NYタイムズの「英語の正義」

2014年03月05日 16:49

3月2日のニューヨークタイムズ紙は「安倍氏の危険な歴史修正主義」と題した社説で、次のように書いている。

[安倍首相は]戦争の歴史を漂白しようとしている。彼や他のナショナリストは、1937年の南京大虐殺はまったく起こらなかったといまだに主張している。安倍政権は金曜に、日本軍によって強制的に性奴隷にされた韓国人女性への謝罪について再検証し、撤回の可能性を検討すると表明した。


これについて菅官房長官は「首相はそんな発言をしていない。日本政府は『日本軍の南京入城後、非戦闘員の殺害または略奪行為などがあったことは否定できない』という立場を従来から表明している」と反論した。

NYタイムズが社説で安倍首相の「右傾化」を非難するのは、今度が初めてではない。去年1月の社説でも、日本が「過去を漂白している」と書いた。彼らの根拠は、ほとんどが伝聞と英語に翻訳された二次資料だ。日本の歴史を検証するのに日本語の文献を読まないのは、英語国民だけだろう。ケネディ大使と同じ自民族中心主義だ。

こういうバイアスが誤解を拡散している。英語の本で”Comfort Women”とタイトルをつけているのは、ほとんどが韓国系アメリカ人の「告発本」である。数少ない日本人の書いた本が、吉見義明氏の『従軍慰安婦』の英訳だ。こういう本の共通点は、元慰安婦が訴訟を起こした1992年以降に書かれたことだ。

私のNYタイムズ批判に対して、NYタイムズのタブチ記者は「私は慰安婦の証言を聞いた」というが、それもすべて彼らが日本政府に対して訴訟を起こしたあとだ。訴訟の原告が自分の訴訟に有利になる話をするのは当たり前で、そんなものに証拠能力はない。

米国内の訴訟なら、彼らも原告側の主張だけで記事は書かないだろう。しかし日本語の文献を読むのは面倒なので、入手しやすい英語の告発本だけ読んで、日本政府に居丈高に説教する。タブチ記者もファクラー支局長も最近はでたらめな記事を書かなくなったので、本社の論説委員に日本語の文献を翻訳して教えてやったほうがいい。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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