「国家」という帰属集団を問い直す

2014年03月15日 13:11

「情けは人のためならず」という言葉があります。読者の皆さんはこの言葉、どういう意味と考えているでしょう。この言葉を原義と違って解釈している人が増え始めたのは、どうも1960年代後半あたりかららしい。その後、慣用語が違う意味で使われているものの代表となったんだが、文化庁の「『情けは人のためならず』の意味」によれば、2010(平成22)年度の調査でも「人に情けを掛けておくと、巡り巡って結局は自分のためになる」の45.8%に対して「人に情けを掛けて助けてやることは、結局はその人のためにならない」が45.7%と、ほぼ互角の戦いになっています。


ところで「自己責任」という言葉が、一般に流布し始めたのはいつごろでしょうか。どうも、こうした考え方が「情けは人のためならず」の誤用とどこかでつながっているような気がします。自己と他者の関係が希薄になってきた、とも言えるんだが、自分は自分、他人は他人、という他者への無関心や自分さえ良ければいい、という利己主義が広まってきたことと「情けは人のためならず」の誤用がなくならないことには何か関係があるんじゃないかと思います。

群を形成する生物において、共同体への裏切り行為は強力なタブーになっています。「村八分」という嫌な言葉も、源流にはこうした背景がある。「売国奴」という言葉があるように、国家に不利益をなす者についても、同じように社会や国民から激しく指弾されたり厳しく罰せられたりします。しかし、人間集団が国家規模ほど巨大化すると、それぞれ構成員の顔が見えない共同体、ということになります。

人間が現実世界でコミュニケーションできる人数はせいぜい300人~400人と言われています。これは顔と名前を一致して覚えることのできる程度の人数。『忠臣蔵』の赤穂藩5万石の武士階級の人数がだいたい300人くらい。軍隊の基本組織である中隊も300人前後で、企業の組織もほぼ300人くらいの単位で動いています。地縁血縁関係は、この300人くらいの範囲でことたりる、というわけです。近代国家成立以前の我々のご先祖さまは、自分の声が届く300人くらいの帰属集団の中で生まれ育ち一生を終えていた。

それにくらべると、国家、という規模は、人間の想像力をはるかに超えます。ドイツもイタリアも日本も統一国家になるのは遅かった。それ以前は地方の封建領主層が権益を握っていたわけです。第二次世界大戦で枢軸を形成した三国が、どこも同じような近代における歴史的経緯をたどっているのは示唆的です。

一方、近代国家の枠組みが今、激しく揺らいでいるのも事実です。「スノーデン」騒動も「Bitcoin」騒動もウクライナ騒動も、同じ文脈からきているような気がします。近代国家は、都市と地方を隔離し、地域社会を崩壊させ、家族集団を分断し、核家族化を推し進めてきました。その結果、収斂さたかったのは、大規模な企業や国家、という「顔の見えない」共同体でしょう。しかし、そのシステムに限界が見えてきた。先進国は軒並み少子高齢化に悩んでいます。我々は帰属集団としての「国」というものを再度、考え直す時期にきているのかもしれません。昨日、フラッシュメモリの技術を韓国企業へ自分ごと売り払った「東芝事件」について書きながら、こんなことをつらつら考えていました。

JTT海外展開のブログ
技術流失は続く


We Love Screens, Not Glass
The Atlantic
Google Glassの日本上陸も近いんじゃないか、と言われています。このデバイスは我々の生活を変えるんでしょうか。この長い記事では、どうもスクリーンに映し出される「メディア」のほうがより愛されているから、Google Glassはそうならない、と書いている。開放されたメディアと閉じたメディアの違いでしょうか。「メディアとはメッセージだ」と言ったマーシャル・マクルーハンから、Google Glassから「メッセージ」は感じられない、ということです。

飛行機の遅延・キャンセル時にお金を取り戻せる「AirHelp」
Gigazine
最近は旅行や出張が減ったせいで滅多にないんだが、以前はよくフライトキャンセルとか長時間ディレイなんかに遭遇してました。バンコクのホテルで24時間待機してたこともあるし、ソウルから羽田まで12時間かかったこともある。ヌーメアのUTA支店に怒鳴り込んだこともあったし、ロサンゼルスのJAL支店から代替航空券代を取り返したこともある。基本的に航空会社は責任を認めたがりません。チケットのいわゆる「裏書き」に免責項目が細かい字で書いてあるんだが、あんなの事前に読んどく人も少ないでしょう。この記事で紹介されているサービスも適用範囲はわりと狭そうです。しかし、こういうの知っておいて損はありません。

新宿歌舞伎町でカタギがヤクザを騙るとどうなる? by草下シンヤ
東京BREAKING NEWS
これ「人が悪い」という一言がけっこうシャレじゃないですね。ヤクザのピラミッド構造を知れば、ほとんどが「下ッパ」ということがわかるんだが、「親分子分」の関係なので「虎の威を借る狐」がいても不思議じゃない。「下ッパ」ほど虚勢を張りたがるんだが、今の時代、「極道」の世界が変質し、本物と偽物は紙一重です。素人のようなヤクザもいれば、ヤクザのような素人もいる。竹下登の「褒め殺し事件」を調べてみれば、ヤクザに揉め事の処理を頼めば一生離れられません。君子危うきに近寄らず、です。

Whole-genome sequencing of the elephant shark offers insights into bone disease and immunity in humans
PHYS.ORG
サメやエイの仲間は「軟骨魚類」と呼ばれています。アジやヒラメなんかの魚は「硬骨魚類」。読んで字の如く、骨が軟骨か硬いか、という違いらしい。「軟骨魚類」の骨は、上皮組織の歯より柔らかく、化石になかなか残りにくい。そのため、その化石から進化を調べるのは難しかったそうです。この記事では「エレファントシャーク(elephant shark)」と呼ばれるおかしな「鼻」を持つサメの全ゲノムが解析された、と書いている。それによると、サメの仲間の骨がどうして軟骨なのか、わかったらしい。さらに、生物の免疫系を探る上でも貴重な資料が得られたようです。


アゴラ編集部:石田 雅彦


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