バロンズ誌:ウクライナ情勢悪化も注目はFedと中国 --- 安田 佐和子

2014年03月03日 12:44

バロンズ誌、今週の特集ページは資産運用担当者の間で復活するオルタナティブ投資に焦点を当てておりました。ウクライナ情勢を取り上げていたのは、いつものマーケット欄「アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート」です。

「Hopeless But Not Serious(希望はないが深刻ではない)」とのタイトルに見られるように、悲観に打ちひしがれてはいません。ニクソン元大統領時代のウォーターゲート事件に遡り、政治問題に絡む抗議活動にマーケットは耐性があると指摘。特に2011年から2012年にかけての政治混乱を乗り越えた点を評価しています。確かにS&P500は2010年は12.8%高、2010年のS&P500は小幅安にとどまり、2012年は13.4%も上昇していましたね。

2010年からの政治混乱は、ざっと以下のとおり。

▽ギリシャとフラッシュ・クラッシュ

ギリシャで緊縮財政に怒りの拳を振り上げ反政府デモが拡大へ。5月6日にフラッシュ・クラッシュが発生し大平均はほぼ1000ドルもの急落を演じる。

フラッシュ・クラッシュ、今でもあの衝撃は忘れられません。

flash crash

▽アラブの春

・チュニジアで2010年12月から反政府活動が本格化、2011年1月にザイン・アル=アービディーン・ベン=アリー大統領がサウジへ脱出。

・エジプトでは2月にムバラク政権が崩壊。エジプト軍最高評議会による暫定政権は短命に終わり、2012年5月にムスリム同胞団のモルシ政権誕生も長続きせず2013年のクーデターで大統領権限を失う。

・リビアでは2011年2月からカダフィ大佐への退陣要求が勢いを増し、内線に突入。米欧の軍事介入とリビア国民評議会を中心とする反政府の活動を通じ同年8月にカダフィ政権崩壊。

2014年に入ってからはウクライナ、ベネズエラの政治混乱を始めMINTを形成するインドネシア、ナイジェリア、トルコでも予断を許さない状況に。それでも、バロンズ誌は「Who can keep up track of all these upheavals?(誰がこうした激変についていけるのだろう?)」と疑問を呈し、特にS&P500が「blissful ignorance(知らぬが仏)」状態で過去最高値を更新する流れでは材料視されないと主張します。そう、まるでITバブル形成当時、1990年代に勃発したユーゴスラビア紛争で「14万人が死亡しても、関係なかったように」。

ウクライナ情勢については、ロシアのプーチン大統領がウクライナへの軍事介入への承認を求め上院が承認する事態となり、オバマ米大統領はプーチン露大統領との90分に及ぶ電話会談を実施。声明では、「いかなる軍事行動も代償を伴う」と警告を発しました。

それでも、バロンズ誌は香港を拠点とするリオリエントの米国ストラテジー部門のヘッド、デビッド・P・ゴールドマン氏の見解を取り上げ「ウクライナの国内総生産(GDP、2012年時点で1763億ドル)はウォルト・ディズニーの時価総額(注:前週時点で1415億ドル)並みでトルコの5分の1」といいます、1人当たりGDP(2012年で3867ドル)も、「エジプトよりわずかに大きい程度でロシアの半分程度(注:ロシアは2012年で1万4037ドルでドル建てだとウクライナの4倍)」。従って「望みはないが深刻ではない」とまとめられるそうです。

バロンズ誌はこうした背景を踏まえ、海外動向を注視するならばむしろ中国に焦点を当てるべきと主張しています。

2月24日週に人民元が一時6.18元と対ドルにて約10ヵ月ぶりの安値を記録しました。JPモルガンの分析に基づくと、中国以外のエマージング諸国で2013年5月から12月までエマージング諸国から約1000億ドルが流出し、投機資金を中心に金利上昇と元高を目論んだ一部の資金は中国へ向かったとしています。人民銀行が、こうした投機資金を抑制する動きに出たことは間違いありません。

経済動向も、ドル高・元安をサポートしていました。中国2月HSBC製造業景況指数が7ヵ月ぶり低水準で、輸出テコ入れの必要性を認識させたのでしょう。経済動向にもまして、バンクシャドーバンキング問題への不安は根強く中国金融市場への懸念は募り、マークイットは「中国のCDSの名目資金流入が前週だけで110億ドルに達した」と指摘していました。

それでも、バロンズ誌は米連邦準備制度理事会(FRB)による低金利政策の継続、欧州中央銀行(ECB)の追加緩和期待もあり、「パーティーは続く」と見込んでいるんです。強気相場は長短金利が逆転するまで終わらないというのが、一つの理由。BCAリサーチのマネージング・ディレクターは「配当銘柄およびディフェンシブ銘柄から循環銘柄へ資金がシフトし、経済は1990年後半に類似している」と指摘。同氏いわく、ソーシャルネットワーク関連がけん引し当時のようなバブルへ向かってもおかしくないとか。

世界情勢も、どこ吹く風。中国だけは懸念を残しながら、相変わらず強気した。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年3月2日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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