかは、かなり疑問がありますし、高齢化で国民貯蓄を増加させるのも困難でしょう。 そのため、国内の生産活動にマイナスの影響が出る可能性がありますし、何より問題なのは、経常赤字となると、巨額の財政赤字を抱える状況で、国債を海外に多く買ってもらわなくてはならない状況に陥ることで、長期金利が上昇し、財政が維持できなくなる可能性が高くなるわけです。 また経常収支が赤字に転落すれば、円安に振れ易くなり、急激な円安による、輸入インフレが引き起こす長期金利の上昇も懸念されるところです。

原油価格と経常収支

日本の原油輸入額の推移を見ると、次のようになっています:

石油輸入額の推移 - 世界経済のネタ帳

このように我が国は、13年度は、20兆円もの原油を輸入しています。このように原油輸入額が急増する原因は、原油価格の高騰です。下のグラフは、過去の原油価格の推移と、それを元に3次式による近似をしてトレンドを外挿して、将来を予測したものです。

原油価格予測

これを見ると、2020年には、原油価格は現在の倍以上の1バレル200ドルにもなることになりますが、実際、今後のエネルギー価格の高騰は確実で、OECDが2020年の原油価格が1バレル270ドルにもなる可能性があると予測しています(レンジは150ドルから270ドル)。  

これは、最近の原油価格が100ドルを超えても自転車操業に陥っている石油メジャーの状況からも裏付けられます。

もう一つ、エラーバンド付きの原油価格予測としてIMFの研究論文:The Future of Oil: Geology versus Technologyのものを挙げておきます:

oil-price-forecast-with-error-bands

以上から、2020年には原油価格は1バレル200ドル前後になると見ておくべきでしょう。

そのとき、もし現状の原油消費を続けていたとすると、20兆円もの経常収支の下押し圧力が掛ることになるわけです。これから、原油価格の今後の高騰は、近い将来の日本の経常収支の赤字化を示唆していると見てよいでしょう。

まず原発再稼働が必要だが

現状の経常黒字の縮小の大きな要因は、原発停止による燃料費の増加です。今後、高騰が予測される原油価格を考えれば、すぐにでも再稼働を行わないと、非常に危険です。

確かに、原発はない方が安全でしょう。 しかし、経常赤字転落が早まれば、長期金利が急騰し、日本の財政は危機にさらされる可能性が高まりますし、ただでさえ、年間3兆円以上の国富が流出しているわけです。 

今後、さらに20兆円もの国富の流出の可能性が、目に見えている状況で、原発の再稼働を急がないというのは、理解できません。

私には、政治家やそのブレーンには、原油価格の高騰という、非常に確度の高い危機が見えていないように思えます。

但し、原発再稼働で節約できる国富の流出は3兆円強でしかありません。これは20兆円という原油価格の高騰によるインパクトに比べると非常に小さい。 

我々は、アウトソーシングにより流出してしまった、対外的な価値創造を取り戻す努力をすると共に、かなりの省エネルギーと、財政再建を急ぎ、生活水準の大幅な切り下げをする必要があるでしょう。  これから2020年までの間に、我々は今までの生活は続けられないことを、知ることになると思います。 

このように、日本経済は、エネルギーコストの急上昇という大問題に直面しているのですが、都知事選で、脱原発、脱成長といった、能天気な主張をする細川元首相、それを支持する小泉元首相といった政治風景を見ていると、日本の政治家は、エネルギー問題についてほとんど何も理解していないのではないかと心配です。 

追伸 IMF論文のリファランスが間違っていましたので訂正しました。申し訳ありません。

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