独でも中国国防費急増に懸念の声 --- 長谷川 良

アゴラ

中国の習近平国家主席は今月末、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギーを歴訪するが、ドイツではホロコースト(ユダヤ人大虐殺)追悼施設を訪問し、反日宣伝に利用する計画だったが、ドイツ側が断ったというニュースが流れてきた。

ドイツ政府は北京当局が考えている以上に、中国共産党政権の意図を見抜いている。それだけではない。ドイツ・メディアは中国の国防費増加に日本と同様、強い警戒心をもって報じている。独の代表的メディアを追った。


中国の第12期全国人民代表大会第2回会議が3月5日、8日間の日程で北京の人民大会堂で開幕し、李首相が冒頭で政府活動を報告した。

李首相の報告書によれば、中国の2014年国防予算は前年比で12%急増、8080億万元(950億ユーロ)だ。米国の5268億ドル(3834億ユーロ)に次いで世界第2位の国防費支出国だ。ただし、中国の実質的軍事費は1460億ユーロ以上と推定されている。目的は「沿岸防御、領空防御、最新武器体系の開発に力を入れる」という。そのうえで、「他国は恐れる必要はない。純粋な祖国防衛だ。ただし、歴史の流れに逆行するいかなる試みも許さない」と述べ、尖閣諸島の領土問題で対立する日本に警告を発している。

独週刊誌シュピーゲル電子版は5日、ドイツ通信、AFP通信、ロイター通信の北京発記事を掲載し、「李首相の110分間の政府活動報告は人民大会堂に結集した約3000人の議員団向けというより、外国に向けたものだ」と指摘し、「中国は日本とその他の隣国に明確なメッセージを送った」という分析記事を掲載した。

独保守派日刊紙ディ・ヴェルト紙電子版では5日、北京特派員が「中国は最新技術の武器開発に数十億を投資」というタイトルの独自記事を掲載した。「中国の楼継偉財務相 が公表した本年度の国防費の伸びが12%急増ということが明らかになると、日本と東南アジア諸国のメトロポール、ハノイからマニラで多くな懸念を誘発させている」、「230万人の中国兵力は14年、13年比で約100億ユーロ増の予算を受ける。中国は空母、新ミサイル・システム、ステルス戦闘機の開発など最新技術の武器開発に力を入れる考えだ」

「全国人民代表常任委員会は先月、1945年9月3日を『抗日戦争勝利記念日』、南京虐殺の日1937年12月13日を『国家哀悼日』とする新たな国家法定記念日とするなど、対日批判を展開している」等だ。

フランクフルターアルゲマイネ紙(FAZ)電子版は同日、ドイツ通信(DPA)の記事を掲載して、「中国急激な軍拡」というタイトルでやはり中国の国防費増加を大きく報じた。

「中国の軍事費は経済成長が減速しながらも2013年比で12・2%と予想を上回る急増だ。李首相は日本を意識しながら、第2次世界大戦の勝利と戦後の国際秩序を維持すると強調した」と報じた。

中国側がどのように弁明しようとも、国際社会が同国の急激な国防費増加に強い警戒心をもっていることが分かる。

習近平国家主席は今月末、欧州を訪問すれば、その先々で同国の人権蹂躙、信教の自由の蹂躙などに抗議するデモ隊と出会うだろう。それだけではない。欧州の政治家からは国防費増額に対する懸念の声を聞くことになるだろう。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年3月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。