バロンズ誌:ロシアもいいけど中国もね --- 安田 佐和子

2014年03月17日 10:02

バロンズ誌でお馴染み、「アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート」のテーマはロシア。クリミア半島の住民投票を受け17日から米欧がロシアに対する制裁発動が必至となる一方で、ロシアが米国債売りを仕掛けているとの観測が浮上し、冷戦さながらのにらみ合いが続く状況ですからね。

米露の軍事力に依存しない金融・経済的なけん制は、ますますヒートアップしそうな様相。過去を振り返っても、同様の事例が見受けられます。1956年に発生した第2次中東戦争(スエズ危機)では、米国がエジプトに軍事行動を起こした英国にポンド売却と国際通貨基金(IMF)に支援阻止に踏み切ると警告した例が。ロシアは冷戦の激化と1956年に勃発したハンガリー動乱を背景に、ドル資産を米国からロンドンをはじめ欧州の銀行へ移しユーロダラー市場の誕生を促しました。

米国が12日に石油戦略備蓄の試験的放出を行う計画を発表したのも、偶然ではないでしょう。ウォールストリートで約30年に及びトップクラスの分析を提供するエド・ハイマン氏、その人が率いるISIグループはロシアについて2013年ベースで石油生産1位、石油・ガスは国内総生産(GDP)の20%、輸出の70%以上、歳入の52%を占めると説明してますね。

ロシア金融市場で、ダメージは一目瞭然です。ISIグループは、ロシア株式指数MICEXはドル建てで2013年のピークから3分の1も吹き飛ばされたと試算。ブルームバーグによると、ロシア長者番付上位19位の資産がクリミアの首都シンフェロポリにある空港を武装集団が閉鎖した2月28日以降で約180億ドル、財政破綻したデトロイト市の負債総額分が目減りしたといいます。

MICEX指数、出来高を伴って暴落中。

micex

(出所 : MICEX)

それでも、プーチン大統領は動じず。1955年にフルシチョフ書記長の決断でウクライナへ編入させたクリミア半島は、言わずとしれた地中海の窓口です。不凍港はロシアからすると軍事的にも商業的にも不可欠であり、経済的打撃をもってして変えられない価値があるのでしょう。

米露間の対立を尻目に、金融市場はいたってクール。VIX指数は18へ上昇したとはいえ、2月3日に超えた20の分岐点以下です。クリーブランド連銀金融ストレス指数も平均以下で、RBCキャピタル・マーケッツのトム・プロセリ米主席エコノミストは「経済的な打撃を被ることなしに解決に向かう、というマーケットの基本シナリオを表す」とまとめています。西側も武力行使する意志を微塵も示していないので、プーチン大統領がクリミア半島を超えて軍事介入しなければ主戦場は金融市場となりそうです。

それよりなにより。

ロシアを主題にしながら、今回もやっぱり中国が記事に登場しています。景気判断の先行指標とされる銅先物は、前週だけで約10%も急落しました。銅を担保として低金利のドル資産を借り入れ、高金利の人民元建て金融商品に回す銅キャリー・トレードは、1)上海超日のデフォルト、2)中国人民銀行による中心レートの引き下げで下落した人民元——に耐えきれず、ポジションの巻き戻しを余儀なくされたと指摘しています。

中国人民銀行が15日に人民元変動幅を2%へ拡大させたのは、投機マネー流入に防波堤が築かれたという認識の反映かもしれません。全人代後に李克強・首相は、さらなる個別金融商品のデフォルトは不可避と発言していました。一部のデフォルトは、人民元相場の移行に合わせ「みせしめ」として黙認される予感がします。

バロンズ誌は別の記事でも、中国リスクに警鐘を鳴らします。「Nomura: Why Property Market Is China’s No 1 Risk(野村:中国にとって最大のリスクが不動産市場である理由)」では野村証券のレポートを通じ、不動産市場が2013年ベースでGDPの16%、固定資産投資の33%、貸出残高の20%、新規貸出の26%、歳入の39%を占めていたと指摘していました。

いわば成長のけん引だった不動産市場で、供給過剰の傾向が色濃くにじみ出てきました。野村によると2013年の試算で都市部の居住者1人当たりの面積は37平方mとなり、日本の35平方mや英国の33平方mに迫る勢いな半面、2017年には55平方mまで拡大する見通し。政府統計でも住宅在庫が2009—2013年で189%も急増しているといいます。住宅価格も、下落中。4つに区分した都市別でTier 1とされる大都市(北京、上海、広州、深センなど)の住宅価格は堅調ながら、Tier 2の都市部は29%、Tier 3—4にいたっては43%も大幅下落していました。しかもTier 3—4の都市が建設中の住宅のうち67%、販売の65%、住宅投資の59%を占めるんですって。落とし穴は、シャドー・バンキングだけではないんです。

中国やロシアが与える経済動向・金融市場へのリスクは別として、18—19日は米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えます。100億ドルの追加減額は織り込み済みとして、肝心のフォワード・ガイダンス改定が挟み込まれるか、今週は荒れそうな雲行きです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年3月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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