エネルギー資源の減耗と高騰が招く世界の騒乱

2014年03月04日 12:30

我々の生活を支える、最も基本的な物資は、エネルギーと食糧である。ところが、エネルギー、食糧が世界的に高騰し、一部の国で、政変や暴動を引き起こしている。

最近のウクライナの政変、ベネズエラの混乱、シリアの内戦、エジプトの政変など、こういった一連の一見無関係に見える現象には、エネルギー問題が深く関係している。

ここでは、エネルギーと食糧の高騰が、世界に与える影響について考えたい。 


高騰する原油価格

現在、原油価格は1バレル100ドル超と高騰しているが、FRBの量的緩和の縮小に伴い、新興国通貨の下落から、新興国通貨で見た原油価格は、2008年7月につけた原油の史上最高値1バレル147.27ドル時と比較して、同じかそれ以上の水準に達している。

Crude oil price emerging

即ち、新興国は高いエネルギー価格に喘いでいる。

ウクライナとガス問題

ウクライナの政変の原因は、直接的には1400億ドルの対外債務が積み上がる一方、外貨準備は約150億ドルしかなく、経済的に行き詰まったためだが、対外債務が大きく積み上がった大きな要因は、ロシアに対するガス代の未払いが積み上がったためだ。

実際、2008年度単年度で、24億ドルものガス代がガスブロムに対して未払いになっている([1])。実は、ウクライナにロシアは友好国として、ヨーロッパ向けよりずっと低廉な価格でガスを供給しているが、それでも払えないということだ。

ベネズエラの混乱の原因

ベネズエラでは、大統領の退陣を求めるデモが続いているが、これはインフレとトイレットペーパー、砂糖といった生活必需品の不足から、政府への不満が爆発しているからである。

それでは、こういった経済の行き詰まりは、何故起こるのだろうか? 

ベネズエラは、産油国だからエネルギー問題は存在しない、しかしながら、ここではエネルギー資源の減耗が、原因である。ベネズエラの原油生産は減少傾向で、輸出は低迷しているのだ。

Venezuela's Oil production and consumption

石油埋蔵量は増加しているが、これはオリノコタール(オイルサンドに似た石油資源)が埋蔵量に算入されたためだ。 だがオリノコタールの開発には、巨額の投資とコストが掛かり1バレル140ドルといった高い原油価格がないと開発できない ([2])。 反米政権だったチャベス政権が続いたことで、原油開発投資も不足している。 経済発展の糧が不足してくれば、経済は必然的に低迷し、混迷する。

シリアの内戦も石油生産の減退(他にも食糧生産の減退)から、貧しい市民を支えていた、政府補助金が打ち切られ、ガソリン価格が一夜にして3倍になり、食糧価格の高騰を招いたことが直接的原因だ。

エジプトの政変も同じ構図で、かつては有数の産油国だったのが、石油輸入国に転じ、国民を食わせてゆくことが難しくなったためだ。 

産油国の生産減退は、深刻な問題だ。イエメンの原油生産の推移を見れば、なぜイエメンで内戦が起きるのか、人々が追い詰められるのか、良くわかるだろう。
yemen-oil-production-and-consumption

エネルギーと食糧の高騰が世界に騒乱をもたらす

エネルギー価格と食糧価格は、強くリンクしている。なぜなら、現在の工業化された農業は、化石燃料、特に石油に大きく依存しているからだ。

world-food-index-vs-brent-oil-price (1)

我々の食べている食物は、食べるまでに、そのカロリーの約10倍の石油エネルギーを使って生産され、運搬され、調理されている。

現在、世界人口の増加にも関わらず穀物生産は、停滞しており、

穀物生産量

輸出余力のある国は減少し、輸出の寡占化が進んでいる。

食糧問題

[4]より転載)

ウクライナは有数の穀物輸出国であり、今回のウクライナ危機で、穀物価格が上昇すれば、食糧を輸入に頼る国々で、経済の疲弊、政治的混乱が起きることは容易に想像が付く。今年は、カリフォルニアで、500年に一度とも言われる干ばつが進行中であり、穀物価格の高騰が懸念されよう。  FAOの食糧価格インデックスは、2000年の91.1 から2013年には209.8に上昇しており ([3])、これから特に、中東、アフリカ地域での政治混乱が懸念される。

今後、エネルギー価格の上昇に伴い、多くの国々で、経済の行き詰まり、混乱が起きることを覚悟する必要があり、日本もエネルギー、食糧の安定確保を目指すと共に、エネルギー、食糧の確保が難しくなることも視野に行動することが求められる。

補足 日本のマスコミは、ウクライナ危機を始め、世界で起きている騒乱について、その原因の分析をほとんど報じない。これは一体どうしかことか。 海外では、[3]のような優れた分析が沢山あるのに比較して非常に物足りない。 

参考文献

[1] Did Natural Gas Debt Trigger the Ukraine Crisis?

[2] A cascade of woes hitting Venezuela’s oil industry

[3] Global riot epidemic due to demise of cheap fossil fuels

[4] 逼迫する世界の穀物需給と日本の対応、石川県立大学 教授 辻井 博

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