貿易赤字って悪いことなの?

2014年04月21日 19:38

日本の2013年度の貿易赤字は13兆7488億円と、史上最大を記録しました。「赤字」というとなんか悪いことみたいですが、これって悪いことなんでしょうか? 毎日新聞の中村秀明さんは「貿易赤字は自然なことだから原発を止めてもいい」といっています。

貿易収支というのは、輸出から輸入を引いたものです。それが赤字になったということは、輸入のほうが輸出より多いというだけで、それ自体はいいことでも悪いことでもありません。輸入できるのは、それを買うお金が日本の会社にあるんだから、問題ではありません。しかし国全体としては、外国からの借金(資本収支の黒字)が増えることになります。

借金も、それ自体は問題ではありません。借金をしていない会社は、日本にほとんどないでしょう。しかし借金を返せないと、大変なことになります。毎日新聞株式会社は1977年に借金が返せなくなって倒産し、「株式会社毎日新聞」という新しい会社として出直しました。まぁ倒産も大した問題ではないといえばないので、毎日新聞の人は平気なのでしょう。

日本も今のように経常収支(貿易収支+所得収支)が赤字になると、国全体として借金がふえます。日本は外国に資産(対外純資産)を300兆円もっているので、これも今のところは返せます。しかし日本政府の借金は1100兆円を超え、あと100兆円ふえると国内の貯金(個人金融資産)をすべて食いつぶします。

そのとき海外に資産をもっている人が、危なくなった国債を買ってくれると考えるのはお人好しですが、かりに買ってくれたとしても、毎年50兆円も財政赤字が出ているので、300兆円の海外資産は6年で食いつぶしてしまいます。

それでも日本銀行が国債を無限に買い続ければ消化できますが、国債のリスクが大きくなるので長期金利が上がるでしょう。金利が上がると、日銀や他の銀行のもっている国債の値打ちが下がります。これはちょっとむずかしいのですが、こういうことです:

いま日銀が金利1%で額面100円の10年物国債を買ったとしましょう。そうすると1年間でもらえる金利は1円ですから10年間で10円で、10年後には元利合計で110円返してもらえます。ここで国債の金利が2%上がると、新しく発行される国債の金利は3%になるので、10年で130円返してもらえます。

しかし金利が上がってから今もっている1%の国債を市場で売っても、他の銀行は100円では買ってくれません。新しく出た国債のほうが金利が高いからです。10年間でもらえるお金を同じにするためには、今の国債で10年間にもらえる元利合計と新しい国債の元利合計が同じになる必要があります。この関係は(残存期間をどっちも10年とすると)次のようになります。

 市場価格/100円=110円/130円

これを計算すると、今もっている国債の市場価格は約85円になります。つまり金利が2%上がると、国債の価格は15%ぐらい下がるのです。日銀は今150兆円以上の国債をもっているので、金利が2%上がると、24兆円ぐらい評価損が出ます(実際の数字もこれに近い)。銀行も国債を200兆円ぐらいもっているので、地方銀行や信用金庫がたくさんつぶれるでしょう。

でも日銀はお札を印刷できるので、いくら損しても平気です。安倍さんのいう「輪転機ぐるぐる」も必要ありません。日銀の金庫には86兆円もお札があるので、それをばらまけば損はいくらでも埋められるのです。でも世の中にお札があふれると、すごいインフレになるでしょう。

つまり貿易赤字も経常赤字も悪いことではないのですが、借金が返せなくなると金利が上がって銀行がつぶれ、インフレになるのです。これで政府の借金はチャラになるかもしれませんが、ペイオフ(預金の切り捨て)が行なわれると、みなさんの貯金もなくなってしまいます。いつそうなるかはわかりませんが、たぶんみなさんが大人になるまではもたないでしょう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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