知財本部の検証・評価スタート(上) --- 中村 伊知哉

2014年04月14日 06:41

知財本部「検証・評価・企画委員会」が設置されました。

 前ラウンドまで「コンテンツ強化専門調査会」が置かれ、ぼくはその会長だったのですが、今ラウンドは上記の委員会となり、その座長となりました。引き続きコンテンツ分野を担当します。知財本部も設立10年を経て、検証・評価に重きを置くということでしょう。


 メンバーは、KADOKAWA角川歴彦さん、吉本興業大崎洋さん、ドワンゴ川上量生さん、久夛良木健さん、トーセ斎藤茂さん、一橋大学井上由里子さん、弁護士野口祐子さんら引き続き参加される委員に加え、日本レコード協会斉藤正明さん、NHK木田幸紀さん、松竹迫本淳一さん、ニッポン放送重村一さん、竹宮恵子さんといった面々。

 まずは検証・評価ということで、以下の6アジェンダを俎上に乗せています。

1 デジタル社会に対応した新産業創出と環境整備

2 デジタル・アーカイブの促進

3 コンテンツ人財の育成と開発拠点の整備

4 クールジャパンの展開

5 コンテンツの海外展開促進

6 模倣品・海賊版対策の強化

 その前半戦として、上記1~3を議論しました。簡単に報告します。

1 デジタル社会に対応した新産業創出と環境整備

 1) 電子書籍

 ・文化庁は電子書籍に対応した出版権の整備について著作権法改正案提出を視野に対応。

 ・民間での電子出版促進に向けた支援、電子図書館のインフラ整備なども課題。

 2) クラウド促進とクリエーターへの対価還元

 ・個人向けストレージサービス等のクラウドサービスに関する著作権法上の扱いを巡り、

  国内クラウド事業への参入を萎縮させている問題について、文化庁の委員会にてWGを設置。

 ・クリエーターへの対価還元を巡り、私的録音録画補償金制度の見直しを含め文化庁にてWGを設置。

  経産省も調査検討を実施予定。

 3) ビッグデータ

 ・IT本部にて、世界最先端の利活用に向けた取組を決定。

  個人情報・プライバシー保護に配慮した制度見直し方針を検討中。

 ・総務省・経産省も研究開発を実施。

4) 教育情報化

 ・総務省・文科省が実証事業を実施。

 ・デジタル教科書の法的位置づけや著作権制度上の課題の検討は未着手。

2 デジタル・アーカイブの促進

1) 書籍・映画等のアーカイブ化

 ・文化庁がマンガ・アニメ・ゲーム等メディア芸術の作品情報データベース構築を推進。

 ・東京国立近代美術館、国立国会図書館にて映画や書籍のデジタル化を推進。

2) 利活用の促進

 ・孤児著作物を巡り、裁定制度の在り方について文化審議会で検討中。

3 コンテンツ人財の育成と開発拠点の整備

 1) プロデューサー、クリエイターの育成支援

 ・経産省にてプロデューサー育成に向けた海外フィルムスクールへの留学を支援。

 ・文科省にて若手芸術家の海外研修支援、アニメ等のモデルカリキュラムを開発。

 2) 地域拠点の整備

 ・札幌(コンテンツ特区の指定)、京都(KYOTO CMEX、京都版トキワ荘)、

  沖縄(沖縄国際映画祭)などを後押し。

 文化庁はクラウドサービスに関するワーキング設置、裁定制度の見直しへと動いています。IT本部はビッグデータ利用の制度見直し方針を策定しています。いずれもデリケートな案件ですが重要です。いずれも個別の戦術vs全体の戦略という構図の議論です。

 例えば裁定制度は、その制度の使い勝手に止まる問題ではありません。孤児著作物、ひいては過去のあらゆる知的資産を国としてどう活用するか、根本的な哲学が問われるものであり、既に欧州や米国とGoogle等のグローバル企業とのせめぎ合いが表面化している問題です。

 クラウドサービスも、著作権保護を十全にすることにより、日本ではサービスが不自由となり、結局はアメリカのプラットフォーム事業者にビジネスを根こそぎ持って行かれるという状況、つまり局地の解決によって全土が崩壊する状況を改めるグランドデザインの問題です。

 ビッグデータも同様。個人情報保護という部分最適とビッグデータ活用という公共の便益との折り合いをどうつけるかの問題。俯瞰して戦略的にとらえることが大事です。

 会議では、デジタルアーカイブへの取組について意見が集中しました。書籍、映画、マンガ、アニメ、ゲーム、放送番組・・・バラバラに進んでいる蓄積・公開を、いかに総合展開するか。

 トーセ齋藤さんは、ソーシャルゲームをどうアーカイブするかという問題提起。確かに、形がなくて消えゆくものこそがこれからのコンテンツになるが、その公共性をどうプロデュースすればいいでしょう。

 久多良木さんは、ゲームは機械とソフトのセットであり、ソフトだけでなくゲーム機が失われていくことの問題点を指摘。「遊べる形」でゲームをアーカイブしていくのはなかなかたいへん。

 重村さんが、テレビ番組の収集について、一般の人が秘蔵している素材を誰がどうやって集めるかという問題提起。フジかくし芸大会の昔のビデオはハナ肇さんのお宅でたくさん発掘されたんだそうです。へえ、知りませんでした。

 今回は特に意見が出ませんでしたが、ぼくは1-4)教育情報化が最も気になりました。前々回の知財計画に、デジタル教科書の法的問題を検討することが明記され、前回には必要な措置を講ずることが明記されながら、まだ政府としての検討が始まっていません。もう実証はいいので、とっとと検討を開始し、2014年には結論を得て措置を定めてもらいたい。スピード感が足りません。

 3コンテンツ人財の育成も、各省の施策は挙げられていますが、いかにもチマチマしていて、国家戦略的ではない。それよりも、全ての子どもにデジタル環境を与えて、創造力・表現力教育を施すほうがよほどコンテンツ生産力はつきます。

 このあたりは、知財本部以外の政府部局でも議論されています。ヨコ連携を深めて、推進力をつけたいと考えます。  (つづく)


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2014年4月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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