「本の寿命」について考えてみた

2014年03月08日 15:05

拙著「16倍速勉強法」文庫版の五刷目の増刷が決まった。ペーパーバックスの初版が2008年に刊行されたので足かけ6年で10刷、累計5万部になった。長く読んでいただけることは筆者として何よりもうれしいことだ。



この本はたまたま長く読んでいただいているが、他の著作はすぐに書店に並ばなくなったものもある。流行りに乗った企画本などは仕方ないにしても、精魂込めて書いた本が数ヶ月で「死んだ」状態になってしまうと、著者としてはさびしいかぎりである。

一般的に本が読まれる期間「本の寿命」は、近年、ものすごく短くなっていると感じる。これはおそらく、委託制度と関係している。委託制度とは、出版社が取次や書店に対し出版物を配本し、販売を委託、書店は委託された出版物を販売し、一定の期間内であれば返品できる制度のことだ。書籍の委託には、新刊委託は通常105日間、長期委託は4ヶ月~6ヶ月間、常備寄託は通常1年間(本来は「委託」であるが、税法上社外在庫として扱われる)の三つがあるそうだが、大半が新刊委託の105日だ。この委託期間の過ぎた商品は売れ残っても返品できないことになっている。なので、3ヶ月過ぎると、場合によってはもっと短い期間で多くの本が返品されてしまうのだ。

そして、本の返品率はなんとおよそ四割とのこと。恐ろしい数字だ。

この原因の一つは、本が売れなくなっているにも関わらず、新刊点数が増え続けていることだ。書籍の発行部数は1997年にピークを迎え減少し続けているのに、年間の新刊本は6万点から8万点と30%も増加している。毎日200点以上の新刊本が次々に書店に届いては、すぐに返品されてしまうのが本の現実なのである。返品の印刷コストを抱え経営が苦しい出版社は、消費者を刺激するためにまた新刊を出す。しかし、流行りに乗って急いで書かれた本は短期的には消費されても長くは読まれない。そんな悪循環から抜け出せないでいるように思う。

いま一度立ち止まり、じっくりと丁寧に本をつくり、そして、その本がじっくりと長く読まれ、愛され続けるよう、出版界は舵を切ることはできないのだろうか。(参考記事:大学生の四割が本を読まなくなった日本で、本をもっと読むようになる方法を考えてみた

「16倍速勉強法」を世に出してくれた、元光文社ペーパーバックス編集長の山田順さんの本も興味深い。

出版・新聞絶望未来
山田 順
東洋経済新報社
2012-11-02


学びのエバンジェリスト
本山勝寛
http://d.hatena.ne.jp/theternal/
「学びの革命」をテーマに著作多数。国内外で社会変革を手掛けるアジア最大級のNGO日本財団で国際協力に従事、世界中を駆け回っている。ハーバード大学院国際教育政策専攻修士過程修了、東京大学工学部システム創成学科卒。1男2女のイクメン父として、独自の子育て論も展開。アゴラ/BLOGOSブロガー(月間20万PV)。著書『16倍速勉強法』『16倍速仕事術』(光文社)、『マンガ勉強法』(ソフトバンク)、『YouTube英語勉強法』(サンマーク出版)、『お金がなくても東大合格、英語がダメでもハーバード留学、僕の独学戦記』(ダイヤモンド社)など。

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