ビットコインの利点と弱点 --- 岡本 裕明

アゴラ

ビットコインで世界有数の取引市場となっている東京のマウントゴックスがシステム障害からその取引を停止、その余波が広がっています。私も過去、数回、ビットコインについてこのブログで触れてきましたので改めて考えてみましょう。

先ず、世間で騒がれているビットコインはこれで終末を迎えたのか、という点については多分ですが、今のところNOだと思っています。東京は取引所の一つであって世界にはまだビットコインの取引ができるところはたくさんあります。ですのであたかも銀行が倒産してその価値がなくなったということではないと思います。

但し、ビットコインには厳しいハードルがあるかと思います。


まず、もともと無法地帯だったことから悪さをしようと思えば誰でも好きなことができる無防備状態であったとも言えます。この点については専門家も再三指摘していましたし、マネーロンダリングなどアングラマネーの温床になる可能性は各国政府も注目していたところであります。そして、そのシステムがどれ位盤石なものか分かりませんが、世の中、ハッカーがいたるところにいる中でビットコインのシステムだけが万全だったとは言えなかったし、それを守る保険制度や政府、銀行などの支援体制があったわけでもありません。

次にビットコインの本来の意味が何であったのか、ということです。インフレに強く、海外送金も容易く、一般市場で買い物もできるというのが売りだったはずです。その意味がいつの間にか変質化し、投機商品となり替わってしまったと言えるのです。ビットコインを株式に例えるならば10ドルが1200ドルになり、それが再び大暴落をするというボラティリティの中で投機家は一定のスリルを味わうゲームを楽しんでいたということのように見えます。問題は株式ならば売れば換金できるけれどマウントゴックスでは今、換金できないということであります。

数週間前のバンクーバーのローカル新聞にビットコインのATMが世界で初めてできたという記事が出ていました。確か、街中の某コーヒーチェーンに設置されているという内容でした。ビットコインそのものは世界が注目したシステムであり、改良の余地はあるのだろうと思います。ウィンドウズが市場を席巻しているとき、リナックスという無料で誰でもプログラムに参加できるシステムができた時、世界は疑心暗鬼でありました。が、その後、リナックスが作り出した価値は莫大なものになりました。

そう考えればビットコインも改良を重ねればシステムとしてはより盤石なものが作り出せるのかもしれません。

ではビットコインの最大の敵は誰でしょうか? それはハッカーではなく、世界のすべての国家であります。政府が難癖をつけ、それを禁止したり規制すればそれまでなのです。すでに中国とロシアは規制していますし、アメリカもその動きを見せ始めています。日本は「法的な穴」があるとし、なぜか、動きが鈍いのですが、「投資家保護」の観点からいつまでも放置していればむしろ、法規制の緩い、あるいは投資家保護の観点が甘い日本という悪評がたつ可能性はあります。

ビットコインをもっと普及させるにはどうしたらよいでしょうか?

まず、健全なるインフラを作り、相場を安定させることからスタートする必要があります。最大発行量2100万枚に対してすでに1200万枚を超えているという希少性も架空通貨としての汎用性はありません。通貨とは絶対的な信用のもと、いくらでも作れないと意味がありません。金が通貨として機能しないと言われたのはそこにあるのですが、金はそれでも何百年たっても世界各地で発掘されています。ではビットコインが2100万枚の最大発行量をヒットした場合、どうするのでしょうか? 増資? そうすればビットコインあたりの価値は希薄化し、暴落します。ドルがいくら刷っても暴落しないのは汎用性だからでしょう。

昔流行ったベルマークだって発想的には無限の仮想通貨。クレジットカードのポイントもエアマイルも全部無限でかつ、汎用性が高いのです。この基本思想をビットコインが乗り越えられるか、ここにかかっているでしょう。

ボトムラインは仮想通貨は今や我々の身の回りには至る所にあるということなのです。その中のビットコインという風に考えれば市場に淘汰される可能性もあります。ビットコインのアイディアは私は好きですが、生き残りはなかなか茨の道となるかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年2月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。