安倍政権も羨むハンガリー議会選挙、オルバン氏の「圧勝」 --- 長谷川 良

アゴラ

ハンガリーで4月6日、任期満了に伴う議会選挙(一院制、定数199議席)の投開票が行われ、ヴィクトル・オルバン首相が率いる与党中道右派連合の「フィデス=ハンガリー市民同盟」が得票率44・54%、133議席を獲得して圧勝した。憲法改正可能な3分の2議席を守った(1議席が他党に移る可能性が排除できない。フィデスが1議席を失えば、3分の2議席獲得は実現しない)。


ハンガリーで1989年、民主選挙が実施されて以来、与党が初めて政権(任期4年間)を守った。オルバン首相(50)にとっては1998~2002年についで3期目の政権となる(フィデスは前回選挙で得票率は約53%)。なお、投票率は約62%だった。

野党第1党の社会党を中心とした中道左派連合は25・99%で38議席、極右派政党ヨビックは20・54%、23議席を獲得した。その他、議席獲得に必要な得票率5%の壁を越えた政党は「新しい政治の形」(LMP)で5・26%、5議席だ。

政権続投が決定した6日夜、オルバン首相は「全ての疑いを一蹴した。これは偉大な勝利だ」と勝利宣言を表明し、3期目の政権に自信を示した。

社会党のメシュテルハージ党首は「オルバン首相は選挙法を有利に改正し、言論の自由も制限するなどさまざまな画策をしてきた」と指摘し、オルバン政権を批判した。

一方、ヨビックのガボーア・ヴォナ党首は「欧州議会選前の重要な勝利だ」と喜びを表明した。同党は反ローマ。反ユダヤ主義を標榜し、外国人排斥を主張してきた。5月25日に実施予定の欧州議会選挙では極右派政党の躍進が予想されているが、ヨビック党は欧州極右派政党の中でも議会選で最高の得票率を獲得した政党となった。

オルバン政権は過去4年間、圧倒的な議席を背景に憲法改正から言論の自由の制限など、民族国益優先政策を前面に出した政策を次々と実施、欧州連合(EU)のブリュッセルからイエローカードを突きつけられることもあった。

ハンガリー経済は公的債務は縮小したが、国民の貧困化が進み、海外に移住する国民が増えてきた。また、オルバン政権の独裁的な政治スタイルを懸念し、外国投資の伸びが留まっている。

オルバン政権は選挙前にエネルギー価格を下げるなど、有権者対策を実施し、抜け目のない選挙戦を展開したが、国民経済の回復までには多くの課題が控えている。

それにしても、社会の多様化が進み、選挙で一党が3分の2の議席を獲得するといったことはもはや考えられなくなってきた時代だ。その意味で、ハンガリーは例外だ。憲法改正を模索する安倍晋三政権にとってオルバン政権の圧勝は羨ましい限りだろう。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年4月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。