法則発動!イエレンFRB議長の講演後にダウ平均は高値引け --- 安田 佐和子

アゴラ

ジャネット・イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が表舞台に立つと、米株が上昇する——本日も法則が発動し、ダウ平均とS&P500は1週間ぶりの水準で高値引けしました。

どんな発言だったかといいますと。

イエレンFRB議長は16日、FRBの2大目標を達成するまで2年あるいはそれ以上の時間を要する可能性を点灯させた。3月19日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が公表した経済成長・金利見通しでは、2016年末に失業率5.2~5.6%、インフレ予想1.7~2.0%。イエレン議長はエコノミック・クラブで行った講演後の質疑応答で、見通しが実現すれば「過去10年間で初めて統治目標である最大限の雇用と物価安定を達成することになり、予想は妥当といえる」と発言。足元で量的緩和(QE)の縮小を粛々と行うものの、経済が持続的なモメンタムを示すまで金融政策は「緩和的」であり続けるとも述べ、利上げに急がないスタンスを打ち出している。物価動向に対しても、「1%付近で推移するなかで、我々が懸念すべきはインフレ目標値2%を大きく下回るリスク」と発言。ディスインフレの懸念をあらためて表明した。

イエレン議長が口を開けば、相場が上がる!

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(出所 : avidtrader.blogspot. )

イエレン議長は同時に、「雇用とインフレが目標からかい離するほど、目標へ回帰する進展具合が遅くなればなるほど、FF金利誘導目標レンジを現水準で維持する期間も長引くだろう」と明言した。一方でインフレが目標を上回る(overshoot)ことを回避すべく、利上げの必要性にも言及。その上で、インフレが上振れした過去の経験を踏まえ「反転させるコストは甚大となる恐れがある」と付け加えた。

以上、発言内容は利上げの用意も忘れずバランスを取りながら、市場は「2016年末まで統治目標を達成できない=早期利上げなし」と解釈したようで、米株大幅高・米債利回りは上げ幅縮小で反応しました。

発言内容を踏まえ、バークレイズのエコノミストは、3つのポイントを挙げています。

・失業率の長期的な見通し、5.2~5.6%と比較すると現水準は依然として高い

・不完全失業率、すなわちフルタイムを希望するもパートタイムを余儀なくされている人々が引き続き高止まり

・労働参加率の低下は労働市場の「たるみ」を一因に挙げ、「大部分が循環的」とした以前の見解から修正

こうした3つのポイントを踏まえると、

1) インフレは抑制的、労働市場の回復はゆるやかとなる見通し

2) 利上げは量的緩和の終了から2四半期先か、それ以上たってから

3) 利上げ幅はゆっくりへ

というわけで、従来どおり「テーパリングの終了は10月FOMCで告知」、「利上げ第1弾は2015年半ば」の予想を維持しました。

何より注目は、ダラス連銀のフィッシャー総裁など一部のFOMCメンバーが懸念する過剰流動性相場に対しとくに言及せず。2013年12月開催分のFOMC議事録であったような文言も、遠い昔となりました。ナスダックで3月の高値から約10%、ダウ平均で2%超も下落してますから必要ななかったとも言えます。

ちなみにイエレンFRB議長の発言を受けウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙は、Fed番のジョン・ヒルゼンラス記者とヴィクトリア・マクグレン記者による連名記事「政策道筋への自由度を確保(Yellen Stakes Out a Flexible Policy Path)」を掲載。ハト派だけに偏らず、柔軟性を保ったと指摘してるんです。

一方で、本日公表されたベージュブックは前回より強含みな内容でした。

1)経済活動につき前回の「控えめか緩やか」な拡大から、「加速」へ上方修正

2)小売売上高は「拡大」、非金融サービスも「需要が高まる」

3)製造業活動は、寒波和らぎ「改善」

4)借り入れ需要は「強まった」ものの、寒波が残る地域では「減少」

5)雇用は「強含み」、賃上げ圧力は「限定的」ながら一部で確認

6)物価は仕入れ価格などで上向き

BNPパリバのイリーナ・シュヤルティバ米エコノミストは、全体的に悪天候からの反動の余地を残しつつも結果を受けて「2月後半からの経済指標が強含んだように、全体的に明るいトーンが増した」と評価。その上で、「弱い(weak)」に関連する言葉の登場回数が今回14個と、前回の26個から大幅減少し「過去14年間で最小になった」とまとめていました。

イエレンFRB議長の16日の発言は、悪天候の反動を取り除いた経済活動が未だ鈍いと考えていることを示唆しています。米金利を低位に抑える意味ではポジティブで、たとえ翌16日にグッドフライデーを控えグーグル、アメックス、IBMの決算を嫌気しても利益確定の売りにとどまるのではないでしょうか。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年4月16日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。