「待機老人」は減らせるか --- 東猴 史紘

2014年03月13日 18:46

(1)待機児童の20倍?
待機老人の数は約42万人。待機児童が約2万人なので約20倍である。一般に待機老人とは特別養護老人ホームに入所待ちしている人のことを指す。特別養護老人ホーム(以下、特養)は自治体や社会福祉法人が運営する公的な施設なので、民間の老人ホームよりも低料金で利用できることから申し込みが殺到し待機老人が生まれてしまっている。


特養の数を増やせばいいではないかと思われるかもしれないが税金投入が必要な公的施設であるがゆえに財政上の問題で難しい。福祉は今や高齢者の介護だけでなく、子どもの育児・保育や若者の失業対策など予算がいくらあっても足りないのが現状だ。とはいえ、今から約10年後に私たちは2025年問題に直面する。団塊の世代が高齢化し、特に75歳以上の後期高齢者の数が2倍に膨れ上がるのだ。

(2)3つの解決法
つまり、待機老人対策は待ったなしの状況であるが、解消の方法は下記の3つのいずれかが必要だ。

・核家族世帯→大家族世帯へ
・低負担・低福祉→高負担・高福祉へ
・社会福祉法人中心の経営→多様な経営主体の参入へ

以下、順にみていく。

(3)核家族世帯→大家族世帯へ
親の介護は家庭で行うという価値観を重要視するならば、現在の日本の60%を占めている核家族世帯を減らして昔のような大家族中心の世帯に戻す政策を行うことである。核家族世帯とは夫婦のみの世帯、夫婦とその未婚の子どもからなる世帯、又はひとり親と未婚のみの子からなる世帯のことだ。対して大家族とは6人世帯や5人世帯といったサザエさん一家のような世帯である。待機老人の問題はこういった大家族中心の時代に戻すことができれば解決できる。家族で自宅介護が可能となるからである。

もちろん、この政策は昔より働く女性も増加し、長男も実家に戻るといった価値観もなくなっている多様化の時代においては現実的でない。しかし、このままいくと2025年には高齢者世帯の約70%が単独世帯か夫婦のみとなると言われている。大家族であれば、家に誰も介護してくれる人がいないという状況は避けられる。昔の古き良き時代の象徴でもある大家族世帯が増える施策は一考の価値があるかもしれない。

(4)低負担・低福祉→高負担・高福祉へ
もう一つの方法は現在の低負担・低福祉を見直して高負担・高福祉の制度にすることである。日本は高齢化率が世界で最も高いにも関わらず、国際的にみて日本の国民負担率は低い。高齢化率を2010年度のデータで見ると、1位が日本で23.02%、2位がドイツで20.38%、3位がイタリアの20.35%だ。米国は13.06%とそこまで高くはない。対して国民負担率は日本が38.5%、ドイツが50.5%、イタリアは60.3%(2006年度)、米国は30.9%である。特養も公費負担がなされている公的施設である。施設数を増やし、かつ充実した介護を提供するには税金の負担の問題は避けては通れないだろう。

(5)社会福祉法人経営→多様な経営主体の参入へ
特養の経営主体は現在、社会福祉法人だけにしか実質許されていない。社会福祉法人とは、1951年に制定された社会福祉事業法(現社会福祉法)により創設され、「社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人」である。そして特養の設立も過去、総量規制がかけられて供給が制限されてきた。財政難だからだ。

税金投入が難しい中、現状を打破するには社会福祉法人以外にも特養経営を株式会社等に参入を認めていくことである。つまり規制緩和である。今年2月に行われた厚生労働省の「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」で実際に提言された。メリットは株式会社にも特養の経営への参入を促していけば、供給も増えて競争原理によって利用料が安くニーズに合ったサービスの提供が期待されることである。デメリットとしては、公益重視というよりは営利重視となるため、コムスンのような悪質な介護業者が生まれる可能性が高くなることだろう。利用料も決して安くなるとは限らない。

とはいえ、大家族化も無理、税負担をさらに求めるのも無理となると、最後に残されているのは特養の経営主体を増やすために民間企業への参入を認めていく選択肢3が現実的になってくる。どれを選ぶかである。

東猴 史紘
元国会議員秘書
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