「高い薬」と「安い薬」 --- 青柳 俊

2014年04月07日 07:35

最近、患者さんが保険者から託された「カード」を持参することが多くなった。

高い薬でなく安い薬を処方してくださいとの意思表示のようである。

当院では扱う薬の品目も少なく、また患者さんの自己負担の軽減と待ち時間の節約を考えて院内投薬を続けているが、いくつか誤解があるように思っている。


まず、調剤薬局とは違い、高い薬と安い薬を用意できるような体制にはないため、出来る限り安い薬(全体の90%)を購入し、処方することにしている。

しかし、いくつか疑問を抱くこともある。同じ容量の錠剤でも大きさが異なる場合があり、説明ができない。薬剤の効果データの改ざんが報告されている現状では、素直に高い薬から安い薬への切り替えも躊躇させられる。安い薬に切り替えたばかりで製造を中止するメーカーも現れている。

皮膚科では外用剤による治療が中心であり、外用剤については扱う薬剤には慎重になる。同じ成分が同じ容量で含有されていても、軟膏基剤によっては成分のリリースや経皮吸収に差があり、効力に相違があるため、高い薬と安い薬が同程度の効力を示すとは限らないからである。貧乏人には安い薬をとの提案もあったように思うが、現在の状況では安易には受け入れられない。

日本医薬品集(医療薬)を知っている人は多くないと思われるが、3,000ページ以上のボリュームからなるものであり、診察室に常備している。皮膚科には薬剤の副作用(薬疹)を疑わせる患者も結構多く、薬の内容などの情報が日常診療では必要になる。

ところが、同じ品目でも異なる製品名が多くなると30品目以上にもなることがあり、投与された薬剤の確認のためにこの薬品集が必須である。複数の薬剤を薬品集から見つけ出し、内容を確認して薬疹の可能性があるかどうかの診断を下すためにはそれなりの時間がかかるようになってきている。

ここで提案がある。安い薬を製造するメーカーの製造過程の調査をすること、安い薬の品目の整理整頓をして出来る限り品目数を減らすこと、などを指摘したい。

各科での特徴があり、一概に皮膚科での悩みが共通しているとは思われないが、保険者がこのような診療現場での悩みを知っているのだろうか?あるいは被保険者にどのような説明を加えて「安い薬カード」を提示させているのだろうか? 

保険診療に関する理解と説明を、診療側にすべて押し付けていないだろうか?

一時期、保険者機能の強化が叫ばれていたことを思い出すが、医療費削減だけが目的のような気がする。被保険者のためにするべきことは他にも数多くあると考えるが!!

青柳 俊
先見創意の会 代表幹事


編集部より:この記事は「先見創意の会」2013年4月1日のブログより転載させていただきました。快く転載を許可してくださった先見創意の会様に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は先見創意の会コラムをご覧ください。

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